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「自由な選挙」のもとでの選挙不正:イラン第6期国民議会選挙(1926)のゴム州における選挙不正疑惑」

ID: jrp024301

本研究においては、レザー・シャー(1925–1941)治世初期のイランにおける議会選挙の実態に関して、ゴム州における選挙不正疑惑(1926)を事例に取り上げ、当時の内務省文書をはじめとする現地史料と米国、イギリスの外交史料とを組み合わせた多角的な分析を目指した。
まず、貴研究所が契約する3つのデジタルアーカイヴを閲覧し、上で記した外交史料を横断的に分析した。なかでも、ゴム州における選挙不正を調査した米国人財政長官ミルスポーについて、Archives Unboundシリーズの “Iran (Persia): Records of the U.S. Department of State, 1883–1959”を用いて同国国務省文書の網羅的な調査を行ったことは、本滞在の大きな成果となった。より具体的には、891.00 (Iran, Political Affairs)、891.51/51A (Iran, Financial Conditions)番号をはじめとする、同コレクションの米国国立公文書記録管理局Central File (RG 59)所蔵の国務省文書数千点を閲覧し、イラン内政についての公使館報告、ミルスポーが執筆したイラン財政に関する四半期財政報告、その他の財政顧問団の活動に関する書簡などを収集した。今後は、上で記した外交史料の分析と併せて、事前に収集したペルシア語現地史料の講読をさらに進め、研究成果をまとめる。それによって、当時の議会選挙の実態、及びそこでの選挙不正を告発ないし正当化する法的な論理を解明する予定である。以上で記した研究の現状及び今後の可能性に関しては、2024年7月22日に貴研究所主催で開催された研究会「イランにおける議会主義と独裁体制」のなかで報告を行った(発表題目「議会主義と独裁体制:1920年代イランに関する議会制史研究の可能性と課題」)。同報告においては、コメンテーターの松永泰行先生(東京外国語大学教授)をはじめ参加者から多くのコメント、助言を得て、自らの研究枠組、視点に関して考察を深める契機となった。
さらに、上記の研究と並行して、貴研究所で開催された研究会、セミナーに積極的に参加し、イランないし西アジア史を専門とする研究者との議論を重ねた。これらの貴重な機会を通じて、博士論文までの研究成果をより洗練させ、学会での発表及び学術論文の執筆に務めた。この成果として、日本政治法律学会第13回研究大会(於城西大学、2024年5月)にて「中東諸国の憲法を研究することの可能性:イラン憲法と議会制に着目して」と題した研究発表を行ったとともに、当該分野の代表的な邦語学術雑誌である『アジア経済』にて論文「立憲革命を「再演」する:イランにおける第1次憲法改正(1925)とパフラヴィー朝の成立」の掲載が決定した。今後も、貴研究所の短期滞在中に得た知見を活かすと同時に、前述したデジタルアーカイヴ調査の一環として収集した米英の外交文書の分析を進めることで、1920年代、30年代のイラン議会制に関する考察を深める。そしてこれらの研究成果を単著として出版し、広く社会に公開することを最終的な目標とする。

実施期間
2024年04月01日~2024年06月30日
メンバー

代表者 : 徳永 佳晃

副代表者 : 近藤 信彰

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