FSCについて
アジア・アフリカ言語文化研究所は、2004年度にフィールドサイエンス研究企画センター準備室を設置して、フィールドサイエンス研究企画センター(Field Science Center、以下FSCと略)の設立準備に当たってきましたが、2005年度から所内措置によりFSCの活動を開始、2006年4月に正式発足させました。1997年度から活動を続けている情報資源利用研究センター(IRC)に続いて、AA研は2つ目のセンターを持つことになったのです。
1. FSCの目的
FSCの目的は、主に2つあります。1つは、AA研の研究活動を特徴づけてきた臨地調査の手法をより理論的・実践的に開発して、さまざまな学問の領域を横断する「フィールドサイエンス」という「現地学」を構築すること、もう1つは調査関連データを体系的に蓄積し、臨地調査に関わる研究者間の連携の中枢を担うことです。
国立大学法人化の中で、大学間の「競争」が過度に強調され、これまで営々と築かれてきた大学間の協力・連携関係がともすれば等閑視されかねない状況となりました。AA研は、「フィールド」をキーワードとしてこうした協力・連携関係を維持・強化することを、全国共同利用研究所としての使命の一つであると改めて深く認識し、そのインターフェース機能を効果的に発揮する組織として、FSCを発足させたのです。
2009年度末をもって半世紀近くに及んだ全国共同利用研究所としての歴史に幕を閉じ、2010年4月から共同利用・共同研究拠点に移行した後も、AA研のこうした認識は変わりません。
私たちセンター構成員は付託された仕事に対して大きな責任を覚えるとともに、新たな研究活動の地平を広げるべく日々努力しています。
2. FSCの活動の指針
FSCは設立以来、文部科学省特別経費による「中東イスラーム研究教育プロジェクト」 (2005~2009年度)の推進にも当たってきましたが、2009年度末をもって同プロジェクトが終了したことにともない、現在は次の2本の柱を活動の中心にすえています。
Ⅰ. 研究手法の開発
「現場百遍」という言葉があります。AA研はアジア・アフリカ諸地域における臨地調査に基づく研究を推進してきましたが、研究者が現地に身を置いてこそ意味ある情報を得ることができる、という考えを、われわれ所員は共有しています。それはインターネット等を通じて電子的画面上で即座に情報を得ることが可能になった現在、かえってますます強く認識されるようになってきました。
それでは海外での臨地調査はどのように行うべきなのか、あるいはどうすればよりよく行うことが可能になるのか。こうした問題関心のもと、臨地調査の手法を理論的・実践的に開発することが一つの柱となっています。具体的には、超域的・学際的な新研究領域の開拓を共同して行う「フィールドサイエンス・コロキアム」という研究会を随時開催し、様々な専門分野の研究者とともに、調査手法やデータの意味づけ、さらに研究者と研究対象の関係性の問題などを集中的に議論します。またフィールドサイエンスを専門とする若手研究者を中心に研究手法の共有化と新たな開発を目指す「フィールドネット」のオンライン、オフラインの会合を継続的に実施します。
Ⅱ. 現地研究拠点の設置・運営
国際共同研究を展開するため、レバノンのベイルートに設置した研究拠点「中東研究日本センター Japan Center for Middle Eastern Studies(ILCAA/Tokyo University of Foreign Studies)[略称JaCMES]」、マレーシアのコタキナバルに設置した研究拠点「コタキナバル・リエゾンオフィス Kota Kinabalu Liaison Office」を中心に学術交流を推進し、わが国における両地域の先端的な研究拠点となることを目指しています。