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新任スタッフ紹介 27

言語事実の記述を積み重ねて

梅谷 博之
(2013年8月特任研究員着任)

私は修士課程に進学する際,研究対象言語にモンゴル語を選びました。それ以来,モンゴル語の文法記述を行なっています。特に,モンゴル国の首都ウランバートルを中心に話されているハルハ方言を研究しています。ハルハ方言は,モンゴル国で最も多くの話者を有する方言です。また期間は短いですが,モンゴル国の東部や西部で話されている,ハルハ方言以外の方言の現地調査にも取り組みました。

モンゴル語を学習・研究し始めた頃,使役表現に興味を持ちました。モンゴル語では,使役表現「~させる」が受身の意味「~される」を表すことがあります。日本語で例えると,「私はA氏に腕を殴らせた」という表現で「私はA氏に腕を殴られた」という意味を表すような感じです。ただし,使役表現が常に受身の意味を表すとは限りません。「私はA氏に部屋を掃除させた」という表現で「私はA氏に(勝手に)部屋を掃除された」という意味は表せません。このような事実を知るにつれ,「使役表現で受身の意味を表すことが可能なのは,どのような場合か?」という疑問を抱くようになりました。これが出発点になり,モンゴル語の使役と受身をテーマに博士論文を執筆しました。

また最近では,「語と接辞」「品詞分類」といった言語学の基本的な分類・区分を,モンゴル語ではどのように行なうのが最も合理的であるか,ということに関心を持っています。(研究の結果,こうした分類・区分をモンゴル語で行なうことは適切ではない,という結論に達する可能性もありますが・・・)

「語と接辞」を例にとって説明しますと,先行研究で「小辞」と呼ばれる,(自立)語と接辞の中間的なふるまいをする要素が,モンゴル語にはいくつか存在します。一口に「小辞」と呼ばれるものであっても,よく観察すると,それぞれの「小辞」は異なった性質を持っていることが分かります。そこで,各々の「小辞」について,特徴を詳しく記述することから始めてみようと思い,現在その作業を進めているところです。こうした記述の先には,どのような基準に拠って「小辞」を「語」や「接辞」から区別すべきであるか,という大きな問題が待っています。この問題を解決するためは,モンゴル語の全体像を見る必要があり,すぐには結論が出ませんが,取り組みがいがある問題でもあります。

モンゴル語に関しては,このほかにも未解明のことが沢山残されています。記述を一つ一つ積み重ねることで,モンゴル語の全体像の把握に少しでも近づきたいと思っています。


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