共同研究プロジェクト
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形態・統語分析におけるambiguity(曖昧性)―通言語的アプローチ―
研究実施期間 : 2005年度〜2006年度

主査  呉人 徳司

概要

 言語の形態・統語分析においては、ambigous な現象、すなわち、同じ構文や形態についていくつかの異なる分析が可能である現象がみられることが珍しくない。こういった現象の詳細な検討は、特定の言語の記述に必要であるだけでなく、形態・統語理論における基本定義や、言語分析の方法一般、ひいては形態・統語構造の比較(歴史)研究においても、重要な意味を持つ。

 本共同研究プロジェクトでは、アジア、太平洋地域の言語、アフリカの言語、またアメリカ・インディアンの言語、さらにはヨーロッパの言語を研究対象としている多くの専門家をメンバーとし、さまざまな言語におけるambiguous な具体例を持ち寄り、詳細を検討することを目的とする。全体として最終的にひとつの結論に到達することを目指すのではなく、異なる分析方法や視点をぶつけあうことで、参加者がそれぞれの研究内容を向上させられるような研究会を目指す。
 言語の記述にあたっては、対象言語にみられる文法現象が例外なく記述された文法規則にあてはまるのが理想的な状況であるといえよう。ところが現実には、定義のはざまにおちこむさまざまな現象がみられる。たとえば、形態・統語論面において二通り(またはそれ以上)の分析が可能であることは珍しくない(例:モンゴル語の特定の構文の使役分析と受動分析、フィリピン諸語の統語構造のフォーカス分析と能格分析)。一方、通言語的にみると、同じ用語で記述されたものでも実質が異な(ってみえ)るものもある(例:タイ語における「語」とアメリカ原住民語における「語」)。
 それぞれの現象は文法記述(文法理論)における定義の多様性に起因するものなのだろうか、もしくは文法現象の歴史的変化を反映しているのか、それともそこにはこれらと性質の異なる言語に関する事実が隠れているのだろうか?
 本プロジェクトでは、文法記述において先行研究における定説とは異なる分析がより適切であったり、データが定義にすっきりと当てはまらない具体的な例をとりあげ、具体的なデータを見ながらその示唆する内容について考察する。このために、類型論的にも地理的にも多様な言語を専門とする研究者をメンバーとする。



2006年度

 
研究会

 2006年度第2回
 日時 : 2006年7月1日(土) 13:00〜18:00
 場所 : 東京外国語大学本郷サテライト4階
 プログラム :
  塩原朝子(AA研)
   「バリ語のApplicative」
  菊澤律子(国立民族学博物館)
   「オーストロネシア諸語研究における Applicative」
  箕浦信勝(東京外国語大学外国語学部)
   「付加語句的名詞句の昇格と主要部標示等について」
  小森淳子(大阪外国語大学外国語学部)
   「バントゥ諸語の適用形について」

 2006年度第1回
 日時 : 2006年5月20日(土) 13:00-18:00
 場所 : AA研マルチメディア会議室(304室)
 プログラム :
  海老原志保(東京大学大学院博士後期課程)
   「チベット語アムド方言の引用節における能格マーカー」
  桐生和幸(美作大学助教授)
   「ネワール語の能格と格」
  北野浩章(愛知教育大学助教授)
   「カパンパンガン語の諸構文と能格性」
  角田太作(東京大学大学院人文社会系研究科教授)
   「2項述語階層」


プロジェクト・メンバー
[主 査] 呉人徳司
[所 員] 塩原朝子、荒川慎太郎、澤田英夫、中山俊秀、ペーリ・バースカララーオ、星泉
[共同研究員] 梅谷博之、大角翠、奥田統己、風間伸次郎、マーク・カンパナ、菊澤律子、北野浩章、桐生和幸、栗林裕、小森淳子、佐々木冠、沈力、鄭聖汝、角田太作、當野能之、中村渉、野瀬昌彦、林徹、プラシャント・パルデシ、匹田剛、箕浦信勝、山田久就、米田信子、ロバート・ラトクリフ、渡辺己