Part 2-7 :: Islam, Religion of Unity by Prayer

イスラームの普及とタリーカ


 修行を通して唯一神であるアッラーへの接近を求めるようなイスラーム思想をスーフィズム(イスラーム神秘主義)と呼ぶ。タリーカとは、そのような修行者が集まり、集団で修業を行う教団のことである。タリーカの修行は師弟関係に基づいており、修行を終えるとイジャーザと呼ばれる免状が発行された。

 ジンマ地方の民衆の間でイスラームが普及するにあたってタリーカは重要な役割を果たした。特に重要であったのが、ティジャーニー教団である。この教団をジンマ県に導入したのは、エチオピア北部のイファート出身で、アッバ・ジファル2世の招きに応じてジンマ地方に来住したマフムード・アブー・バクルという人物であったが、広く普及させたのはハッジ・ユースフ(ユースフ・ハリーファ・ヌール・アッ=ディーン・アリー)であった。

 現在エリトリアのマッサワ出身で、リンム王国に移住した曽祖父を持つハッジ・ユースフは、1878年にグマに生まれ、ジンマでコーランやイスラーム法学について学んだ。その後彼はエチオピアにおけるイスラーム学の中心地であったエチオピア北部のウォッロに赴いて勉学に努め、さらにメッカ、メディナ、カイロにおいて研鑽を積んだ。その中で彼はティジャーニー教団のイジャーザを得て、ジンマに帰国した後この地でティジャーニー教団を広めることになる。

 このようにジンマ地方におけるイスラーム化においては、エチオピア内外を結ぶイスラームのネットワークの中で育まれたイスラーム知識人たちが重要な役割を果たしていたのである。