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所長あいさつ

現代的諸問題の解決という新たなミッションを担って

iizuka

アジア・アフリカ言語文化研究所は一昨年,創立50周年を祝いました。
1960(昭和35)年に日本学術会議がアジア・アフリカ研究特別委員会を発足させ,翌1961年,政府に対して「アジア・アフリカ言語文化研究所」の設立を勧告。これを受けて1964年に当研究所が創設されてから半世紀の月日が流れたわけです。

第二次世界大戦後の世界で自らの立ち位置を模索していた日本は,1955年にインドネシアのバンドンで開かれたアジア・アフリカ会議に参加したのをきっかけに,アジア・アフリカ諸国の支持も得て,翌年には国際連合への加盟を果たしました。当時の日本人には少なからずアジア・アフリカの一員という意識があったようで,学界も政官界も一致してアジア・アフリカを研究し,理解を深める必要を感じており,それが本研究所の設立につながったと考えていいでしょう。本研究所が人文・社会科学系では初めての全国共同利用研究所として設立されたのも,国内外の研究者の総力を結集して,日本が今後良好な関係を築いていくべきアジア・アフリカ地域の研究を進めなくてはならないという時代の雰囲気を反映したものであったに違いありません。もっとも,研究所設立当初の目的は「アジアおよびアフリカの言語文化に関する総合研究,ならびにこれらの地域の言語に関する辞典の編纂,および教育訓練を行なうこと」とされており,研究ばかりでなく,それまでの日本人にとってはなじみの薄かった諸言語を教え,学びの手段を提供することも重要なミッションとなっていました。

以来,本研究所は国内外の専門研究者,とりわけ共同研究員の方々とともに,主として言語学,人類学,歴史学の3分野でアジア・アフリカ研究に取り組んできましたが,創設から半世紀以上経って研究所を取り巻く環境は一変し,私たちの担うべきミッションも変わってきています。1960年代とは比べものにならないほど,アジア・アフリカの諸言語・文化・歴史を学べる場所が増え,日本人一般の理解も深まった一方で,グローバリゼーションの進行にともない,研究対象であるアジア・アフリカ地域の動向が日本のみならず地球社会全体に直接的な影響を及ぼすようになりました。特に冷戦構造が崩壊した20世紀末以降,この地域で頻発している様々な形の紛争は人類の未来に暗い影を落としています。とはいえ,現実の歴史や現場での経験は,言語や文化,宗教・宗派が異なるからと言って,人びとが必ずしも対立するわけではないことを教えており,本研究所はいま,アジア・アフリカのこうした懐の深さに注目して,この地域の多様な言語・文化のあり方をモデルに,未来の多元的世界の発展可能性を追求しようとしています。

アジア・アフリカ言語文化研究所は2009年度末で全国共同利用研究所としての長い歴史に終止符を打ち,2010年度からは新設の「共同利用・共同研究拠点」制度の下で,「アジア・アフリカの言語文化に関する国際的研究拠点」として新たなスタートを切りました。しかしながら,大学の枠にこだわらない姿勢に変わりはなく,国内外の広範な研究者の参加を得て,共同研究を展開しています。2016年度には,過去6年の研究所活動に関する文部科学省の評価に基づき,再度「共同利用・共同研究拠点」に認定される一方,急速に複雑化・深刻化するアジア・アフリカの現代的諸問題に対応するため,「アジア・アフリカの現代的諸問題の解決に向けた新たな連携研究体制の構築」プロジェクトに取り組み始めました。このプロジェクトは,これまで言語学,人類学,地域研究・歴史学の3分野でそれぞれ別個に進めてきた研究を有機的に連関させることで質的に飛躍させ,その基盤の上に国内外の研究機関・現地コミュニティと連携した,問題解決のための研究体制を構築しようという野心的な全所的試みです。

アジア・アフリカ言語文化研究所は今後も,最新の研究動向を踏まえつつ,より一層開かれた研究拠点として,国内外の研究者コミュニティとの連携を強化・拡大し,世界トップレベルの研究成果を発信して行く所存です。所員一同,時代の変化に即した新たなミッションを遂行すべく決意を新たにしておりますので,皆さまのより一層のご指導・ご支援をお願い申し上げます。

2016年4月
アジア・アフリカ言語文化研究所所長
飯塚 正人



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