新任スタッフ紹介 Vol.96:吉田 優貴
2026.04.22
つながりにおいて生きること
吉田 優貴
(2026年4月JSPS特別研究員着任)
「この世界は、本当はたくさんの世界がある。つながっているように見えても、つながっていない世界がある」
映画『PERFECT DAYS』(2023年公開)の主人公、平山による言葉である。
私は、人とつながることの恐ろしさを幼少期から何度も感じてきた。そのせいか、表向きの社交性を発揮した後、裏ではぐったり寝込んでしまうことがよくある。学生時代に文化人類学と出会い、博士後期課程在籍中にケニアで現地調査を行うことになったが、私は怖かった。ケニアに一度足を踏み入れたら、新しく出会った人たちと一生涯つきあうことになるだろう。それに耐えられるだろうか。
「大丈夫、お嬢様育ちの○○さんも、ああして全うしたではないか」と、先輩の表の姿だけを見て、自分を無理に安心させた。雑に育った私であれば、ベーカー街イレギュラーズよろしく、どこにでも入っていけるだろうと。
そう決心してから、20年以上経った。実家から遠く離れたいあまり「アフリカ大陸」を選び、当時の指導教授に「ケニアでいいんじゃないの(英語力すらあやしいのに、フランス語は無理でしょう?)」と言われたのがきっかけである。「決心」といっても、自発的に決めたのではない。後ろ向きの要因が重なっただけだ。
初めての学会発表で、「なぜわざわざケニアに行ったのですか?」と質問された。ケニアの聾学校を拠点にした調査から一時帰国したタイミングだった。「聾学校なら、日本にもあるでしょう?」と。私は何も答えられなかった。他分野の先生にそのことを言ったところ、こう返された。
「なぜケニアなのか?じゃなくて、ケニアで何を見つけたか、じゃないの?」。
大学院時代から長きにわたり、ずっと見捨てず、私の研究に興味を持って関わってくださった方の言葉だ。
ケニアで何を見つけたか。聾児たちが集まって楽しげに躍り出すのを目撃した。文字通り躍動していた。聾学校の芝生の上で、躍りながら動きがシンクロしていった。それが不思議で、いまの研究テーマにつながった。もともと口下手で語学の苦手な私が、数々の失敗を伴いながらもどうやって人とつながりを持てたのか、それを追究する旅が始まった。

ある村でも、子供らが躍り出した(画像上)。この中に聾学校の就学生(当時)がいる。授業などでこのビデオを見せ、誰が聾者かと問うてきたが、答えはいつも割れた。なぜ「聞こえないのに」リズミカルに動けるのか。いや、リズミカルに動いているとき、何が起きているのか、それが研究の中心課題である。
それから10年以上経ち、成長した当時の子供たちに再び会うことができた(画像下)。これまで、つながりと断絶を繰り返してきたが、ケニアの人たちとのつながりは続いている。新しい発見もある。
もう、恐れない。誰かとのつながりだけでなく、自分が生を受けここにこうして存在することになるまでのつながりを忘れず、活動を続けていきたい。