Part 2-3 :: Islam, Religion of Unity by Prayer

アッバ・ジファル1世とジンマ王国

 現在エチオピアでは、分離独立の可能性も保障する形で民族自決権を認めたうえで、9つの州と2つの自治区からなる連邦制が採用されている。これらの行政区分の中で最大の面積を誇るのが、オロモが居住するオロミア州である。オロミア州は20の県によって構成されるが、アディスアベバからおよそ300km南西に位置するジンマを中心とするジンマ県はそのうちの1つである。

 ジンマ県は標高1800m程度の高原地帯で、各種農産物に恵まれており、特にコーヒーの生産で名高い。この地は、トゥルカナ湖に注ぎ込むオモ川の上流にあたるギベ川の流域に位置する。2007年の国勢調査によれば、ジンマ県の人口は250万人程度であり、住民の大半はイスラームを信仰するオロモである。この地にオロモの主要な下位集団であるマチャ集団が進出したのは16世紀後半のことであった。マチャ・オロモはシダマ系の先住民集団を吸収しつつギベ川流域に定着していった。

 19世紀入ると、ギベ川流域のオロモは、リンム、グマ、ゴンマ、ジンマ、ゲラという5つの王国を形成した。これらの王国は「ギベ・シャナン」と総称され、それらの領域は、現在のジンマ県とほぼ一致する。ギベ5王国は肥沃な土地から得られるコーヒーをはじめとする農産物と、奴隷・象牙・麝香などの長距離交易の利益によって繁栄した。

 ギベ5王国の1つであるジンマ王国を建国したのは、アッバ・ジファル1世(在位1830~1855年)であった。軍事と外交の才能に恵まれていた彼は、1830年にジンマ王国を建国すると、25年にわたって在位し、ジンマ王国を強国に成長させた。彼はイスラームに改宗し、この地のイスラーム文化の礎を築いた王としても知られている。

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ギベ5王国


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現在は博物館となっているジンマ王国の王宮