ウィルド作製パレスチナ・レバノン地図


ZOOMA

年代 1840年
サイズ 100.0×66.5(cm)
縮尺 47万4870分の1
言語 英語
作製者 James Wyld(1812-87)
概要 パレスチナのガザからシリアのタルトゥースまでの歴史的シリア南部の地中海沿岸部/個人蔵

地図の原タイトルは、Map of Syria Ancient and Modern. 1830年代、この地域はエジプトのムハンマド・アリー政権が派遣した軍の占領下にあり、1840年にイギリスを中心としたヨーロッパ諸国の軍事介入を経てオスマン政権の直轄支配が復活した。こうした東方問題の劇的な展開を控えた時代状況を反映し、本地図の左側(地中海部分)には、宗派別の人口が示されている。ベドウィンをのぞくムスリム86万人、東方正教徒34万5000人、ドルーズ派18万6000人、ユダヤ教徒17万5000人、マロン派10万4000人、ギリシア・カトリック9万8000人、アラウィー派2万2000人、シーア派とヤズィード派1万7000人、アルメニア人6000人、ヨーロッパ人4000人とあるが、この数字の根拠は示されておらず、実情を反映したものとは言い難い。地図中の色分けされた区分のうち1のヤーファー県と3のサイダー県がまとめてアッカー州とされ、2がダマスクス州、4がトリポリ県とされているが、この行政区分も不正確。作製者と同名の父(James Wyld, 1790-1836)も王室付き地理官をつとめたように、Wyld家は代々地図作製に従事した。父Wyldはイギリス陸軍主計総監付き地図官として勤務し、1812年に初めて地図作製にリトグラフ技術を導入し、1830年の王立地理協会(Royal Geographical Society)創立時には中心的な会員として活躍した。本地図作製者の息子Wyldは、1830年から父の仕事を手伝い初め、父と同じく王立地理協会会員となり、王室付き地理官となった。Atlas Modern Geography(1842)ほか世界各地の地図を多数作製したが、顕著な作品は、ロンドンの中心部レスタースクエアに1851年から1862年にかけて設置されたGreat Globeで、これは大型ホールの内部に直径約18mの球体(底面は削った形で)を置き、内壁に山地などを立体化した形で貼り付け地球そのものを体感できるようにしたもの。内部につくられた5階建ての足場から観覧が可能なパビリオンだった。

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