Publicationsツォンガ語


研修期間
2024年8月19日(月)~2024年9月6日(金)
午前10時00分 ~ 午後4時30分(土曜日,日曜日は休講)
研修時間
73時間(当初75時間を予定も台風接近の為2時間休講)
研修会場
東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所
(〒183-8534 東京都府中市朝日町3-11-1)
講師
主任講師:
李 勝勲(イ スンフン)
国際基督教大学上級准教授
ネイティブ講師:
Crous M. Hlungwani(クラウス・フルングァニ)
ベンダ大学准教授
受講料
45,000円 (教材費込み)
教材
1.『ツォンガ語文法調査票』(李 勝勲、フルングァニ クラウス 著)
2.『ツォンガ語の語彙調査票』(李 勝勲、フルングァニ クラウス 著)
3.『バントゥ諸語へのガイドブック』(品川 大輔、李 勝勲 著)
4.『言語調査にもとづく研究資源作成の手引き』(李 勝勲 著)
文化講演
日時:2024年8月23日(金)
Morris Babane(ベンダ大学准教授)
Mkhacani T. Chauke(ベンダ大学准教授)
日時:2024年8月30日(金)
Aubrey Khosa(音楽家)
日時:2024年9月6日(金)
品川 大輔(AA研所員)

1.研修の概要
○研修期間:
2024年8月19日(月)~2024年9月6日(金)
午前10時00分~午後4時30分(土曜日,日曜日は休講)
○研修時間:
73時間(当初75時間を予定も台風接近の為2時間休講)
○研修会場:
東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所
本研修は2024年8月19日(月)から2024年9月6日(金)までの15日間、1日あたり5時間、台風接近の為2時間休講 合計73時間実施した。
会場は、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所(304室)を利用した。
2.講師
○主任講師:李 勝勲(イ スンフン)国際基督教大学上級准教授
○ネイティブ講師:Crous M. Hlungwani(クラウス フルングァニ)ベンダ大学准教授
文化講演者:文化講演者: Morris Babane(モーリス ババネ)ベンダ大学准教授、Mkhacani T. Chauke(ムカカニ チャウケ)ベンダ大学准教授、Aubrey Khosa(オーブリー コーサ)音楽家、品川 大輔(AA研所員)
3.教材
『ツォンガ語文法調査票』(李 勝勲、フルングァニ クラウス 著)
『ツォンガ語の語彙調査票』(李 勝勲、フルングァニ クラウス 著)
『バントゥ諸語へのガイドブック』(品川 大輔、李 勝勲 著)
『言語調査にもとづく研究資源作成の手引き』(李 勝勲 著)
これまで英語で書かれていた文法書は存在するものの、フィールドメソッドコースのためのツォンガ語の『文法調査票』と『語彙調査票』のような教材はなかったため,これらの教材はツォンガ語母語話者に対してツォンガ語の専門教育を行うヴェンダ大学(南アフリカ共和国)においても教材として採用されることになっている。『研究資源作成の手引き』の資料は,ツォンガ語やその他のバントゥ諸語のみならず,フィールド言語学を目指す学生一般に向けた参考資料になる。これらの教材によって、ツォンガ語および南部バントゥ諸語を対象とした網羅的な文法事項を調査することが可能になった。『文法調査票』と『語彙調査票』にもとづく記述文法書は,言語研修テキストとして出版される。
4.受講生詳細
研修に参加した4人の受講生はすべて研修を修了した。博士後期1名、修士課程1名、学部4年生と3年生1名ずつの構成で、全員が言語学の記述と分析に関する学術的な関心を有し、同じ立場で未知の言語の調査を行った。この研修で習った方法論はどんな言語を調査する際も適用ができる。首都圏外の大学院の面接の日程と重なったことで2−3日間の参加ができなかった学生もいたが、上述の教材および資料を共有していたこともあり、内容の理解には問題がなかった。
5.文化講演
計3回の講義が実施された。第1回の講師はMorris Babane(モーリス ババネ)ベンダ大学准教授およびMkhacani T. Chauke(ムカカニ チャウケ)ベンダ大学准教授、第2回は音楽学者のAubrey Khosa(オーブリー コーサ)博士、そして3回目は品川 大輔(AA研所員)氏の四名であった。第1週間目の金曜日にババネ先生はツォンガ文化のうち、葬儀に関するさまざまな文化的な知識について、チャウケ先生はツォンガ文学について講演をオンラインで実施した。第2回のオンライン講演は台風の影響で第3週間目の水曜日に開催された。コーサ先生がツォンガ音楽に関して、背景の説明、音楽の視聴、および歌を歌いながら説明をした。品川先生はバントゥ諸語に関しての講演で、とくにバントゥ諸語学史と,最新のバントゥ語学の研究トピックについて講演し,ツォンガ語のバントゥ語内の位置付けについて論じた。どの講演も学生の反応は良好であり、とくに普段会う機会がないアフリカの母語話者研究者とのつながりは貴重な経験だったと評価する。
6.授業
授業は毎日朝10時から午後4時半まで行われて、文法調査票と語彙調査票およびデータ集を活用して進めた。この言語研修はフィールドメソッドのスタイルを活用し、ネイティブ講師のフルングァニ先生がまだ調べられたことがない文章を作りながら、ホワイトボードに関連するさまざまな情報を書き出しながら授業を進行した。それによって声調の記述、また文法の詳細な特徴を調べることが可能になり、ツォンガ語母語話者講師であるフルングァニ先生との協働により,現代言語学の水準に照らして質の高い言語記述が可能になった。受講生の積極的な参加によって、授業はアクティブに実施された。
7.研修の成果と課題
研修の成果はまだ作成中であるが、四つの観点から考えられる。一つ目はツォンガ語が南アフリカ以外の場所でここまで集中的に調査されたのが初めてだったこと。二つ目は現在まで知られていなかった文法項目に関するツォンガ語の詳細な文法記述が可能になったこと。三つ目は受講生たちが未知の言語を調べる方法を学んだこと。四つ目は南アフリカの先生が日本の熱心に勉強する若手の姿を見たこと。
8.おわりに
言語研修を終えた後、海外の研究者と話したところ、他の国ではAA研が提供するこのような言語研修のプログラムは存在してないことがわかりました。学生と一般人の方が少数言語を学べる機会があるのは後続の世代にはとても大切であるということを感じました。