2015年度は,アラビア語パレスチナ方言,古ジャワ語(東京会場),モンゴル語(大阪会場)の講座を開講しました。
1. 研修の概要 詳細
研修期間: 2015年8月6日(木)~2015年9月11日(金)(土日および8月13日(木),14日(金)は休講) 研修時間: 125時間 研修会場: 東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所 本研修は2015年8月6日(木)から2015年9月11日(金)までの25日間,1日あたり5時間(午前2時間,午後3時間),合計125時間実施した。 会場は,東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所マルチメディア会議室(304)を利用した。
2. 講師 詳細
- 主任講師:
- 依田純和(大阪大学大学院言語文化研究科専任講師)
- 外国人講師:
- Mūsā SHAWĀRBAH (Lecturer, Arabic language and literature, Kaye Academic College of Education, Be’er Sheva)
- 文化講演者:
- 金子由佳(日本国際ボランティアセンター)
- 菅瀬晶子(国立民族学博物館)
3. 教材 詳細
- 『アラビア語パレスチナ方言-文法編- The Palestinian Arabic - Grammar』(依田純和)
- 『アラビア語パレスチナ方言-単語集-The Palestinian Arabic - Glossary』(依田純和)
主任講師はこれまでに研修言語に関して「アラビア語パレスチナ方言入門」「アラビア語エルサレム方言文法研究」の2冊を著しており,言語研修で用いた教材はその両方の要素を取り入れたものである。テキスト・文法編は,27課を設け,それぞれ①文法解説 ②単語 ③練習問題 という構成とし,会話編および文法一覧を付録とした。練習問題は日常会話ですぐに使えるような内容の文を多く取り入れた。会話編の割合はごく少ない物になっているが,これは研修中の会話練習はネイティヴ講師との会話を重視したためである。語彙集にはテキスト・文法編で用いた単語およそ2000語を収録している。
4. 受講生詳細 詳細
二次募集までで8名(研究者1名,大学院生2名,学部学生5名)の受講生の登録があったが,最終的には4人が残り,そのうち修了者は3名となった。脱落者の一人は大学院生でしかも仕事を持っている方だったので当初より修了は困難であるという事情は講師側も了解していた。また最後まで残った者のうち1名も職務の都合で欠席が多かったため修了に至らなかった。受講者が半減したという点だけ取り上げれば残念としか言いようがないが,反面,残った受講者はそれぞれ十二分に訓練することができ,学習効果と言う点については満足のいくものであったと考える。
早々に脱落した受講者についてはその動機などを詳しく聞く間もなかったが,残った受講者は,パレスチナ地域自体に関心があり,既に大学では古典アラビア語の学習もしている学部生が2名(東京外国語大学1名と他大学),パレスチナをフィールドとする研究者1名,言語自体に関心を持っている学部生1名である。
5. 文化講演 詳細
文化講演は2回行った。
第1回:8月10日(月)9:30~11:40(質疑応答含む)
題目:パレスチナ・ガザ最新報告-占領69年目の苦難-
講師:日本国際ボランティアセンター・パレスチナ事業 金子由香氏
この公演ではパレスチナという地域の概要,占領地に関して分離壁や入植地の状況の報告の後,特に昨年の空爆以来のガザ地区内での政治状況や医療や教育の状況,孤立した同地域内で住民たちによるボランティア活動の様子などについて詳しい報告がなされた。第2回:9月4日(金)13:50~16:00(質疑応答含む)
題目:パレスチナのキリスト教徒:その歴史,文化,現在
講師:国立民族学博物館 菅瀬晶子氏
アラブ地域即ちイスラームというイメージがあるが,パレスチナ地域に関していえば,イスラームが広まる前はキリスト教世界であり,現在でも多くのキリスト教徒がマイノリティーとして生活している。本講演では,同地域のキリスト教徒の一般的な状況,宗派や文化的な特徴などを中心に,ユダヤ教徒やムスリムと共通する聖者崇拝の実情などを紹介し,また特にイスラエル国内での政治的な位置づけなど,あまり紹介されることのないトピックについて詳しい報告がなされた。受講者(特に学部学生)にとってはいずれの講演も真新しいことばかりで大きな関心を持って聞き入っていた。また講演の内容とは直接関係ないものの,パレスチナでの留学事情についての質問などもなされた。いずれも外部へ公開された講演だったので,外部から聴講者が第1回目には1名,第2回目には3名来場し,特に第2回目では外部からの聴講者からも活発な質問が行われた。
6. 授業 詳細
最初の数時間は基本的な発音練習を行った。発音に関しては研修を通して必要と思われる場合は,集中して行うこともあった。最終的にはいずれの受講者も無論ネイティヴ並みの発音の習得はともかく,意思の疎通に不都合の無い程度の発音の要領を習得した。
第1時間目は専らネイティヴ講師が挨拶,時間,日付,天候など身近なトピックに関する表現などを次第に増やしつつ一人ずつ質問し,また受講者同志が質問しあう形で毎日同様のパターンを最終日まで繰り返した。
2時間目以降は教科書の文法事項を主任講師が解説し,それを使ってネイティヴ講師と実践した。具体的にはまずネイティヴ講師と受講者Aが一対一で会話を行い,次に他の受講者に受講者Aにその会話を,3人称を使って再現させるという訓練を行った。
特に動詞組織の習得は,アラビア語学習での山場で,何人かの受講者にとっては相当困難であったようであるが,動詞を含む文を理解し,返答する,と言う練習において,多少時間が与えられれば正しい動詞の形を用いて答えられるようにはなった。
また数回ではあるが,あるトピックに関してあらかじめ作文して来る課題を与えたが,それ以外は予習・復習を課すことはしなかった。
アラビア語パレスチナ方言はあくまで口語であり,文字で書かれることがないので,評価は筆記試験などを行わず,平常点によった。
7. 研修の成果と課題 詳細
テキストの分量が多かったため,最終的にはテキストの最後の2課ほどを終えることができなかった。しかしながら,受講者数が少なかったので一人一人に十分時間を取って会話の練習を行うことができたので,挨拶から始まって,衣食住一般に関する基本的な動作を表現する力を養うことができた。
受講生は今後もアラビア語パレスチナ方言の学習の継続を望んでいるようだが,日本のみならず,世界中を見ても中級向けのテキストが存在しないので,このような学生の学習意欲にどのように答えていくかという点は一つの大きな問題である。
8. おわりに 詳細
この言語研修は終わってみれば実に楽しい5週間でした。まず,この研修に講師として声をかけてくださったAA研の錦田准教授に感謝申し上げます。また文化講演で協力したいただいた金子氏,菅瀬氏にも厚く御礼申し上げます。また,ネイティヴ講師の招へい関連の手続きも含め,事務手続きの苦手な私を相手に忍耐強く対応してくださった木本様を始め事務の皆様にも深く感謝いたします。
1. 研修の概要 詳細
研修期間: 2015年8月17日(月)~2015年9月4日(金) (土日は休講) 研修時間: 100時間 研修会場: 東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所 本研修は2015年8月17日(月)から2015年9月4日(金)までの平日15日間,1日あたり基本7時間(午前4時間,午後3時間。ただし金曜日は午後2時間,最終日は午後1時間),合計100時間実施した。
会場は,アジア・アフリカ言語文化研究所マルチメディアセミナー室(306)を利用した。
本研修で扱う古ジャワ語は,写本・刻文に記録された文章語であるため,研修では,会話の練習時間は設けず,文法の解説とテキストの読解練習を中心とした。また,外国人講師としては,インドネシアの旧宗主国であり,古ジャワ語研究が進んでいるオランダから専門研究者であるモーレン氏を招聘した。当初の予定では,外国からの受講生参加の可能性も想定していたため,モーレン氏の研修は,教材および講義ともにすべて英語で実施された。しかし,実際には,受講生はすべて日本人であっため,日本人講師による講義および文化講演では日本語を使用した。日本人講師は適宜モーレン氏の説明を日本語で補足したり,参考資料の提示をおこなうなどして講義進行の円滑化をはかった。
2. 講師 詳細
- 主任講師:
- 青山亨(東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授)
- 講師:
- 菅原由美(大阪大学大学院言語文化研究科准教授)
- 山﨑美保(東京外国語大学大学院総合国際学研究科博士後期課程 大学院生)
- 外国人講師(専門研究者):
- Willem van der MOLEN (Senior researcher, KITLV/Royal Netherlands Institute of Southeast Asian and Caribbean Studies)
- 文化講演者:
- 深見純生(桃山学院大学)
- 肥塚隆(大阪大学名誉教授)
- 青山亨(東京外国語大学)
3. 教材 詳細
- 『An introduction to Old Javanese』 (Willem van der MOLEN)
第1部Textbookは文法の解説,第2部Primerは読本からなる2部構成である。別冊としてTextbookとPrimerで使われる単語の意味を英語で説明した単語集Wordlistが付随している。さらに,研修の進行にあわせて,モーレン氏から随時,補足解説Supplementが配付された(Supplement 11まで)。本教材は,Zoetmulderのオランダ語とインドネシア語による標準的な古ジャワ語文法書を基礎としつつも,初心者の利用を念頭にモーレン氏の独自の判断で基本事項から難易度の高い事項へと進むように配列した古ジャワ語文法入門書である。第2部の読本には『マハーバーラタ』(第1巻アーディパルワ)から散文のテキスト,『ラーマーヤナ』から韻文のテキストが選ばれており,古ジャワ語文学作品の典型的な特徴を知るのに適切な内容となっている。現在のところ英語で書かれた唯一の古ジャワ語入門書であり,本教材の作成の教育的意義はきわめて高い。
なお,刻文史料について講義した山崎氏は,古ジャワ語刻文を読むための文化的社会的説明と刻文テキストからなる教材を別途作成して使用した。
4. 受講生詳細 詳細
受講生は日本人6名,うち男性4名,女性2名であった。本学大学院生1名以外はすべて社会人であった。女性1名以外は,いずれも分野は異なるがインドネシアまたは東南アジアにかかわる研究に携わる研究者であった。研究につながる言語を受講するという動機があるため,仕事との時間調整に追われるなかでも出席状況は良好であり,最終的には6名全員が無事に修了した。
5. 文化講演 詳細
第1回文化講演(公開):8月21日(金)14時~16時。深見純生「ジャワの中心性―歴史と生態学」
第2回文化講演(公開):8月28日(金)14時~16時。肥塚隆「ボロブドゥルとプランバナン―中部ジャワの二大建築」
第3回文化講演(非公開):9月3日(木)14時~16時。青山亨「ジャワ世界とインド文化―プランバナン寺院のラーマーヤナ浮彫を手掛かりに」3回の文化講演はいずれも,古ジャワ語の文献が生み出された時代(5世紀~15世紀のほぼ一千年)のジャワ社会を理解するに資するテーマであった。深見講演は,前半では生態学的にみたジャワの豊かさを示し,後半では生態学的観点から漢文史料に現れるジャワの特徴を解説した。肥塚講演は,多数の写真を紹介しながら,インド文化の影響を受けたジャワの寺院建築や浮彫が質においてインドと比肩するものであること,様式においてインドの伝統に忠実な側面とジャワ独自の要素が顕著な側面があることを解説した。以上の2講演は公開講演であり,受講生以外にも多くの参加者があった。最後の青山講演は,プランバナン寺院の浮彫と,古ジャワ語写本を初めとするテキストに伝承される『ラーマーヤナ』を比較することで,当時のジャワ社会における精霊信仰に基づいた生死観を明らかにしようとした。いずれの講演も受講生は熱心に聴講し,質問も活発に出された。
6. 授業 詳細
最初の6日間では文法が講義された。基本的に,午前中に文法の講義をおこなったあと,受講生は各課に付された練習問題(古ジャワ語テキストの翻訳)に取り組み,午後の時間を使って受講生の解答に基づいて質疑応答を繰り返すというパターンでおこなわれた。残りの9日間では,基本的に,午前中に読本のテキストの翻訳に受講生が取り組んだあと,山崎氏による刻文の講義をおこない,午後の時間を使って受講生のテキストの翻訳に基づいて質疑応答を繰り返すというパターンでおこなわれた。また,適宜,補足解説Supplementに基づいた講義がおこなわれた。
なお,受講生の大部分が社会人ということもあり,講義時間外での予習復習の時間を取ることが困難なため,練習問題や翻訳への取り組みは基本的に研修の時間内でおこなってもらった。
7. 研修の成果と課題 詳細
今回の研修は,恐らく日本で初めての本格的な古ジャワ語研修という画期的な研修であった。受講生の全員が古ジャワ語の知識は皆無の段階から開始したが,研修終了時には,文法項目すべての学習を完了するとともに付随する練習問題を解き終わり,さらに,読本のうち『マハーバーラタ』から選ばれたテキスト全部と『ラーマーヤナ』から選ばれたテキストの半分を読み終えることができた。『ラーマーヤナ』から選ばれたテキストのうち後半は,時間切れのため読むには至らなかったが,習得した古ジャワ語のレベルは十分に当初の予定に到達したと言ってよいであろう。受講生からの感想も,一様に,充実した内容であり,得るところが多かったという肯定的なものであった。また,研修期間中の受講生間での情報の交換も大変に有益であった。
本研修が成果を出すことができた一因として,受講生の多くが古ジャワ語と同系統のオーストロネシア語族の言語に親しんでいたこと(インドネシア語,チャム語など),古ジャワ語に大量の借用語があるサンスクリット語に通じた受講生もいたことが挙げられる。
また,本研修は英語による講義が中心であったが,モーレン氏の英語が明快であったこと,日本人講師による補足もあり,いずれの受講生も大きな問題を抱えることなく受講を続けることができた。これは,受講生のレベルが担保されているという条件のもとでであるが,今後,英語による語学研修をおこなう可能性に道を開いたと言ってよいであろう。
8. おわりに 詳細
100時間というきわめて長時間の集中講義であったが,受講生はいずれも体調を崩すこともなく,また集中力を切らすことなく受講し,最終的に全員が修了にいたったことは大変に喜ばしいことである。本研修が成功裡に終了するまでに,裏方として準備と運営に携わったすべての方々に感謝の意を表したい。また,今回は古ジャワ語を対象とした研修であったが,ジャワ語の文献としてはさらに現代ジャワ語による文献が豊富に存在する。近い将来に現代ジャワ語の研修が開講されることを切に望むものである。
1. 研修の概要 詳細
研修期間: 2015年8月3日(月)~2015年9月4日(金)(土曜日・日曜日は休講) 研修時間: 125時間 研修会場: 貸し会議室 大阪研修センター 十三 本研修は2015年8月3日(月)から2015年9月4日(金)までの25日間,1日あたり5時間(午前2時間,午後3時間),合計125時間実施した。
会場は,貸し会議室 大阪研修センター 十三 研修室Eおよび会議室Aを利用した。
2. 講師 詳細
- 主任講師:
- 橋本勝(大阪外国語大学名誉教授)(65時間担当)
- 講師:
- 中嶋善輝(大阪大学大学院言語文化研究科准教授)(60時間担当)
- 外国人講師:
- Myagmarsuren UUGANBAYAR(大阪大学大学院言語文化研究科特任准教授)(125時間担当)
- 文化講演者:なし
3. 教材 詳細
- テキスト1.『モンゴル語会話・講読 Mongolian Conversation and Reader』(橋本 勝,M.オーガンバヤル著,140p.)
- テキスト2.『明解モンゴル語文法 Comprehensive Grammar of the Mongolian Language』(中嶋 善輝著,125p.)
おもな教材は,今回の研修のために準備した上記2篇であるが,他に『モンゴル文語入門Introduction to Literary Mongolian』1996,大阪外国語大学(橋本勝,E.プレブジャブ著,162p.)を使用した。また『モンゴル語会話・講読』に基づき文字と発音及び第1課~第20課の会話の部分についてオーガンバヤル講師の吹き込みで受講生用に音声教材CDを作成した。録音と編集は大阪大学箕面キャンパス内のスタジオで行われた。なお,この言語研修 モンゴル語音声教材CD第1課~第20課は研修開始日に各受講生に配布された。会話・講読篇は先ず導入において現代モンゴル語(モンゴル国の標準語)の発音と文字のセクションを設けその後に第1課(知り合う)~第20課(ナーダム)を置いた。各課ごとに会話の部と講読(テキスト)の部に分け,そこに現われる語彙と日本語訳をつけそれぞれ語句(1),語句(2)とした。また各課に,内容の理解を確かめ深めるために練習問題(1)~(3)を加えた。モンゴル本来の伝統文化や民主化以降,さまざま変化してきた近年の日常生活の実情を反映するような内容をできるだけ盛り込むように努めた。
文法篇ではモンゴル語の根本構成原理である3品詞分類(名詞類,動詞類,不変化詞類)に基づいて章立て(第1部~第5部)をした。キリル文字正書法では接尾辞の付加,除去の際には音節構造を変化させ表記する体系であるためテキストでは出来る限り活用例を表にして載せるなど,語形変化に留意して記述した。
4. 受講生詳細 詳細
受講生は社会人1名,大学院博士後期課程学生1名,大学学部学生1名の構成で,人数は3名であった。2名は東京在住,他の1名は大阪在住のものであった。出席状況は極めてよく,うち2名は全125時間,皆勤であった。受講生全員,修了した。受講動機については1名は,博士後期課程で朝鮮語の文法を研究し独学で既にモンゴル語の学習経験がありアルタイ型の言語を研究の対象にしたいとするもの。1名は大学学部生であるが,本研修で学んだことを在籍の大学で継続してさらに発展的な学習も行える環境にあり専攻言語に匹敵する十分な学習を行いたいとするもの。残る1名は東洋学専門の研究図書館で司書として勤務し主として中国語図書を担当するが,傍ら東北アジア諸語としてはモンゴル語,満洲語を担当するもレファランスの対応で自力で書誌を判読することが出来ず苦慮してきた。さらにチンギス・カン時代より使用されてきたモンゴル文字の読解を学べるとするもの。受講生はそれぞれ,具体的な動機を持ち各自の目標をしっかり持っていることがよく感じとれた。
5. 授業 詳細
受講生が少人数ということで会場もそれに合わせてこじんまりした研修室E(1日だけ会議室A使用)が用意された。外国人講師,日本人講師が黒板(ホワイトボード)を背景に受講生と間近で相対面して授業が行なえる形をとった。第1週の初日には発音と文字(キリル文字)の説明をし,テキストに沿っておもに橋本が会話と講読を担当し,(最後の週はチンギス・カン以降使用されてきた伝統的なモンゴル文字とモンゴル文語の概説をしローマ字転写及び文語文の読解の手ほどきをした)中嶋が文法を担当する形で進めた。オーガンバヤル講師とのペアーで毎日,橋本と中嶋は連携しつつそれぞれ授業に当たった。
文法の授業ではテキスト上の例文を逐一板書し分析しながら,ネイティブ講師とのやり取りを交えつつ急がず丁寧な解説に努めた。単元ごとに受講生に質問の有無を確認した後,ネイティブに発音指導をしてもらう要領で進めた。授業最終日にはちょうどテキスト全てを解説し終え,最終試験で締めくくった(最終試験の1週間前に模擬問題を配布し通知した)。
6. 研修の成果と課題 詳細
連日の猛暑の中で受講生3名は,皆モンゴル語の研修に終始,意欲的に取り組み研修内容をこなし,この研修を無事に終えて修了証書を手にしたことは一つの成果といえる。橋本は第4週の最終日に会話・講読のテキストを終了したところで書き取りテストを行った。4つの円唇母音の聞き分け,実際の発音と正書法上とのズレなどに不正確な点も見られヒアリングの理解度は十分とはいえず課題は残ったが,ある程度止むを得ないこととも思われた。最終の1週間は受講生の要望でもあったが,『モンゴル文語入門』を受講生に配布しテキストとして使用し伝統的なモンゴル文字の読解とモンゴル文語の文法の簡潔な概説をしつつ受講生にモンゴル文字及び文語文の例文を板書させ習得出来るように努めた。時間は限られていたが,伝統的モンゴル文字・文語の読解の手ほどきが出来たのは幸いであった。
文法の面で成果としては,受講生が最終試験に全員合格点(60点以上)を得るレベルに達したこと。最終試験の内容は,テキストの中から(p.1~79(命令形)まで)からランダムに抽出した10の例文を読解するもの。
今後の課題として会場にはなるべく固定されたボードのある部屋を選ぶべき点があげられる(今回は白板がキャスター付きのもので,ぐらつき書きにくかった)。
会場は,交通の便の良い大阪市内の十三での開催であったため,苦情はなかった(2013年ウズベク語研修(於 大阪大学箕面キャンパス)では受講生からアクセスが大変だとの声を聞いた)。
7. おわりに 詳細
夏の暑い最中の5週間の研修,お蔭様で受講生,講師ともに支障なく無事に終えることが出来き,一定の達成感を得たように思う。研修以前より研修期間を通じてお世話になったAA研,事務担当の木本真弓さんに厚く感謝の意を表します。また教材の校正段階でお世話になったAA研の山越康裕准教授にも謝意を表したい。
この研修はアジア・アフリカ地域での現地調査・研究や専門的業務に役立つ現地語の習得を目指す短期集中型語学研修です。
日本の専門研究者と母語話者とが一緒に教授にあたる生きた言語教育である点が特徴です。
今年度は,アラビア語パレスチナ方言,古ジャワ語,モンゴル語の言語研修を別記実施要領に基づいて実施しますので,受講希望者は下記により申し込んで下さい。
1. 募集言語 | アラビア語パレスチナ方言,古ジャワ語,モンゴル語 |
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2. 募集人員 | 各言語 約10名 |
3. 募集期間 | 2015年5月1日(金)~ 2015年5月27日(水) 受付時間 午前9時30分~午後5時 持込みの場合,土・日・祝日を除きます。 郵送の場合は,5月27日(水)必着です。 Eメールの場合は, 5月27日(水)日本時間午後5時必着です。 二次募集を行なっています。 第二次募集期間:2015年6月1日(月)~ 2015年6月25日(木) 受付時間 午前9時30分~午後5時 持込みの場合,土・日・祝日を除きます。 郵送の場合は,6月25日(木)必着です。 Eメールの場合は, 6月25日(木)日本時間午後5時必着です。 |
4. 応募資格 | 上記の目的に必要な学力及び社会的経験を有する人。 |
5. 応募方法 | 所定の受講申込書に記入の上,在学証明書又は最終学校の卒業証明書(写)を添えて,お申し込み下さい。 ※申し込み方法は,直接持ち込み,郵送,Eメールのいずれかとします。 ※郵送の場合は,封筒の表に「言語研修○○語申し込み」と朱書き願います。 ⇒アラビア語パレスチナ方言およびモンゴル語受講希望者向け申込用紙 申込書:wordファイル ⇒古ジャワ語受講希望者向け申込用紙 申込書:wordファイル ※古ジャワ語受講希望者は,すべて英語で記載をお願いします。ただし,お名前に漢字表記がある方は,アルファベット/漢字というように併記をお願いいたします。 |
6. 選考方法 | 当研究所で書類審査により選考します。 |
7. 選考結果 | 受講の可否は,一次募集応募分については,6月下旬までに本人あてにEメールにて通知します。 二次募集を行った場合は,7月上旬に本人あてにEメールにて通知します。 |
8. 受講手続 | 受講を許可された方は,所定の期日までに,研修言語ごとに定められた額の受講料を一括納付して下さい。 受講料は各言語ごとに異なりますので,それぞれのページをご覧ください。 |
9. 修了証書 | 研修言語ごとに定められている授業時間数の3分の2以上出席し,かつ所定の成績を収めた受講者に修了証書を交付します。 |
10. そ の 他 | 文化講演として,担当講師以外の外部講師を招いた授業を取り入れています。文化講演は一般向けに公開することがあります。 |
11. 申込み先 | 東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所2階206室 研究協力課共同研究拠点係 〒183-8534 東京都府中市朝日町3-11-1 TEL 042-330-5603, FAX 042-330-5610 Email ilcaa-ilc[at]tufs.ac.jp [at]を@に置き換えて下さい。 |
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