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今月の一枚 2020年3月:ムスリムも感嘆した寺院

2020.03.02

こちらにはひと月に一度,AA研スタッフや共同研究員がフィールド調査の際に撮った写真を載せています。
(写真の著作権は撮影者にあります。無断・無許可でのご使用は固くお断りします。)

ラフィーユッディーン・シーラーズィーは1540-41年にイランに生まれ,若き日をシーラーズで過ごしたとされる人物である。のちに商売のために海路イランからインドへと渡り,亜大陸西部,北部の諸都市をめぐったのちに,デカン地方のビジャーブルを主邑としていたアーディル・シャーヒー朝の宮廷に身を寄せた。齢70を数える1611年頃に自らの見聞を含めたペルシア語史書『タズキラト・アル=ムルーク』を完成させたが,シーラーズィーはその書の中で,自ら目撃したエローラ石窟寺院(おそらく第16窟カイラーサナータ寺院)を,著者が若き日に見ていたであろうペルセポリスを引き合いに出しつつ,古の偉大なる事業として感嘆を交えて綴っている。同書は前近代にエローラ寺院についての記録を残す貴重な史料である。

2020年1月8日
インドマハーラーシュトラ州エローラ遺跡
小倉 智史 撮影