新任スタッフ紹介 Vol.93:早川 英明
2026.04.14
私の問題意識
早川 英明
(2026年4月助教着任)

私は現代中東、特にレバノンの政治思想を研究しています。これまでは特に、レバノンの共産主義思想に関心をもってきました。なぜこのテーマで研究するようになったのか、述べたいと思います。
小学生くらいの頃から、「海外」に関心がありました。アイルランド人の母をもち、日本で育ったことと関係があるかもしれません。大学でも「海外」に関わる勉強をしたいと思っていましたが、アラビア語の授業を1年生から受講していたこともあり、中東地域研究を学べる学科に進みました。その後大学院に進学し、今に至ります。
博士論文では、レバノンの著名なマルクス主義者マフディー・アーメル(1936–1987)が、レバノンの宗派問題をどのように論じたかを取り上げました。アーメルは「宗派は実体ではない。宗派は本質ではない。それは物ではない。それは、階級闘争の運動の特定の歴史的形態によって規定される、政治的関係である」として、レバノンの宗派を反本質主義的な、いわゆる構築主義的な観点から定義しました。彼の構築主義はあまりに徹底していたので、共産党の同志たちからも完全には理解されていませんでした。この「急進的な反本質主義」とでもいうべきものが、私の心に刺さり、彼の思想に興味を持ちました。
ナショナリティやエスニシティに対する「構築主義」的見方をはじめて知ったのは学部時代で、それが日本社会で居心地の悪い経験もしてきた私には魅力的に感じられました。修士課程で初めて触れたアーメルにおいては、本質主義への批判が単に学問的な理論にとどまらず、政治的な革命思想の一部であることが、私の関心を惹きました。
こうした自分の問題関心が、研究成果にうまく反映されているかは自信がありません。レバノンの宗派問題と、日本での私の個人的な経験はあまりに距離があります。もちろん、自分の思いをレバノンの人々に投影したり、自分の語りたいことの道具としてレバノンの現実を扱ってはいけないことも言うまでもありません。
それでも、以上のような成り行きで中東の政治思想を研究するようになった自分なりに、世界中の共生を目指す努力に少しだけでも貢献したいと考えています。東京外国語大学の一員として迎えていただいたことに感謝しつつ、探求していきたいと考えています。