2017年度第1回ワークショップ「リスク・ハザード・レジリエンス」

「福島放射線災害からのレジリエンス(復興力、折れない心):被災者の証言」

櫻井 雄志(NPOふるさと理事)

福島放射線災害の被災者である櫻井雄志氏をお迎えし、被災者の立場からご報告をいただいた。
櫻井氏は南相馬市で土地の測量および関連事業を営んでいる。福島放射線災害に際しては、NPO「ふるさと」の理事として環境放射線の測定を通して、自分たちの生活圏の安全・安心に関する情報発信・普及活動を行ってきた。

  1. (1)2011年3月11日の地震、津波発生から東電福島第一原子力発電所の事故が明らかになるまでの過程
    3月12日の発電所の事故直後には、救援のために地域に入っていた自衛隊が地域の人々に説明もないまま突然撤収し、地域の一般の人々が状況を把握できず、救援に関する明確な指揮系統が存在しない状況が一定期間続いた。
  2. (2)放射線災害の全貌が明らかになった後の櫻井氏の活動
    • 櫻井氏は「帰巣本能」から、南相馬市を再び安心して住める場所にすることを第一に考えて活動を進めた。災害直後から、各地域の環境放射線の測定に取り組み、その結果検証された南相馬市の住宅地の居住の安全性、農地で栽培された農産物の安全性に関する情報発信を行っている。 現在、除染により、南相馬市の住宅地は安全に安心して居住し、農産物も問題なく出荷できるようになっている。
    • 上記の活動に際しては、震災以前から関わりがあった研究者から必要な情報を得つつ、一緒に活動できたことが大きな助けとなった。
  3. (3)南相馬市の現状
    • 写真にあるように、田園風景の中、「除染土」を詰めた黒や白の袋(フレコンバッグ)が何百、何千個と並んでいる光景が現状としてある。櫻井氏にとってはすでに「見慣れた光景」であるが、客観的に見ると異様な状況であることに変わりはない。
    • この地域が震災の前の状態に戻るということは決してない。タイトルに「折れない心」とあるが、心が折れることもある。ただ、そこから再起し、その時々、その土地々々に合った最善の解を求めていく。それが自分たちにとってのレジリエンスである。

(文責:AA研 塩原 朝子)

飯館村 除染土仮置

(飯舘村 除染土仮置、櫻井雄志提供)