ILCAA Home > Essays > Introducing New Staff > Introducing New Staff 14
Font Size : [Larger] [Medium] [Smaller]

Japanese version only.

Introducing New Staff 14

これまでの道のり

福島 康博
(2011年5月研究機関研究員着任)

私が生まれたのは1973年,世はまさに石油危機という状況でした。その後,イラン・イラク戦争,イラン・イスラーム革命,ソ連のアフガニスタン侵攻,パレスティナのインティファーダ,東西冷戦の終焉,そして湾岸戦争と,私が10代を過ごした時期は,常にイスラーム諸国が世界の動向の中心にありました。

高校生の私は,こうした分野に関心がある一方で,どのようにして学べばよいのかわからず,大学は商学部商業学科に進学しました。そこで簿記・会計や経営学,あるいはマクロ経済学などを学んだのですが,「イスラームのことを学びたい」という気持ちも捨てがたく,学士入学を受験,卒業と同時に他大学の文学部社会学科の3年次に進みました。

社会学を学んでいてもっとも印象深かったのは,課題で読んだ宗教社会学者M.ウェーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』でした。私は同書を読み「イスラームにとって資本主義はどのようなものと写っているのか?」という疑問を持ちました。この「イスラームと経済の関係」という問題意識は,現在まで一貫して抱いている関心事となっています。

6年間の学部生生活ののち,より本格的に学ぶべく大学院に進みました。最初の授業で,「コーランやハディース,歴代のイスラーム思想家の著作を読み解きながら,イスラームの経済思想を明らかにしたい」と話したところ,指導教官より「思想よりも現実の事象をみたほうが良い。せっかく商学部を出てるのだし,学んだことが活かせるテーマ,例えばイスラーム銀行はどうだろうか」とのアドバイスをいただき,このテーマを選択することにしました。

修士課程に在学中は,主にイスラーム銀行の歴史や仕組みなど,基礎的なことを調べ,これを踏まえた上で博士課程に進んだのですが,当時の日本では,イスラーム銀行研究はほとんど行われておらず,日本で学ぶことへの限界も感じておりました。そんな折,指導教官より「具体的な事象を見るのならば,どこか特定の国を取り上げた方が良い。できれば,その国の大学院に留学してしっかりと理論も学んできなさい」というアドバイスを頂きました。そこで,大学院レベルで体系的にイスラーム金融が学べるマレーシアを選び,MBA課程等に在籍しながら2年間留学しました。そして帰国後,マレーシアのイスラーム銀行をテーマとする博士論文を執筆し,博士号を取得しました。

博士論文の執筆は,それまでの研究の総決算であると同時に,次の研究のステップとなりました。すなわち,イスラーム銀行からイスラーム金融へとテーマの拡大,マレーシアだけでなくインドネシアやGCC諸国への対象国との拡大,逆にマレーシアでもペナン島に注目し,経済発展やマレー=ムスリム社会とイスラーム金融との関係にも関心を持っております。またここ数年,ハラール食品産業や,ハラール・フレンドリー・トラベルといった,イスラームと経済の関係性を示す諸現象が多く観察されるようになっています。これれはいずれも,私の当初の関心事に合致する事象ですので,今後はこうしたテーマにも取り組んでいこうと考えております。


Copyright © 2010 Research Institute for Languages and Cultures of Asia and Africa. All Rights Reserved.