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共同研究プロジェクト
東南アジアにおける人の移動と文化の創造
このプロジェクトは1996年度から1998年度に実施されました。
以下はその記録です
諸文化の形成に関して、これまでの文明中心的な発想から地域中心的な発想への転換が進んでいるが、かつて「文明の十字路」として捉えられた東南アジアの諸地域についても、地域的なネットワークの存在とその役割が強調されつつある。このような発想の転換は、必然的に現在の諸文化の形成過程を人の移動と交流という観点から見直す方向へとわれわれを導き、また、人の移動が様々な形で現在も進行中であることは、今後この地域でどのような文化が形成されるのか、という関心を喚起する。現在の東南アジアの諸地域は、一方ではいわゆる民族問題の火種を常に抱えつつ、他方では欧米的価値観との差違化を目指して「国民文化」のみならず、「アジア文化」という意識の萌芽さえ生み出しつつある。このような意識の「広域化」と「個別化」を、人の移動による集団の同化と異化という視点から読み解き、これまでの東南アジア諸文化の形成過程を捉え直すとともに、今後の広域的意識形成の動向についての考察を試みることが、本プロジェクトのねらいである。
1998年度は3年計画の3年目に当たる。当年度は、2年次の分科会を継続し、また2年次に行われた全体研究会の成果を踏まえて、各々のテーマを深化させる。 |
本プロジェクトを構成する分科会とコーディネータは以下の通りである:
第1分科会: 「人の移動と政治思想・意識の創造」 (栗原博英)
第2分科会: 「フィリピンを中心とした東南アジア島嶼部における人の移動と文化の創造」 (床呂郁哉)
第3分科会: 「多言語使用・標準語化・混交語」 (菊澤律子)
所内メンバー
◎宮崎恒二(代表) ○栗原浩英(代理) 池端雪浦 菊澤律子 澤田英夫 新谷忠彦 床呂郁哉 内藤雅雄 西井涼子 根本 敬 本田 洋 三尾裕子 吉澤誠一郎
1996年度 1)第1回研究会 1996年5月17日 (金)
1. 宮崎恒二(AA研)
「プロジェクト趣旨説明」2. 三尾裕子(AA研)
「ケーススタディ:東南アジアにおける華人の移住と文化形成」2)第2回研究会 1996年9月27日(金)
1. 鈴木伸隆(筑波大学)
「フィリピン低地イロンゴ社会における<ハロイ・クラン>の生成」2. 床呂郁哉(東京大学)
「スールー諸島海洋民の移動と越境」3)第3回研究会 1996年10月25日(金)
1. 坪井善明(北海道大学)
「アジアの挑戦:ヨーロッパの相対化」2. 清水 展(九州大学)
「ピナトゥボ噴火とアエタの生存戦略」4)第4回研究会 1996年11月15日(金)
1. 吉田敏浩(ジャーナリスト)
「ビルマ辺境,多民族世界の移動と越境と交流」2. 石川 登(京都大学東南アジア研究センター)
「サラワク/西カリマンタン国境地帯における
国家および民族の生成:マレー農村史からの考察」5)第5回研究会 1997年3月25日(火)
小瀬木えりの(学振特別研究員、京都大学東南アジア研究センター)
「移民の社会学:transnationalismの視点から」
1996年国際シンポジウム報告 |
1997年度 1)全体研究会(第1回) 1997年 7月 2日
Leo Suryadinata (National University of Singapore)
「東南アジアの華人と中国」
(Southeast Asian Chinese Relations with China: Continuity and Change)2)第1分科会(第1回) 「人の移動と政治思想・意識の形成」 1997年 9月19日
井口由布(東京外国語大学大学院博士後期課程)
「女性・グローバル化・国民国家」3)第3分科会(第1回) 「多言語使用・標準語化・混交語」 1997年10月25日
1.陳 於華(大阪大学大学院)
「香港と南中国における「標準語化」の地域差とその要因」2.山田幸宏(姫路獨協大学)
「フィリピンにおける言語問題」3.坂本比奈子(麗澤大学)
「東南アジアにおけるタイ語の特殊事情」4.崎山 理(国立民族学博物館)
「マレー語のグロウバリゼイションと地域化」分科会メンバー全員による検討
西尾寛治(研究協力者 東洋文庫奨励研究員)
「前植民地期における人の移動とムラユ世界」6)全体会(第2回) 1997年12月13日
セッション1:
「フィリピンを中心とした東南アジア島嶼部における人の移動と文化の創造」
(座長:床呂郁哉)報告1:黒田景子(鹿児島大学)
「前近代マレー半島部の港市とネットワーク--アユタヤ・ネットワーク下の港市--」 コメント:西尾寛治(東洋文庫)
報告2:宮原 暁(大阪外国語大学)
「フィリピン華僑はいかにして『移民』となったか」
コメント:三尾裕子(AA研)報告3:小瀬木えりの(京都大学東南アジア研究センター)
「現代フィリピン女性の国際移動」
コメント:川田牧人(中京大学)セッション2 :
「多言語使用・標準語化・混交語」 (座長:菊澤律子)報告1:新谷忠彦(AA研)
「シャン文化圏における言語状況」
コメント: 藪司郎(大阪外国語大学)報告2:大原始子(神戸市外国語大学・梅花女子大学)
「シンガポールに見る『国民国家』と国語の関係-標準語化の視点から」
コメント: 崎山 理 (国立民族学博物館)報告3:赤嶺 淳
(地域研究企画交流センター/日本学術振興会特別研究員)「サマ人の移動の軌跡と共時的分布」
コメント: 山田幸宏(姫路獨協大学)セッション3:
「人の移動と政治思想・意識の創造」(座長:栗原浩英)報告1:池端雪浦(AA研)
「フィリピン革命期の連邦思想−カントナリスモ・流刑・留学・マロロス議会−」
コメント: 川島 緑 (上智大学)報告2:弘末雅士(天理大学)
「ヨーロッパ人の調査活動と介在者の文化の創造」
コメント: 栗田博之(東京外国語大学)報告3:小林寧子(愛知学泉大学)
「メッカで学ぶジャーワJ^awah−19世紀末を中心に」
コメント: 飯塚正人(AA研)
1998年度 1)第3分科会(第2回) 1998年7月11日
1. 藪司郎 (大阪外国語大学)
「≪東南アジア世界の西限≫マニプールの言語社会」
2. 大原始子(神戸市外国語大学・梅花女子大学)
「シンガポールとマレーシアにおける『人の移動と言語変化』について」
3. 崎山理 (国立民族学博物館)
"Extensions of the Sea Nomads -- Mawken, Orang Laut,
and Sama-Bajau"
4. 井上史雄(東京外国語大学)
5. サウクウェン・ファン (京都外国語大学)
「オーストラリアにおける香港人コミュニティーと言語接触」
6. 坂本比奈子 (麗澤大学)
「タイ語(シャム語)とクメール語(カンボジア語)の借用関係」
7. 山田幸宏(姫路獨協大学)
「Itbayat, Batanes, Philippines」
8. 上田玲子 (東京外国語大学)
「ラオスにおける『移動』と『言語接触』」
2)第3分科会(第3回) 「借用語から人の移動について何がわかるか」 1998年9月26日
1. サウクウェン・ファン (京都外国語大学)
「借用語の概念について」2. 加藤昌彦 (国立民族学博物館)
「カレン語における借用語」3. 崎山理 (国立民族学博物館)
「オーストロネシア語族における借用語」4. 陳於華 (大阪大学大学院)
「中国語圏の3地域(大陸、香港、台湾)における
文化借用、密接借用、方言借用について」
5. 上田玲子 (東京外国語大学)
「借用語についてラオス語とタイ語の
基礎語彙の相異点から考えられること」
6. 藪司郎 (大阪外国語大学)
「メイテイ語、ケーザー語などにおけるインド語からの借用」
7. 坂本比奈子 (麗澤大学)
「東南アジア諸言語とモン・クメール系借用語」3)第2分科会(第2回) 1998年11月27日
上杉富之(国立民族学博物館)
「国境地域における人の移動と民族カテゴリーの再編
-- 東マレーシア・サバの事例から --」4)第1分科会(第3回) 1998年12月11日
栗田博之(東京外国語大学)
「人の移動がある社会とない社会:オセアニアの事例」5)全体会(第3回) 1999年3月13日・14日
セッション1:
「人の移動と政治思想・意識の形成」(座長:弘末雅士)報告1:根本 敬(AA研)
「英領ビルマにおける”行政の巡礼圏”とナショナリズム
―ビルマ人高等文官(ICS/BCS)の世界」報告2:栗原浩英(AA研)
「コミンテルンとベトナム―留学革命家と土着革命家―」(仮題)
セッション2:
「フィリピンを中心とした東南アジア島嶼部における人の移動と文化の創造」
(座長:床呂郁哉)報告1:伊藤 眞(東京都立大学)
「ブギスの移動は何を創りだしてきたか」(仮題)
報告2:鈴木伸隆(筑波大学)
「フィリピン・ミンダナオ島の開拓移民にみる自己認識と歴史創出」
セッション3:
「標準語化・共通語化・混交語」(座長:菊澤律子)報告1:加藤昌彦 (国立民族学博物館)
「カレン語におけるモン語の借用語--借用語が物語るカレン族の歴史--」
報告2:藪司郎(大阪外国語大学)
「数詞の借用」
報告3:坂本比奈子(麗澤大学)
「干支の起源」