今月の一枚 2026年5月:氷の器が奏でる延辺朝鮮族自治州の延吉冷麺
2026.05.01
こちらにはひと月に一度,AA研スタッフや共同研究員がフィールド調査の際に撮った写真を載せています。
(写真の著作権は撮影者にあります。無断・無許可でのご使用は固くお断りします。)

中国吉林省・延辺朝鮮族自治州の州都、延吉を訪れると、街の至る所で「冷麺(랭면)」の看板を目にする。朝鮮半島の伝統を受け継ぎつつ、この地で独自の発展を遂げた「延吉冷麺」は、牛骨や丸鶏から取った冷たいスープに、蕎麦粉や澱粉を練り上げた強い弾力のある麺が特徴だ。
写真の冷麺は、驚くことに器そのものが純粋な氷でできている。甘酸っぱい冷たいスープは氷によって極限まで冷やされ、厳しい暑さを一瞬で忘れさせてくれる。具材には牛肉や茹で卵と共に、延吉流に欠かせないリンゴ(場合によってスイカ)などの果物が彩りを添える。
韓国の一般的な冷麺と異なる特徴は、その「力強さ」にある。麺は押し出し機から直接熱湯へ落として作られ、蕎麦の殻を含んだ黒っぽい色と、噛み切るのが難しいほどの強靭な腰を持つ。また、さっぱりとした味を好む韓国のスープに比べ、延吉のものは甘みと酸味がより強調されているのが特徴だ。この一杯は中国の朝鮮族のアイデンティティを象徴する、まさに「ソウルフード」と呼ぶにふさわしい。
2023年8月17日
中国吉林省延辺朝鮮族自治州延吉市
許 秦