Part 4-1 :: Islam, Religion of Unity by Prayer

映像1:民族誌映画「ヤアへの参詣」


 エチオピア西部、ベニシャングル・グムズ州に位置するヤアの中心には、ティジャーニー教団の導師アルファキー・アフマド・ウマルの墓廟があり、その周りにはアルファキーを崇敬する人々が集落を形成し、参詣者を迎え入れている。

 ヤアへの参詣の機会は年間3度あり、預言者の聖誕祭、昇天祭、犠牲祭に行われる。そのうち、参詣者の規模が最も大きくなるのが犠牲祭である。参詣者の多くはムスリムであるが、わずかながらキリスト教徒の姿もみられる。病気、貧困からの救済を望むもの、アルファキーへの崇敬の念から参詣に訪れるものなど、その動機はまさに十人十色と言える。

 アルファキーは、生前、イスラームを教え広めただけでなく、難病の治療などさまざまな奇蹟を起こして人々を救済したとされ、彼が住居を構えた土地には、彼を慕う人々が移り住んだ。現在のヤアの住民も、アルファキーの傍で暮らすことを決意してヤアへ移住した人々やその子孫であり、アルファキー没後は墓廟の管理と参詣者の世話を集落全体で行っている。

 ヤアの住民は経済的には豊かとは言えない農民がほとんどであるが、生前、アルファキーが訪問客に無償で宿と食事を提供したことに倣い、住民は参詣者のために無償で宿と食事を提供する。このような村住民による参詣者へのもてなし行為には、住民の共同体意識とアルファキーへの崇敬の念が集約されていると理解できる。

 近年、参詣者の大半は長距離バスを利用してヤアを訪れるが、一部の参詣者は、経済的な理由などから、今もなお徒歩でヤア村を訪れる。徒歩による参詣者のなかには90歳の老女や、乳児をおぶった母親も見られた。食材や調理道具を背負い、ムスリムの民家に宿を借りながらヤアを目指すその旅は容易なものではないが、一方では、談笑がとめどなく続くなど旅を楽しむ姿も見られた。この映画では、ヤアを訪れる参詣者の旅の様子と、彼らをもてなすヤア住民との交流が主要なテーマとなっている。

上映時間:25分 製作:松波康男(2006年)