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共同利用・共同研究課題(短期滞在型)

個人研究者が本研究所に短期滞在して、本研究所教員との間で共同研究を行う短期滞在型の共同利用・共同研究課題です。


これまでに組織された共同利用・共同研究課題(短期滞在型)

【2018年度の課題】

◆アイヌ語沙流方言音声資料の文字化・整理およびアスペクト表現と証拠性の解明

プロジェクトの概要

期間:2018年8月1日-2018年10月31日

本研究では、AA研が所蔵している田村すゞ子氏のアイヌ語資料のうち、アイヌ語沙流方言の音声資 料の文字化と日本語訳を山越所員と共同で行うとともに、アスペクト表現や証拠性に関するデータを収集し、考察することを目的とする。沙流方言は、アイヌ語の各方言のうち最も多くの資料が残されているが、物語文に比べて会話文の資料は非常に少なく、また、近年のアイヌ語母語話者数の急激な減少により新たにそうしたデータを収集することは極めて困難な状況にある。筆者はこれまでアイヌ語のアスペクト表現や証拠性を研究 テーマとし、公刊されている沙流方言の散文説話資料を中心に扱ってきたが、散文説話においては語りに人称の制限があること(一人称で語られる場合がほとんどであること)や、物語構造がある程度定まっていることなどから、収集できる例文のバリエーションに限界があった。今回対象とするデータは、田村氏が現地で調査・収集した音声資料である。このデータはアイヌ語 母語話者同士の会話ではないものの、会話中で用いられるような例文をアイヌ語母語話者が提供しており、自然発話に近い形のものである。こうしたデータを利用することで、散文説話と会話文において現れるアスペクト表現・証拠性の比較が可能となる。しかしながら当該データはこれまで文字化や日本語訳といった整理がおこなわれておらず、利用が困難な状況にあった。こうしたデータを整理・公開することは筆者自身の研究のみならず、今後のアイヌ語研究全体にとって非常に有意義な資料となると考えられる。そこで、当該データを管理する山越所員と共同で、これまでの音声資料整理の方針(遺族からの許諾等も含む)に基づきデータの整理をすすめ、公開利用できる形に整える。そのうえで、会話文におけるアスペクト表現・証拠性の分析を進め、散文説話との比較対照をおこなう。上述のとおり会話文を欠く状態でのアスペクト表現・証拠性の解明には限界があることから、この整理・分析作業を通じて得られる成果は単にアイヌ語の文法構造の解明にとどまらず、言語類型論的にも貴重なデータを提供する機会となりうる。上記のような目的・意義をふまえ、2018年8月1日から10月31日までの滞在日程のうち、8月1日から9月30日までの2か月間は音声資料の文字化・日本語訳を行い、10月1日から31日にかけて それらの整理と考察を進める。

メンバー

研究代表者

  • 吉川佳見

受入所員

  • 山越康裕



◆東アフリカにおける女性高齢者の民族誌的研究

プロジェクトの概要

期間:2018年5月1日-2018年7月31日

1998年よりケニアにて文化人類学的調査を行っているが、2014年より女性と健康に関する 調査を長崎大学ケニア拠点の協力の下、実施するようになっている。これまでは西ケニアのグシイ人の社会を中心に調査を行ってきたが、海岸部との比較研究も含めクワレ地域にもエリアを拡大し、調査研究を実施。また共同研究を行う椎野准教授は、長年にわたり寡婦やシングル女性の実践や戦術を試みていることから、女性が寡婦になったときに、どう生きていくのかについて、今後、高齢化社会 (また女性の方が高齢化になることが明らかとなっている)の中で、あるいはグローバル化する社会の多様性の中で、女性の生き方について比較研究を試みる。

メンバー

研究代表者

  • 宮地歌織

受入所員

  • 椎野若菜



◆歴史学と言語学の連携による満洲語行政文書の研究―『内国史院檔(順治元 年分)』を中心に―

プロジェクトの概要

期間:2018年5月1日-2018年7月31日

満洲語はツングース諸語の一つであり、中国の清朝 (17c-20c) において公用語の一つとして行政で用いられた。そして膨大な行政文書が満洲語で書かれ、現在に至るまでアーカイブとして保存されている。 本課題で扱う内国史院檔(順治元年分)は順治元年 (西暦 1644 年) に流通した行政文書であり、内容は 行軍の記録や部隊内で発生した事件とその裁判の記録を始めとし多岐に渡り、歴史学的・言語学的に大きな史料的・資料的価値を有している。 申請者はこれまで滿文講読会 (http://blog.goo.ne.jp/manjugisun) という研究グループを組織し、内国史 院檔・順治元年分のうち四月から六月分の記事 (合計150葉) のローマ字転写と日本語訳の作業を行ってきた。本グループには申請者をはじめとする歴史学を専門とする研究者と、AA 研の児倉准教授をはじめとした言語学を専門とする研究者が参加しており、歴史学と言語学の複合的観点から研究活動を行っている。さらに2017年度からは、七月分および十月分のローマ字転写と日本語訳の作業に取り組んでいる。本研究課題では、これまでの研究活動により得られた成果を出版物の形で公開することを目指し、申請者とAA研児倉准教授の協働により出版に向けた具体的な作業を行う。

メンバー

研究代表者

  • 綿貫哲郎

受入所員

  • 児倉徳和





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