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今月の一枚 2023年6月:バンボール遺跡

2023.06.01

こちらにはひと月に一度,AA研スタッフや共同研究員がフィールド調査の際に撮った写真を載せています。
(写真の著作権は撮影者にあります。無断・無許可でのご使用は固くお断りします。)

ムハンマド・イブン・カースィム率いるアラブ・ムスリム軍は,711年にインダス川河口付近に上陸した。当時この地域を支配していたのは,ラージャ・ダーハルというヒンドゥーの王であり,アラブ・ムスリム軍は激戦の末にダーハルを打ち破ると,パンジャーブ地方のムルターンに至るまでの地域を,その支配下におさめた。さて,アラブ・ムスリム軍が上陸して最初に到達したまちは,アラビア語地理書ではダイブル(DYBL)と記されている。一説によると,ダイブルはデーバルと呼ばれ,そのエティモロジーはサンスクリット語のDevālaya(神の家)に復元できるという。ダイブルの候補として有力視されているのが,カラチから東に60㎞ほどに位置するバンボール遺跡である。この遺跡は遅くともインド・スキタイ時代の紀元前一世紀から使われていたようであり,製作年代が数世紀にわたる陶器が発掘されている。巨大な城砦にはシヴァ教の寺院跡とされる場所や,アラブ・ムスリム軍の征服後に設置された,南アジア最初のモスクとされる基壇が残っている。

2023年1月30日
バンボール遺跡(パキスタン)
小倉 智史 撮影