鷲尾祐子「走馬楼呉簡吏民簿基本情報修正稿」

走馬楼呉簡吏民簿基本情報修正稿

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鷲尾祐子(立命館大学)

 筆者は長沙走馬楼呉簡「吏民簿」の構成簡を簿ごとに集め、各簿の全体構成を復原し特徴を把握する作業にとりくんできた。その成果が鷲尾祐子2017であり、各簿の構成簡・表題や集計・書式・特徴・全体構成などの基本情報を記したものである(【吏民簿1】~【吏民簿6】)。しかし2017年時点では竹簡写真図版本が刊行途上にあり、公開されていない簡も多く、如上の作業も不完全であった。その後2019年「竹簡玖」の出版により竹簡についてはすべての情報が出そろうに至るまでに、新たに発表された竹簡中に各簿の構成簡が見出されたため、各吏民簿の基本情報を改める必要が生じた。また、2017年以後の研究や、筆者自身の意見の変化より、修正を要するところが出来した。
 さらに、鷲尾祐子2022で史料として用いた各簿の基本情報は、2017年以降の変化を反映させた集成・復原結果によっているため、新しい基本情報を公開する必要が生じた。拙論では鷲尾祐子2017の各簿に加えて「竹簡柒」にみえる嘉禾五年作成の都郷常遷里簿を史料として用いたため、この簿の基本情報も公にすることを要する。
 本稿では、鷲尾祐子2017の吏民簿基本情報に修正を加え、各吏民簿の新たな基本情報を記し、さらに鷲尾2022で新たに史料として用いた簿の基本情報を記す。
 各吏民簿の呼称として2017では【吏民簿1】のように便宜的に略称していたが、何の簿なのかわかりにくいため、次のように改める。、
【吏民簿1】→【四年小武陵郷簿】 
【吏民簿2】→【六年廣成郷簿】
【吏民簿4】→【六年小武陵郷簿】
【吏民簿5】→【六年中郷簿】
【吏民簿6】→【四年廣成郷簿】
四年・六年はすべて嘉禾のそれである。【四年小武陵郷簿】は嘉禾四年に小武陵郷を対象として作成された簿をこのように仮称したものであり、以下同様に仮称を付している。
【吏民簿3】については、本稿では修正情報を記載していない。井戸外に廃棄された状態で採集された簡であり、掲剝位置示意図(示意図と略称)も無く簡相互の位置の把握が困難なため、現在判断を保留しており、爾後の検討を期したい。
 
凡例
(1)掲載順:鷲尾祐子2017の【吏民簿1】・【吏民簿2】・【吏民簿4】・【吏民簿5】【吏民簿6】の順に記載し、鷲尾祐子2024で史料として用いた「竹簡柒」嘉禾五年常遷里簿を最後に記載した。。
(2)簡文の表記:不明字は□で代替した。一字の偏・旁のみ明らかな場合、{木□}のように不明部分を□で表示した。推測で釈読している部分は、[ ]で表示した。簡の残断は〼、墨点は●で表示したが、表示の必要が無い場合は記載しない。
 戸の末尾簡には下記のような記述が存在することがある。
   其/二人男/二人女
「其」の下を二行に分けて、右の行に「二人男」左の行に「二人女」を書く書式を、このように表記した。
 簡番号は(図版本の簡番号/示意図の番号・示意図内における各簡の番号)のように記載した。(柒928/図8・125)のばあい、「竹簡柒」928であり、示意図8内の125番であることを示す。示意図番号と示意図内番号は、記載の必要が無いばあい記載しない。「竹簡貳」は示意図が一つしかないため、「図」と表示した。
なお、作字しなければ表示できない文字については、便宜的に{ }内に各部分を分解して表示している。PDF版では、作字した文字を表示した。
(3)簡文の表記 変更点:編綴する紐をつけるための空白(空格)は|で表示した。
 鷲尾祐子2017では編綴痕を表示したが、本稿では空格を表示し、編綴痕は表示していない。空格で区切られた各欄にどのような内容が配置されるかは、書式の把握のために重要である。本稿では書式を表示する一環として空格を表示した。簡の内容のみを単に示したい場合は、表示しない。また、判別できない場合も表示していない。
 編綴痕の把握には、別の意義がある。簡相互を編綴する紐は空格の上に掛けられるが、簡冊が井戸内に長時間置かれ圧迫されたり位置がずれたりしている間に、編綴する紐も本来の位置からずれていることが多い。ゆえに編綴痕と空格の位置は必ずしも一致しない。編綴痕を把握することの重要性は、編綴されていた簡は編綴痕のずれ方も類似しているため、簡の本来の位置を知るための手がかりの一つになることにあり、戸の復原に際して同戸の簡であるか否かを判断する手段の一つになることである。しかし本稿では戸の復原については触れないため、編綴痕は表示しない。
(4)修正:釈文に修正を加えた場合、その修正箇所につき簡文の記載に付記した。
(5)長さ・幅は、図版本の写真上で計測したものである。
 全長は、左右端の長いほうを計測し、幅は上編綴痕の位置で計測した。上下の端はひび割れ広がっていることが多いため、本来のサイズを知るために、この位置で計測した。
【四年小武陵郷簿】(【吏民簿1】)
「竹簡壹」嘉禾四年小武陵郷吏民簿

吉陽里戸人公乘孫潘年卅五|筭一   |
(壹10381/2・130)
    |潘妻大女蔦年十九筭一 | 
 (壹10382/2・131)
   |  潘子女□年五歳  |   
  (壹10379/2・128)
   凡口三事二 |筭二事 |訾 五 十 
 (壹10380/2・129)
ここに挙げたのは「竹簡壹」 で完全な戸の復原とされている例である。この簿の各戸の簡は、(特異である集計以外は)吏民簿にみえる記載項目を網羅している。よって、この簿の戸の簡により一般的な記載項目を説明する。まず冒頭に置かれる戸人簡は、「里名・戸人・爵位(公乘)・姓名・年齢・筭一(該当者のみ)」の順に記載される。筭一は、算賦負担者に付される(鷲尾祐子2021)。続いて並ぶ各成員の簡は、一般的に「名前+続柄」ではじまり、他の成員とその者との親族関係が明示される。次いで成人女性の場合「大女」(十代女性は妻以外の場合記載されない。徐暢2010)と記載され、名前・年齢・筭一が記載される。(壹10380)は戸全体を締めくくる簡(戸計簡)である。「凡口×」は総口数を表す。その次の「事×筭× 筭×事」の、口は口数 その後ろの事は口錢を負担する者の人数、筭は筭銭負担対象者、事は筭銭を実際に負担する者の数である(凌文超2011・張栄強2014)。。訾は資産の水準を表す(鷲尾祐子2021)

平陽里戸人公乘烝平年卅二筭一|腫兩足   |
(壹10480/2・225)
  |平妻大女取年廿八筭一  |    
 (壹10481/2・226)
  |平子男各年七歳     |     
(壹10488/2・234)
  |平母大女妾年七十    |  
   (壹10479/2・224)
疾病・障碍を有する場合は、筭の次にそれを記載する。戸人簡壹10480末尾に付されている「腫兩足」は、足が腫れている状態を表す。次に挙げる壹10269末尾の刑左手は左手に刀傷があることを意味する(福原啓郎2004)。

東陽里戸人公乘烝敦年卌一|筭一刑左手 |
(壹10269/1・26)
高遷里戸人公乘苗覇年十七|筭一給郡吏 |
   (壹10048)
東陽里戸人公乘□贊年廿一筭一|給縣卒 |
  (壹10308)

公職を有する場合は、各人の末尾に記載される。壹10048・壹10308には、「給郡吏」「給縣吏」と見え、彼らが郡吏・縣吏の職務に従事していることが記載されている。

①構成簡:採集簡11・13・14盆(「竹簡壹」 )685点
「竹簡壹」示意図1・2および前後に連続する番号(「竹簡壹」10040-10545)はおおむね構成簡である。示意図は簡冊の状態を維持して出土している(10072・10150・10201・10478・10492・10520・10526・10532・10533・10536・10538・10539・10540の14点を除く)。
ほか、14盆の下記の簡を含む。
9582,9583,9584,9601,9668,9670,9817,9820
11盆の下記の簡も該当する。
4855,4856,4860,4863,4864,4865,4869,4872,4873,4874,・4875,4876,4877,4879,4880,4882,4883,4884,4885,4886,4887,4888,4890,4892,4894,4895,4896,4897,4898,4899,4901,4902,4904,4907,4908,4910,4911,4912,4919,4920,4921,4946,4947,4949,4950,4975,4976,4977,4978,4979,4980,4981,4982,4983,4984,4985,4986,4987,4990,4991,4992,4993,4994,4996,4997,4998,4999,5118,4445,4447,4453,4466,4477,4496,4505,4506,4507,4555,4815,4830,4841,4842,4843,4844,4845,4847,4848,4988,5021 
13盆の下記の簡も含む
7308,7324,7347,7350,7352,7353,7354,7356,7358,7359,7361,7363,7364,7368,7369,7370,7371,7372,7373,7374,7376,7377,7378,7380,7381,7382,7383,7385,7388,7392,7393,7397,7398,7401,7403,7404,7405,7406,7407,7408,7410,7414,7419,7420,7421,7422,7423,7424,7425,7426,7427,7428,7429,7430,7432,7433,7475,7487,7502,7534,7587,7776,7777,7778,7779,7780,7784,7788,7792,7797,7802,7803,7804,7807,7808,7812,7813,7814,7815,7816,7817,7818,7819,7820,7821,7822,7823,7824,7830,7831,7835,・7836,7837,7845,7847
②作成時期:嘉禾四年(235年)(「小武陵郷□嘉禾四年吏民人名妻子年紀簿」示意図1,壹10153)鷲尾祐子2021参照
③記載対象 小武陵郷(「小武陵郷□嘉禾四年吏民人名妻子年紀簿」示意図1,壹10153)。・ 簿に見える里:平陽里・東陽里・高遷里・吉陽里・宜都里・宜陽里
 「竹簡壹」 示意図2は、簡冊の外側から平陽里・東陽里・高遷里・吉陽里の順で並ぶ。・ 示意図外に宜都里・宜陽里・□[興]里(10539)が見える。壹10539は里名が不明のため除外する。また、宜陽里と釈読されている壹10139は、図版および柒3573(【六年小武陵郷簿】)に見える同一人物の記載によれば、吉陽が妥当である。
この簿に含まれる簡の里については、以前は5里のみと考えられていた。嘉禾四年の戸口数を記載した簡(壹4985)から小武陵郷は194戸であることが明らかであり、当該簿中に出現している里集計簡(後述)にみえる三里の戸数はみな36戸と38戸であることから、凌文超2011は、嘉禾四年の小武陵郷は5里(示意図1・2に見える四里ともう1里)からなるとする。とすれば、示意図外の宜都里・宜陽里のうち一つは、この簿の簡ではないことになる。
ただし、同じく小武陵郷の簿である【六年小武陵郷簿】には、さらに宜陽・宜都・新成の三里を含み、合計7里である。同じ小武陵郷であるのに、構成する里が簿によって違うことになる。
一方、凌の5里説はすべての里の戸数が36~38戸であることが前提であるが、そうではない可能性もある。【四年小武陵郷簿】の宜都里の集計によれば、口数は107人である(「●右宜都里領吏民□□□口一百七人」壹4848) 。【四年小武陵郷簿】の一戸あたり平均口数はだいたい5であり、107を平均口数の5で割ると21であり、20戸程度になる。もし36戸であると想定すると、一戸あたり3人程度という極端に小さな数字になるため、その可能性は低い。とすれば、集計の残っていない4里は36戸ではなく、20戸くらいになるように設定されていたのではないか。残りの四里の戸数を20戸程度とすると、以下に示すように計算は合致する。吉陽・高遷・平陽の里集計に見える戸数を合計すると110戸であり、そのほかの里の戸数の総計が84戸であり、84を宜都の推定戸数20で割ると4(4余り)となる。故に、吉陽高遷平陽が36~38戸程度、そのほかの4里が均等に21戸であると考えることも可能であり、七里であると想定しても問題は無い。
ゆえに、【四年小武陵郷簿】についても、【六年小武陵郷簿】に同じ里を記載していたと考えられ、宜陽里と宜都里を除外しなくてもよい。ただし、新成里については一つも見えないため、これを除く6里である可能性もある。
④データ化範囲内把握可能人数:521人 性別と年齢・続柄の三者把握可能な者のみ計数すると、データ化範囲内でこの簿における小武陵郷総人口951人の55%(小数点以下四捨五入)を把握することが可能である。
⑤表題・集計と全体の構成 簡冊全体の冒頭に、表題が置かれる(「小武陵郷□嘉禾四年吏民人名妻子年紀簿」壹10153/1・3)。続いて里ごとに各戸の簡が置かれる。各里の簡の末尾には、里全体を集計する簡が置かれる。戸口数の集計のみ見える(●右吉陽里領吏民卅六戸口食一百七十三人(壹10397/2・146) ●右高遷里領吏民卅八戸口食一百八十人(壹10229) ●右平陽里領吏民卅六戸口食□百□□人(壹10248/2・4) ●右宜都里領吏民□□□口一百七人(壹4848))。示意図の範囲内では、冒頭より吉陽里・高遷里・東陽里・平陽里の順に並ぶ。
 簡冊全体の末尾に郷全体の集計が置かれる。郷の集計として、下記の二つが見える。

  〼右小武陵郷領四年吏民一百九十四[戸]、口九百五十一人、[收更口筭錢合]□□一千三百卅四錢
(壹4985 凌文超2011の修正に従う)
  其二百五十二人筭人收錢一百廿合三萬二百卌
(壹4980)

 郷集計簡は示意図1・2から番号が離れるが、近い番号の簡に、本簿と同じ書式の記録が並ぶ。簡の大きさも示意図内の簡に近似する(⑥参照)。

凡口九事七 |筭六事四 |訾 一〼
(壹4975)
平陽里戸人公乘謝□年卌二筭一|聾兩耳  |
(壹4976)
採集簡11盆のこの簡番号附近には、本来は【四年小武陵郷簿】の一部であったものが脱落して残存している。壹4980・4985もその一部であり、【四年小武陵郷簿】の集計であると考えられる。
壹4985は、戸(194戸)口数(951人)を記し、郷全体から徴収される人頭税額(更・口・筭錢)の総計を記す。壹4980は、筭銭を課される人数(252人)を記し、一人あたり120銭を徴収するため総額が30240銭であると記す。
凌文超2011は、さらに大口・小口・筭人の集計簡も存在したとし、この簿を、賦の徴収のためのものであるとする。
⑥特徴 書式はすべての簡で統一されている。また、簡の長さ・はばの数値もおおむね近似する(図版上計測で、壹4887長さ23.7㎝、はば0.8㎝。壹7347長さ23.5㎝、はば0.9㎝。壹10469長さ23.7㎝、はば0.8㎝)。
里集計に現れた一里あたりの戸数は、高遷里が38と吉陽・平陽が36である(壹10229では38戸、壹10248では36戸、壹10397では36戸)。宜都里をはじめとするほかの4里は、21戸程度であると推測される(前掲)。
訾の平均値が他郷よりも高い(【吏民簿3】【吏民簿4】【吏民簿5】参照)。戸末尾の集計簡に付されている訾の量を平均すると、一戸あたり185となる。
奴婢(張栄強2010に奴婢記載が無いことを指摘)・客・死(物故)の記載無し。一歳児無し。
⑦備考 示意図2には51点の無字簡を含み、これらは主に連続し層を成して出現している。
チェック済みである旨を示す「中」字が朱筆で記載されている簡が18点存在する(白黒図版写真からは識別できない。釈文の注による)。戸の集計に多く見える。また、朱筆を入れた痕跡があるものも存在する(白黒図版写真では見えない。壹10211、壹10422、壹10488、壹10490、壹10497など)。
⑧研究 凌文超2011はこの簿を復原し、簿の特徴について詳細に解説する。ほか張栄強2006・張栄強2010・鷲尾祐子2021参照。

【六年廣成郷簿】(【吏民簿2】)
「竹簡貳」嘉禾六年廣成郷吏民簿

a民男子楊六十|     |妻大女姑年卌九筭一
(貳1795/図204)
     |子仕伍白年四歳 |弟公乘[期]年五十腹心病
(貳1799/図208)
     |□妻事年卅八筭一 |母大女妾年八十四
(貳1796/図205)
   右家口食|九人  |   
 (貳1800)
b郡卒潘嚢年廿三  |     
  (貳1708)
     |嚢妻大女初年廿六  |嚢父公乘尋年六十一苦虐(?)病
 (貳1696)
      |尋妻大女司年卌四踵(腫)右足 |嚢男弟公乘祀年十一
(貳1694)
      ●|祀女弟□年二歳  |尋好(姪?)子女陵年廿六
(貳1655)
  ●右嚢家口食八|人  |
(貳1697)
この簿の書式は、示意図簡冊内の簡では上記a・bの二種類に分かれる。bは戸人簡に戸人以外の成員を記載せず、また筭を記載しないが、aは戸人簡にさらにもう一人成員を記載し、該当者には筭を記載する。aは比較的短く、bは長い(鷲尾祐子2010)。aは廣成里の簡であり、bは弦里の簡であると考えられる(侯旭東2009・侯旭東2013)。廣成郷簿全体が、これに下記cの書式を加えた三つの書式からなる。abが圧倒的に多い。cの書式は、戸人簡に戸人以外の成員を記載する点では(1)に同じだが、筭を記載しない点では(2)に同じである。關尾史郎2015は、疾病・障碍と職役(全て「養官牛」)を、中段の中程近くに書き入れている点で、独特の様式であることを指摘する。

c民男子謝張年卅八 | 養官牛 |妻大女泓年卅八
  (貳2280)
        |張子仕伍訓年六歳 |訓女弟□年四歳
(貳2148)
        |張男弟□年□四  |……年卅一
(貳2165)
① 構成簡 採集簡第16盆、全925点。内訳を下に説明する。
(1)「竹簡貳」1536~2496のうち、下記の簡番号の91点を除外した全877点を構成簡とする。
1543.1600.1603.1605.1606.1812.1882.1999.2023.2024.2025.2062.2094.2096.2099.2133.2134.2135.2137.2138.2140.2141.2143.2144.2146.2150.2157.2159.2160.2179.2180.2193.2212.2215.2218.2226.2227.2228.2229.2230.2231.2232.2233.2235.2236.2237.2240.2241.2243.2244.2245.2247.2252.2253.2257.2258.2260.2261.2268.2289.2294.2330.2340.2345.2350.2351.2361.2394.2395.2421.2424.2427.2430.2431.2432.2449.2450.2451.2452.2453.2454.2456.2457.2458.2461.2466,2474.2479.2485.2488.2490。
「竹簡貳」の示意図に含まれる諸簡は簡冊の形をとどめて出土しており、これと同書式の簡番号が連続する簡も含めて同一簡冊を構成していたと確定し得る。示意図簡に前後する簡番号の諸簡にも、示意図簡と同じabの書式の諸簡とこれに類似するcの書式が連続して存在する。こうした同じ書式および類似の書式の諸簡は、示意図簡と同一簿を構成する簡とみなした。断片しか残らない簡・書式の相違する簡91点を除外した。
(2)2497以降も断続的に同書式の簡が見え、これらも同じ簿の簡であると考えられる。折れていて一部分しか残っていない簡が多く、他の簿も混在しているため、判別が難しい。構成簡である可能性があっても判断が難しいものは除外し、下記の簡番号の48点のみを構成簡として扱う。
2498,2499,2501,2502,2506,2507,2508,2518,2519,2525,2526,2527,2528,2529,2530,2531,2532,2533,2534,2535,2536,2537,2538,2539,2541,2543,2544,2545,2547,2548,2552,2556,2557,2558,2561,2563,2564,2566,2587,2612,2615,2618,2633,2634,2635,2649,2688,2689
② 作成時期:嘉禾六年(237年)(「廣成郷謹列嘉禾六年吏民人名年紀口食爲簿」貳1798)。
③ 記載対象:廣成郷。
 里名は里の集計にあらわれる二つ(廣成里・弦里)のみ把握可能である。4里の戸口集計が残存している。
    〼五十戸口食[四]□□  
        (貳1663)
  右廣成里領[吏]民五十|戸口食二百九[十]□[人] |
(貳1671/図15)
  ●右弦里領吏民五十|戸口食三百卌人 |
(貳1947)
   ●[右]□里領吏民五十|戸口食…… |
(貳2320)
侯旭東2013は、貳2529の戸数(□□五十)・口数(2311人)、各里の戸数が50戸であること、一戸あたり平均口数が6程度であることなどから、郷の戸数は350戸であり、7里からなると推測する。名称が不明な5里のうち、1つは平樂里であることが明かである(關尾史郎2015)。残りの4里の名は不明である。
④ 把握可能人数:919人。総人口2311人(貳2529)中919人の年齢と性別・続柄の三者が把握可能。全郷の約39.8%。
⑤表題・集計と全体の構成 簡冊の冒頭に、全体の表題が置かれる。

廣成郷謹列嘉禾六年吏民人名年紀口食爲簿
(貳1798)
各里の簿がこれに続く。廣成里の簿が最初である。廣成里の簿の冒頭に、表題が置かれる

[廣成]里謹列[領]任吏民人名年紀口食爲簿
(貳1797)
各戸の簡が続き、集計で里の簿が締めくくられる。
里の簿の集計は、死者を除し総人口を計上する集計と、徴発対象となる戸の数を確定する集計を有する書式である。比較的多く残存している廣成里の例を挙げる。

右廣成里領[吏]民五十|戸口食二百九[十]□[人] | 
(貳1671/図15)【戸口数】
|其□人□□[被]病物故   |      
  (貳1672/図16)【死者数】
|其二戸給郡園父 |      
         (貳1701/図62)【民】
|其一戸給朝丞        |     
 (貳1702/図63)【民】
●|其五戸尪羸老頓貧窮|女戸    
         (貳1705/図67)【不任戸】
●定應役|民廿戸   |
 (貳1704/図66)【役戸確定】
||●魁  蔡  喬  〔主〕  
(貳1700/図61)【責任者】
各項目の意味については、鷲尾祐子2020b参照。
各里の簿が終わると、簡冊全体の最後に郷の集計か置かれる。郷の集計のうち以下の3点が残存している。

□凡廣成郷[領吏民]□□[五]十戸口[食]二千三百一十人
(貳2529)
  |其一千一百六十七人男 |〼   
(貳2468)
  [定]見二千二百七十五 |人  | 
(貳2535)
貳2529は郷全体の戸口数の総計、貳2468は貳2529に総計された口数のうち男性口数の内訳を記す。貳2535は、貳2529の総口数から死者を除した数の集計である。そのほかの各里の集計の項目についても郷全体の総計が記されるはずである(鷲尾祐子2021)が、残存していない。
この簿は廣成郷全体の簿であるが、各里の簿の集積から成っており、簿の最も前に全体の表題が置かれ、次いで廣成里の簿を初めとする各里の簿がおかれ、最後に郷全体の集計が置かれる構成となっている。
⑥特徴 奴婢・客を記載し、死(物故)を注記している箇所がある。一歳児(新生児)が見える。
 里集計に現れた一里の戸数は、すべて50戸である(貳1663・1671・1947・2320)。
 戸単位の平均口数は、弦里の集計によれば6.8人(1947)で、全簿の各戸末尾簡による計算では、各戸平均6.32人である。一般的には一戸あたり平均口数は5口程度であるため、この簿の一戸あたり平均口数は、他の郷・里簿より多い。1戸あたり最大口数は23である(貳2122)。
⑦備考 示意図の構成簡に、69片もの無字簡が存在する。
釈文によれば、記載の下に墨でチェックを入れた痕跡を有する簡が60点存在する。
⑧研究 侯旭東2009・侯旭東2013・關尾史郎2015・鷲尾祐子2010・鷲尾祐子2012・鷲尾祐子2021
【六年小武陵郷簿】(【吏民簿4】)
「竹簡参」「竹簡柒」「竹簡伍」「竹簡玖」嘉禾六年小武陵郷吏民簿

a平陽里戸人公乘黃風年六|十八   |  
     (参4271/図2・4)
    |妻大女□[年]七[十]七 |子男客卅五
(参4720/図2・3)
    |客妻大女草年[廿]三  |[客]子男□年四歳
(参4269/図2・2)
   右風家口食五|人  |其/三人男/二人女
(参4268/図2・1)
b新成里戸人公乘區文年卅 |妻大女妾年廿二 |文男弟弘年廿五
(肆4308/「図2・41)
    |[文]妻大女[妾]年廿二|
(肆4307/図2・40)
  ●右文家口食四人|   |其/二人男/二人女
(肆4306/図2・39)

c平陽里戸人公乘朱碩年卅一 |  |訾 五 十
(参4287/図2・20)

d平陽里戸人公乘烝[平]年卌□|筭一  踵兩足 |
(参4275/図2・8)
戸人簡は某里戸人公乘(女性の場合某里戸人大女)で始まり戸人を単独で記載するが、戸人以外の成員の簡は2人を連記し、戸集計簡に男女別口数を記載する特徴を有する。少数だが、戸人簡・成員簡に3人を連記する書式(新成里)も見える(b)。また、冒頭の戸人簡については、訾を記載する書式も存在する(c)。この書式は宜都里のすべての戸人簡に見え、吉陽里の簡には見えないが、他の里については混在している。この訾の有無以外にも、筭を記載する書式もある(d)など、多少の記載のゆれは存在する。しかし新成里を除き、戸人簡は単記で成員は連記する点は統一されており、集計の書式も同じであり、書式の差異は少ない(凌文超2011)。
①構成簡 計1494点
(1)「竹簡参」採集簡33盆,示意図2・4に含まれる簡と、これに簡番号が連続する簡からなる。137点。書式の相違する以下の簡を除外した。
4361~4409(示意図3),4414~4434,4437~4440,4442~4444,4446~4448,4450~4451,4453~4456,4459,4463~4469,4471~4475。・
(2)「竹簡柒」発掘簡18盆,示意図17(坨はⅡb59)・18(Ⅱc①)・19(Ⅱc②)・20(Ⅱc③)・21(Ⅱc④)・23(Ⅱc⑥)・24(Ⅱc⑦?)・26(Ⅱc⑨)・27(Ⅱc⑩)・28(Ⅱc⑪)・30(Ⅱc⑬)・31(Ⅱc⑭)・32(Ⅱc⑮)および示意図外の諸簡からなる(鷲尾祐子2020a)。815点。簡番号は以下のとおり。
2264,2266,2267,2268,2269,2270,2271,2272,2273,2274,2275,2276,2277,2278,2279,2280,2281,2282,2283,2285,2286,2287,2288,2289,2290,2291,2292,2299,2300,2301,2307,2392,2393,2394,2395,2396,2397,2398,2399,2400,2401,2402,2403,2404,2405,2406,2407,2408,2409,2410,2411,2412,2413,2414,2415,2416,2417,2418,2419,2420,2421,2422,2423,2424,2425,2426,2427,2428,2429,2430,2431,2432,2433,2434,2435,2436,2437,2438,2439,2440,2441,2442,2443,2444,2445,2446,2447,2448,2449,2450,2451,2452,2453,2454,2455,2456,2457,2458,2459,2460,2461,2462,2463,2464,2465,2466,2467,2470,2471,2473,2474,2475,2476,2477,2478,2479,2480,2481,2482,2483,2484,2485,2486,2487,2488,2489,2490,2491,2492,2493,2494,2495,2496,2497,2498,2500,2501,2502,2503,2504,2505,2506,2507,2508,2511,2512,2513,2514,2515,2517,2518,2553,2555,2556,2557,2580,2582,2587,2589,2599,2600,2605,2606,2616,2617,2618,2619,2621,2622,2623,2624,2625,2626,2627,2628,2630,2631,2632,2633,2635,2636,2638,2640,,2650,2651,2654,2795,2797,2809,2810,2812,2814,2816,2852,2831,2853,2892,2895,2898,2903,2904,2905,2907,2908,2909,2912,2941,2944,2947,2984,2985,2986,2993,2894,2995,2996,2997,3001,3005,3006,3010,3016,3017,3023,3024,3033,3034,3037,3039,3041,3042,3044,3053,3054,3062,3063,3070,3074,3124,3125,3126,3192,3201,3202,3203,3204,3205,3206,3207,3208,3209,3210,3211,3212,3213,3214,3215,3216,3217,3218,3219,3220,3221,3222,3223,3224,3225,3226,3227,3228,3229,3333,3364,3369,3370,3373,3398,3430,3484,3487,3488,3499,3506,3509,3528,3529,3530,3531,3532,3533,3534,3535,3536,3537,3538,3539,3540,3541,3542,3543,3544,3545,3546,3547,3548,3549,3550,3551,3552,3553,3554,3555,3556,3557,3558,3559,3560,3561,3562,3563,3564,3565,3566,3567,3568,3569,3570,3571,3572,3573,3574,3575,3576,3577,3578,3579,3580,3581,3582,3583,3584,3585,3586,3587,3588,3589,3590,3591,3592,3593,3594,3595,3596,3597,3598,3599,3600,3601,3602,3603,3604,3605,3606,3607,3608,3609,3610,3611,3612,3613,3614,3615,3616,3617,3618,3619,3620,3621,3622,3623,3624,3625,3626,3627,3628,3629,3630,3631,3632,3633,3634,3635,3636,3637,3638,3639,3640,3641,3642,3643,3644,3645,3646,3647,3648,3649,3650,3651,3652,3653,3654,3655,3656,3657,3658,3659,3660,3661,3662,3663,3664,3665,3666,3667,3668,3669,3670,3671,3672,3673,3674,3675,3676,3677,3678,3679,3680,3681,3682,3683,3684,3685,3686,3687,3688,3689,3690,3691,3692,3693,3694,3695,3696,3697,3698,3699,3700,3701,3702,3703,3704,3705,3706,3707,3708,3709,3710,3711,3712,3713,3714,3715,3716,3717,3718,3719,3720,3721,3722,3723,3724,3725,3726,3727,3728,3729,3730,3731,3732,3733,3734,3735,3736,3737,3738,3739,3740,3741,3742,3743,3744,3745,3746,3747,3748,3749,3750,3751,3752,3753,3754,3755,3756,3757,3758,3759,3760,3761,3762,3763,3764,3765,3766,3767,3768,3769,3770,3771,3772,3773,3774,3775,3776,3777,3778,3779,3780,3781,3782,3783,3784,3785,3786,3787,3788,3789,3790,3791,3792,3793,3794,3795,3796,3797,3798,3799,3800,3801,3802,3803,3804,3805,3806,3807,3808,3809,3810,3811,3812,3813,3814,3815,3816,3817,3818,3819,3820,3821,3822,3823,3824,3825,3826,3827,3828,3829,3830,3831,3832,3833,3834,3835,3836,3837,3838,3839,3840,3841,3842,3847,3848,3849,3850,3851,3852,3853,3854,3855,3856,3857,3858,3859,3860,3861,3862,3863,3864,3865,3866,3867,3868,3869,3870,3871,3872,3873,3874,3875,3876,3877,3878,3879,3880,3881,3882,3883,3884,3885,3886,3887,3888,3889,3890,3891,3892,3893,3894,3895,3896,3897,3898,3899,3900,3901,3902,3903,3904,3905,3906,3907,3908,3909,3910,3911,3912,3913,3914,3915,3916,3917,3918,3919,3920,3921,3922,3923,3924,3925,3926,3927,3928,3929,3930,3931,3932,3933,3934,3935,3936,3937,3939,3940,3941,3942,3943,3944,3945,3946,3947,3948,3949,3950,3951,3952,3953,3954,3955,3956,3957,3958,3959,3960,3961,3962,3963,3964,3965,3966,3967,3968,3969,3970,3971,3972,3973,3974,3975,3976,3977,3978,3979,3980,3981,3982,3983,3984,3985,3986,3987,3988,3989,3990,3991,3992,3993,3994,3995,3996,3997,3998,3999,4000,4001,4002,4003,4004,4005,4006,4007,4008,4009,4010,4011,4012,4013,4014,4015,4016,4017,4018,4019,4020,4021,4022,4023,4024,4025,4026,4027,4028,4029,4030,4031,4032,4033,4034,4035,4036,4037,4038,4039,4040,4041,4042,4043,4044,4045,4046,4047,4048,4049,4050,4051,4052,4053,4054,4055,4056,4057,4059,4060,4061,4062,4064,4065
(3)「竹簡伍」示意図30(Ⅱa①)・31(Ⅱa②)・32(Ⅱa③)・33(Ⅱa④)・34(Ⅱa⑤)・35(Ⅱa⑥)・36(Ⅱa⑦)・37(Ⅱa⑧)・38(Ⅱa⑨)・39(Ⅱa⑩)・40(Ⅱa⑪)・41(Ⅱa⑫)・42(Ⅱa⑬)・43(Ⅱa⑭)と示意図外の諸簡からなる(発掘簡11盆)。「竹簡伍」に【六年小武陵郷簿】の簡が見えることは、鷲尾祐子2021に以下のように記載した。

「【六年小武陵郷簿】吉陽里の集計簡である。
●右吉陽里魁……五十戸父母妻子合二百七十二人(伍6969/図39・13)
この簡は,【六年小武陵郷簿】の簡が多数みえる「竹簡参」「竹簡柒」所収のものではないが,同簿の構成簡である。伍6969の書式は【六年小武陵郷簿】にみえる他の里の集計に同じである(「右新成里魁謝三領吏民50戸父母妻子合二百一十七人」柒4016)。また,伍6969・吉陽の集計簡の周辺にみえる吉陽の諸簡の書式は【六年小武陵郷簿】に同じであり,【四年小武陵郷簿】・吉陽里棨簿と同年齢の同一人物が見える。
(「竹簡伍」の【六年小武陵郷簿】→吉陽里棨簿(陸)・【四年小武陵郷簿】(壹)
吉陽里戸人公乘謝黄五十刑□足(伍6959/図39・3)→吉陽里戸人公乘謝黄年五十刑右足訾五十(陸1252/図14・65)
吉陽里戸人公乘廖【示谷】 年[卅七]給郡吏(伍6562/図34・8)→吉陽里戸人公乘[廖]【示谷】年廿七筭[一給]郡吏訾一百(陸1260/14・73)・吉陽里戸人公乘廖□年廿七筭一給郡吏(壹10175)
先述の如く、【六年小武陵郷簿】には【四年小武陵郷簿】・吉陽里棨簿と同年齢の同一人物が見えるのであり、ここに挙げた諸簡も【六年小武陵郷簿】のものであると考えられる。」(以上鷲尾祐子2021)
総数480点。簡番号は以下の通り。
6345,6346,6347,6348,6349,6362,6352,6355,6366,6375,6376,6377,6378,6379,6380,6381,6382,6383,6384,6385,6386,6387,6388,6389,6390,6391,6392,6393,6394,6395,6396,6397,6398,6399,6400,6401,6402,6403,6404,6405,6406,6407,6408,6409,6410,6411,6412,6413,6414,6415,6416,6417,6418,6419,6420,6421,6422,6423,6424,6425,6426,6427,6428,6429,6430,6432,6433,6434,6435,6436,6437,6438,6439,6440,6441,6443,6445,6447,6448,6449,6452,6453,6455,6456,6457,6458,6459,6460,6461,6462,6463,6464,6465,6466,6467,6468,6469,6470,6471,6472,6473,6474,6475,6476,6477,6478,6479,6480,6481,6482,6483,6484,6485,6486,6487,6488,6489,6490,6491,6492,6493,6494,6495,6496,6497,6498,6499,6500,6501,6502,6503,6504,6505,6506,6507,6508,6509,6510,6511,6512,6513,6514,6515,6516,6517,6518,6519,6520,6521,6522,6523,6524,6525,6526,6527,6528,6529,6530,6531,6532,6533,6534,6535,6536,6537,6538,6539,6540,6541,6542,6543,6544,6545,6546,6547,6548,6549,6550,6551,6552,6553,6554,6555,6556,6557,6558,6559,6560,6561,6562,6563,6564,6565,6566,6567,6568,6569,6570,6571,6572,6573,6574,6575,6576,6577,6578,6579,6580,6581,6582,6584,6585,6586,6588,6589,6591,6592,6594,6595,6596,6597,6599,6603,6605,6607,6608,6610,6611,6612,6613,6614,6616,6618,6619,6622,6623,6624,6625,6626,6627,6628,6629,6630,6644,6645,6647,6648,6649,6650,6651,6652,6653,6654,6657,6658,6659,6660,6661,6662,6667,6668,6676,6677,6678,6682,6683,6690,6691,6696,6697,6698,6705,6706,6708,6714,6718,6719,6720,6721,6729,6736,6739,6740,6742,6743,6744,6745,6746,6747,6749,6755,6761,6830,6840,6841,6842,6853,6855,6858,6867,6878,6888,6889,6892,6893,6894,6895,6896,6898,6899,6900,6901,6902,6903,6904,6905,6906,6908,6909,6910,6911,6912,6913,6914,6915,6916,6917,6918,6919,6920,6922,6923,6924,6925,6926,6927,6928,6929,6930,6931,6932,6933,6934,6935,6936,6937,6938,6939,6940,6941,6942,6944,6945,6946,6947,6948,6949,6950,6951,6952,6953,6954,6955,6956,6957,6958,6959,6960,6961,6962,6963,6964,6965,6966,6967,6968,6969,6970,6971,6972,6979,6980,6981,6982,6983,6984,6985,6986,6987,6988,6989,6990,6991,6992,6993,6994,6995,6996,6997,6998,6999,7000,7001,7002,7003,7004,7005,7006,7007,7008,7009,7010,7011,7012,7014,7015,7016,7017,7018,7019,7020,7021,7022,7023,7024,7025,7026,7027,7028,7029,7030,7031,7032,7033,7034,7035,7036,7037,7038,7039,7040,7041,7042,7043,7044,7045,7046,7047,7049,7050,7054,7057,7059,7060,7103,7104,7105,7106,7107,7108,7109,7110,7111,7112,7113,7114,7115,7116,7117,7118,7122,7201,7202,7203,7204,7205,7206,7207,7209,7210
(4)「竹簡玖」27盆の諸簡。【四年小武陵郷簿】,「竹簡陸」五年吉陽里棨簿(鷲尾祐子2021)と同年齢の同一人物が見える。
吉陽里戸人公乘李琕年廿九 刑左足(玖6564)→壹10374,陸1245
琕男弟加年九歲(図版により年齢を改める) 琕姪子男金年四歲(玖6624)→陸1254
吉陽里戸人公乘區梁年卌三(図版により名と年齢を改める)(玖6566)→壹10376,陸1362
  梁母大女妾年七十一 □……(玖6451)→壹10347,陸1225
  梁妻大女貞年卌一 梁子李年十七踵兩足(玖6455)→陸1229
書式も「竹簡参」「竹簡柒」「竹簡伍」の【六年小武陵郷簿】の諸簡と同じである。本簿の一部であると考えられる。
総数62点。簡番号は以下の通り。
6450,6451,6452,6453,6454,6455,6456,6457,6458,6459,6460,6461,6462,6463,6564,6565,6566,6567,6568,6582,6583,6589,6590,6591,6592,6593,6594,6595,6596,6597,6598,6599,6600,6601,6602,6603,6604,6605,6606,6607,6608,6609,6610,6611,6612,6613,6614,6615,6616,6617,6618,6619,6620,6621,6622,6623,6624,6628,6633,6634,6635,6636
②作成時期:嘉禾六年三月(鷲尾祐子2020a)。
③記載対象:小武陵郷。平陽・東陽・高遷・吉陽・新成・宜都・宜陽の七里。
(1)「竹簡参」図2、冊の外側より内側に向かって平陽,新成(一家族),萬歳(一戸人),宜都,宜陽の各里が見える。示意図外に高遷(集計)あり。
図4 外周より高遷・東陽里が見える。
(2)「竹簡柒」示意図32、冊の外周より宜陽・宜都・新成・平陽・東陽・高遷・吉陽。各里の簡冊内での配置順は「竹簡壹」採集簡14盆小武陵郷嘉禾四年簿に同じである。
(3)「竹簡伍」吉陽・高遷・東陽・平陽・新成・宜都・宜陽の各里が見える。各示意図に含まれる構成簡が少数(最も多い示意図30で62簡)であるため,配列は把握し難い。
(4)「竹簡玖」吉陽・高遷里。
④把握可能人数 (年齢と性別・続柄が明らかな人数)1263人。
⑤表題・集計と全体の構成
表題:表題と考えられる簡は残存していない。
集計:里の集計と,郷の集計とが存在する。
里の集計 どの里なのかおおよそ明かなものを記載する。

(1)吉陽里 ●右吉[陽里魁]□□|……五十戸父母…二百七十二人
(伍6969)(原釋は|…以下「口食□百七十二人」図版写真により改める)
 以下は,竹簡柒」示意図32上で,吉陽里戸と高遷里戸の境界に存在する簡であり,吉陽里の集計と考えられる。
|其廿四戸[故吏]  |其/二戸上品/九戸中品/十三戸下品/
(柒3655)(柒3826・4044・6403,伍6403・6982などにより,吏→戸に改める)
|其一戸新占民   |            
    (柒3657)
|其[八]戸限佃民  |其/二戸中品/其六戸下品/ 
    (柒3662)
下之品下□  |其□□戸限佃民  |  
 (柒3663)(下之品下□ は上下逆向きに書かれている)
定領役民卅三[戸] |       |        (柒3665)(図版により應→領,廿→卅に改める)
(2)高遷里 右高遷里〔魁〕番?□〔右に「言」〕|領吏民五十戸父母妻|子合二百五十七人(參4460)
(3)東陽里 「竹簡柒」示意図32上で,東陽里戸と平陽里戸の境界に存在する簡は,東陽里の集計であると考えられる。
其九十九人女|             |      
         (柒3847/図32・320)
|其六戸新占民  |     
 (柒3810/図32・283)
|其廿四戸故戸  |其/……戸上品/……戸中品/……戸下品/
(柒3826/図32・299)
|其十……戸 |女戸下品之下     
 (柒3824/図32・297)
〼□領役民卅□戸|……|
 (柒3819/図32・292) (図版により吏→役,卌→卅に改める)。
(4)平陽 次に挙げる諸簡は「竹簡参」示意図2上で連続しており,平陽里と宜都里簡の境界に位置しているため,平陽里の集計であると考えられる(鷲尾祐子2012参照)。

 |其一戸給軍吏  |下品
(參4303/図2・36)
 |其五戸□□民  |[下]品
(參4302/図2・35)
 |其七戸□□女戸不|任調 下品之下
(參4301/図2・34)
 定領役民 |卅七戸  |
(參4300/図2・33)
(5)新成里 
右新成里魁謝仨領吏民五十戸父母妻子合二百一十九人
(柒4016)(図版により原釋七を九に改める。また三を仨に改める)
其一百卅五人男| |
(柒3987)
其八[十]四人女| |
(柒3934)
(6)宜都里 右宜都里魁聶□[所領]妻子兄弟合二百六十五人
(柒2630)
      [其一百八]十四人男|  |
(柒2266)
      其八十一人女|     |
(柒2270)
(7)宜陽里 〼□吏民五十六戸口食三百廿[九人]〼(伍6840)
其一百七十[六|人]男 |
(伍6345)
其一百五十三|人女  |
(伍6346)
伍6840の里の戸数は56戸であり、ほかの里が一律五十戸であるのと相違するが、一郷戸数を五十で割って出た端数を含んでいるからであると考えられる。とすれば、最も外周にあり一郷七里の最後に位置づけられる宜陽里の集計である可能性が高い。

ほか、東陽里・あるいは平陽里集計のどちらかである可能性がある簡を挙げる。
右□陽里魁□□領|吏民□□戸父母妻|子合二百六十九人
(柒3210)
郷の集計:〼[小]武陵郷領吏民|□百五十……口食二千|□百卅三人(伍6552)小武陵郷の戸口数を集計する。戸数はよく見えない。口数も一部見えない。
 ほか、人数・戸数により郷の集計の可能性が高いものを下に挙げる。
  |其廿一戸給縣吏    |中品
(伍6513)
 〼負役民|二百三戸  |  
  (伍6720)
 ● [其卌七戸給縣吏]  ……
(柒3901)
 其[七]十二戸下戸之下新〼
(柒3398)
|其廿二戸官蔣(?)民口合|六十一人
(柒2651)
|其廿戸限佃客口合八十□人| 
(柒2654)
其二百戸下品|  |〼
(柒2797)
其七十八戸下戸之下|  | 
(柒2816)
里の集計は、【六年廣成郷簿】に同じく「徴発対象戸集計型」(鷲尾祐子2021)のそれである。【六年廣成郷簿】におなじく,男女別の口数集計や,吏や卒,邸閣民(柒4640,邸閣で労働する徭役につけられている者か),園父(国家の園にて労働する徭役に就く者)などのすでに公務に就いている者の集計,さらに「貧窮・女戸であるため徴発対象にならない戸(3925)が見える。
一方、【六年廣成郷簿】と相違する点もあり、故戸(前掲柒3855・3826)と新占戸(前掲柒3657・3810)の集計が見える。また,徴発非対象者の各集計に品(戸を上・中・下・下戸の下にランク分けしたもの)が記載されている点も相違する。
全体の構成:各里の簿が、戸の記録+里の集計の順に並ぶ。「竹簡柒」示意図32により、各里は吉陽・高遷・東陽・平陽・新成・宜都・宜陽の順に配列されると考えられる。各里の記載の後、郷全体の集計が置かれる。

⑤特徴 里の簿の集計から,「徴発対象戸集計型」に属する簿であると考えられる(鷲尾祐子2021)。
 一戸あたり平均口数は、5.0人(戸集計簡312件より算出)。訾一戸あたり平均51.5(117件より算出)。奴婢の記載が見える(柒3037,柒3273,柒3544,柒3574,柒3576,柒3714,柒3816)。客の記載無し。死物故の記載あり。一歳児あり(柒3965)。
書式のゆれが少ないのみならず、諸簡のサイズも近似している。各簡の均質性が高い。
⑦研究 凌文超2011。鷲尾祐子2017。連先用2019。鷲尾祐子2020a。鷲尾祐子2021。
【六年中郷簿】(【吏民簿5】)
「竹簡肆」「竹簡伍」嘉禾六年中郷吏民簿
【六年中郷簿】は、書式のばらつきが大きい。
最も一般的な書式は、下記a平甿里,曼溲里の書式である。

a平甿里戸人公乘衛根年卅三踵|足   |
(伍6354/図30・10)
  〼  |根妻汝年廿四 |
(伍6373/図30・29)
   右根家口食二人 |   |
(伍6372/図30・28)
曼[溲]里戸人公乘鄧杋年五十三|  |
(伍2415/図13,79)
  ●右杋家口食五人| |
(伍2476/図13,140)
一簡に一人を記載する。戸人簡は某里戸人公乘で始まる。戸の集計は口数のみを記載し、右~で始まる書式である。「筭」「訾」は書かない。
 ほかの里の書式は、bこれに筭を足すもの,c訾を足すもの,d筭を足し、戸の集計が「凡某家口食」で始まるもの等がある。

b小赤里戸人公乘五兵年卅四|筭一給卒□□足|
(肆473/図2・248)
  ●右石家口食□人|
(肆478/図2・253)
c小赤里戸人公乘呂尺年卌七 |  |
(肆62/図1・62)
    右理(?)家口食四人 |  |訾  五  十
(肆63/図1・63)
d曼溲里戸人孫傳年[卅]|□刑右足  |
(肆452/図2・223)
    |傳妻汝年卅筭一 |  
(肆451/図2・226)
    |傳子男淸(?)年□ | 
(肆450/図2・225)
    |傳男弟要(?)年十 | 
(肆449/図2・224)
  ●凡[傳]家口食四人| |
(肆448/図2・223)
 aの基本形と集計の書式は同じだが、戸人簡の書式が大きく相違するのが、緒中里である。某里の前に「嘉禾五年」と書かれる。筭は記載する。

e嘉禾五年緒中里戸人公乘五|[忠]年廿九筭一 |
(肆39/図1・39)
 ,|右忠家口食四人 |
(肆40/図1,40)
某里の前に「嘉禾六年」と書くのが東㚘里である。筭と訾も書く。
f嘉禾六年東㚘里戸人公乘鄧展|年廿六筭一 |
(肆403/図2・178)
    |展母津六十一 |
(肆402/図2・177)
    |妻莽年廿一筭一 |
(肆401/図2・176)
    |展客年七歳 |
(肆400/図2・175)
  右展家口食四人 |  |訾  五  十  
(肆399/図2・174)
先述のすべての書式と戸人簡の書式が大きく異なるのが、五唐里の書式である。大男,大女を冒頭に置き、某里戸人や爵位を記載しない。集計はaに同じである。

g大男鄭俈年卌二 |   |
(肆341/図2・116)
   |妻思年卌 |
(肆340/図2・115)
   |子女汝年七歳 |
(肆339/図2・114)
   |汝男弟增年四歳 |
(肆338/図2・113)
  右俈家口食四人|   |
(肆337/図2・112)
さらに、以上の書式とは異なり、一つの簡に二名を記録するのが、梨下里の書式である。

h梨下里戸人公乘鄭桑年五十七|   |
(伍2668/図15・20)
   |桑妻珠年卌四    |桑母妾年八十六
(伍2669/図15・21)
   |桑弟聟授年卅    |授妻同年廿一
(伍2713/図15・65)
  ,|桑子男目年十二   |目男弟幸年三歳
(伍2802/図16・16)
   |桑男弟弘年十六   |{土叟}子女愧(?)年六歳
(伍2803/図16・17)
 右桑家口食十|五人  |
(伍2860/図16・74)
このように、書式が多様であり、同じ里でも相違する書式が混在する場合がある(小石里bc曼溲里ad)。
①構成簡 「竹簡肆」示意図1(坨はⅠa①)2(Ⅰa②)3(Ⅰa③)4(Ⅰa④)の諸簡(発掘簡1盆)と示意図外の簡を中心に、「竹簡肆」示意図12の簡,「竹簡伍」示意図13,14,15,16,17,20,30,37の諸簡と示意図外の簡からなる。1833点
(1)「竹簡肆」示意図1(坨はⅠa①)2(Ⅰa②)3(Ⅰa③)4(Ⅰa④)の諸簡(発掘簡1盆)1~4の簡(簡番号 肆1‒899)。全872点。下記の22簡を除外する。
198,207,213,225,497,498,499,515,552,811,824,825,826,827,830,831,832,833,834,835, 856,886,887,889,894
 「竹簡肆」示意図1‒4に含まれる諸簡、および番号がこれに連続する簡からなる。 
 示意図1‒4は、里名の重なり方が同じであり、書式も共通しているため、四つの示意図の簿は、本来一つのまとまりとして保存されていた可能性が高い。
(2)「竹簡肆」示意図12(Ⅰc1⑤ 発掘簡3盆)の簡 83点。下記の簡番号の諸簡である。「竹簡肆」示意図1~4と同里,同一書式の諸簡からなる。
2725,2726,2727,2728,2729,2730,2731,2732,2733,2734,2735,2736,2739,2740,2742,2743,2744,2745,2746,2747,2749,2750,2751,2752,2754,2755,2770,2771,2772,2773,2774,2775,2779,2781,2782,2786,2787,2789,2790,2791,2792,2793,2794,2797,2799,2800,2801,2802,2803,2804,2808,2809,2810,2811,2814,2815,2816,2817,2818,2819,2820,2821,2822,2823,2824,2825,2826,2827,2828,2829,2830,2831,2832,2833,2834,2835,2836,2837,2838,2839,2840,2841,2842
(3)「竹簡伍」示意図13(Ⅰe①),14(Ⅰe②),15(Ⅰe③),16(Ⅰe④),17(Ⅰe⑤),20(Ⅰe⑧ ここまで発掘簡7盆),30(Ⅱa① 発掘簡11盆),37(Ⅱa⑧ 発掘簡11盆)の諸簡と示意図外の簡。また示意図図31(Ⅱa② 発掘簡11盆) ,35(Ⅱa⑥ 発掘簡11盆)に各1点、図36(Ⅱa⑦ 発掘簡11盆)に1点存在する。877点。下記の簡番号の諸簡である。
2337,2338,2339,2340,2341,2342,2343,2344,2345,2346,2347,2348,2349,2350,2351,2352,2353,2354,2355,2356,2357,2358,2359,2360,2361,2362,2363,2364,2365,2366,2367,2368,2369,2370,2371,2372,2373,2374,2375,2376,2377,2378,2379,2380,23812,382,2383,2384,2385,2386,2387,2388,2389,2390,2391,2392,2393,2394,2395,23962397,2398,2399,2400,2401,2402,2403,2404,2405,2406,2407,2408,2409,2410,2411,2412,2413,2414,2415,2416,2417,2418,2419,2420,2421,2422,2423,2424,2425,2426,2427,2428,2429,2430,2431,2432,2433,2434,2435,2436,2437,2438,2439,2440,2441,2442,2443,2444,2445,2446,2447,2448,2449,2450,2451,2452,2453,2454,2455,2456,2457,2458,2459,2460,2461,2462,2463,2464,2465,2466,2467,2468,2469,2470,2471,2472,2473,2474,2475,2476,2477,2478,2479,2480,2481,2482,2483,2484,2485,2486,2487,2488,2489,2490,2491,2492,2493,2494,2495,2496,2497,2498,2499,2500,2501,2502,2503,2504,2505,2506,2507,2508,2509,2510,2511,2512,2513,2514,2515,2516,2517,2518,2519,2520,2521,2522,2523,2524,2525,2526,2527,2528,2529,2530,2531,2532,2533,2534,2535,2536,2537,2538,2539,2540,2541,2542,2543,2544,2545,2546,2547,2548,2549,2550,2551,2552,2553,2554,2555,2556,2557,2558,2559,2560,2561,2562,2563,2564,2565,2566,2567,2568,2569,2570,2571,2572,2573,2574,2575,2576,2577,2578,2579,2580,2581,2582,2583,2584,2585,2586,2587,2588,2589,2590,2591,2592,2593,2594,2595,2596,2597,2598,2599,2600,2601,2602,2603,2604,2605,2606,2607,2608,2609,2610,2611,2612,2613,2614,2615,2616,2617,2618,2619,2620,2621,2622,2623,2624,2625,2626,2627,2628,2629,2630,2631,2632,2633,2634,2635,2636,2637,2638,2639,2640,2641,2642,2643,2644,2645,2646,2647,2648,2649,2650,2651,2652,2653,2654,2655,2656,2657,2658,2659,2660,2661,2662,2663,2664,2665,2666,2667,2668,2669,2670,2671,2672,2673,2674,2675,2676,2677,2678,2679,2680,2681,2682,2683,2684,2685,2686,2687,2688,2689,2690,2691,2692,2693,2694,2695,2696,2697,2698,2699,2700,2701,2702,2703,2704,2705,2706,2707,2708,2709,2710,2711,2712,2713,2714,2715,2716,2717,2718,2719,2720,2721,2722,2723,2724,2725,2726,2727,2728,2729,2730,2731,2733,2734,2735,2736,2737,2738,2739,2740,2741,2743,2744,2745,2746,2747,2748,2749,2750,2751,2752,2753,2754,2755,2756,2757,2759,2760,2761,2762,2763,2764,2765,2766,2767,2768,2769,2770,2771,2772,2773,2774,2775,2777,2778,2779,2780,2781,2782,2783,2785,2786,2787,2788,2789,2790,2791,2792,2793,2794,2795,2796,2797,2798,2799,2800,2801,2802,2803,2804,2805,2806,2807,2808,2809,2810,2811,2812,2813,2814,2815,2816,2817,2818,2819,2820,2821,2822,2823,2824,2825,2826,2827,2828,2829,2830,2831,2832,2833,2834,2835,2836,2837,2838,2839,2840,2841,2842,2843,2844,2845,2846,2847,2848,2849,2850,2851,2852,2853,2854,2855,2856,2857,2858,2859,2860,2861,2862,2863,2864,2865,2866,2867,2868,2869,2870,2871,2872,2873,2874,2875,2876,2877,2878,2879,2880,2881,2882,2883,2884,2885,2886,2887,2888,2889,2890,2891,2892,2893,2894,2895,2896,2897,2898,2899,2900,2901,2902,2903,2904,2905,2906,2907,2908,2909,2910,2911,2912,2913,2914,2915,2916,2917,2918,2919,2920,2921,2922,2923,2924,2925,2926,2927,2929,2930,2931,2932,2933,2934,2935,2936,2937,2938,2939,2940,2941,2942,2943,2944,2945,2946,2947,2948,2949,2950,2951,2952,2953,2954,2955,2956,2957,2958,2959,2960,2961,2962,2963,2964,2965,2966,2967,2968,2969,2970,2971,2972,2973,2974,2975,2976,2977,2978,2979,2980,2981,2982,2983,2984,2985,2986,2987,2988,2989,2990,2991,2992,2993,2994,3001,3005,3008,3014,3015,3019,3020,3021,3022,3023,3024,3025,3026,3035,3036,3037,3038,3039,3040,3041,3042,3044,3046,3047,3052,3058,3128,3130,3131,3133,3137,3139,3140,3141,3144,3145,3159,3160,3161,3162,3163,3167,3171,3172,3173,3174,3211,3212,3213,3214,3215,3216,3217,3218,3219,3220,3221,3222,3223,3224,3225,3226,3227,3228,3229,3230,3231,3232,3233,3234,3235,3236,3237,3238,3239,3240,3241,3242,3243,3244,3245,3246,3247,3248,3249,3250,3251,3252,3253,3254,3255,3256,3257,3258,3259,3260,3261,3262,3263,3264,3265,3266,3267,3268,3269,3270,3271,3272,3273,3274,3275,3276,3277,3278,3279,3280,3281,3282,3283,3284,3285,3286,3287,3288,3289,3290,3291,3292,3293,3294,3295,3296,3297,3298,3299,3300,3301,3302,3303,3304,3305,3306,3307,3308,3309,3310,3311,3312,3313,3314,3315,3316,3317,3318,3319,3320,3321,3333,3334,3335,3336,3337,3338,3347,3348,3349,3350,3351,3359,3385,3386,3434,6350,6351,6353,6354,6356,6357,6358,6359,6360,6361,6363,6364,6365,6367,6368,6369,6370,6371,6372,6373,6374,6454,6590,6655,6656,6663,6664,6665,6666,6669,6670,6671,6672,6673,6674,6675,6679,6722,6723,6724,6725,6726,6727,6728,6730,6731,6732,6733,6734,6748,6837,6856,7318
(4)そのほか、捌5307/示意図16(Ⅱc㊶ 発掘簡22盆),6。嘉禾五年緒中里の簡が存在する。
②作成時期:嘉禾六年。戸人簡に、嘉禾五年緖中里と嘉禾六年東㚘里の記述が混在しており、どちらの年なのかが不可解である。しかし、これらの里も同一簡冊の一部であり、郷全体の戸口数の総計も存在することから、すべて同じ時期の記録であると考えられる。里によって記録年が相違するならば、郷全体の戸口数を総計することには意味が無いからである。鷲尾祐子2021で述べたように、「徴発対象戸集計型」は前年の簿を書き写し死者の記録を書き加えたものであり、「嘉禾五年」は前年の同書式の簿を書き写す際に誤って書いてしまったものと考えられる。記載の情報は「死」を除き嘉禾五年のものだが、作成時期は嘉禾六年である。
③作成対象 中郷(「集凡中鄕領吏民三百卌九戸口食二千七十一人 」 (原釋一千、図版により二千に改める)肆899)楊芬 2011参照。
所属する里は緖中里,小赤里,曼溲里,東㚘里,梨下里,平甿里,五唐里,曼溲里の七里である。
里の集計にみえる里名には、小赤里,曼溲里,東㚘里,梨下里,平甿里,五唐里の五里がある。
  
●集凡[五唐]里魁|周□領吏民五十戸|口食二百八十九
(肆380)
●集凡東㚘里魁鄧(?)□|領吏民戸五十口食|二百七十七人
(肆428)(原釋五十五戸。戸数部分が見えない。「徴発対象戸集計型」のばあい一里以外の里の戸数はすべて五十戸であるため、五十とした。)
●集凡小赤里魁黃仨領|[吏民]戸五十口食四百卅五人|
(肆495)
●集凡曼溲里魁|□忽[領]吏民五十戸口食|二(?)百五十七人
(肆568)
梨下里魁廖溺領吏民戸合|卌九戸口食二百八十人 |    
(伍2793)
里の集計としては里名不詳のものが一つ残存している(……領吏民□□□戸…… (肆702))。戸人簡にみえる里で里の集計簡が見えないものには平甿里(前掲a参照),緒中里(前掲e)がある。肆702は、曼溲里か緒中里の集計であると考えられる。
 この七里が中郷のすべての里である。郷の総戸数349戸(前掲肆899)を一里の戸数50で割ると、6が得られ49余る。50戸の6里と49戸(梨下里は49戸。伍2793)の1里から為るのであり、この郷の里の数は7である。
④把握可能人数:(性別,続柄,年齢が明らかな者)997人。全口数2071人の48%。
⑤表題,集計と全体の構成
「竹簡肆」示意図1~4と「竹簡伍」示意図13,17,20により、各里の順序を知ることが可能である。示意図内における各里の位置は
「竹簡肆」示意圖1 外側から緒中里→小赤里→曼溲里→東㚘里→五唐里→平甿里
「竹簡肆」示意圖2 上半分が外側から東㚘里→五唐里→梨下里
   下半分が外側から 平甿里→緒中里→小赤里→曼溲里→東㚘里→五唐里→梨下里
「竹簡伍」示意図13 外側から緒中里→小赤里→曼溲里→東㚘里→五唐里→梨下里
      示意図17 東㚘里→五唐里→梨下里
      示意図20 緒中里→小赤里→曼溲里→東㚘里→五唐里
この5図は、里の配列順が同じである(「竹簡肆」の示意図3,4はこれと逆である)。これに拠って考えると、簡冊の冒頭(示意図中央に位置する)より梨下里,五唐里,東㚘里,曼溲里,小赤里,緒中里,平甿里の順であったと考えられる。梨下里のみ表題簡が残っていることからも、梨下里が最も冒頭に置かれると考えられる。【六年廣成郷簿】の場合も最も冒頭の里のみ表題簡が存在した。本簿においても同じ現象が見える。
 全体の構成を紹介する。まず、簡冊冒頭(中央)に簿全体の表題簡(残存していない)が置かれ、続いて梨下里の表題簡が置かれる。

 嘉禾五年梨下里[魁]□□謹列|□□人名年[紀]……
(伍2836/示意図16,50)
 梨下里の諸簡がこれに続き、末尾に里の集計簡が置かれる。梨下里の諸簡は25㎝ほどの長さがあり(前掲hの2668は25,2㎝、2669は25,2㎝、2713は25,2㎝、2802は25,5㎝、2803は25,4㎝、2860は25,3㎝)、他の里の諸簡(a平甿里伍6354は24,0㎝、伍6372は24,0㎝、b小赤里肆473は23,1㎝、肆478は23,0㎝、d曼溲里肆452は23,1㎝、肆451は23,1㎝、e緒中里肆39は23,8㎝、肆40は23,3㎝、f東㚘里肆403は23,2㎝、肆402は23,6㎝、g五唐里肆341は23,1㎝、肆340は23,3㎝)に比べて1㎝以上長いため、特定が容易である。鷲尾祐子2020bで得られた各項目集計の順番に従い配列する。

梨下里魁廖溺領吏民戸合|卌九戸口食二百八十人 |   
(伍2793/図16・7)
  |其一百六十口男人 |
(伍2792/図16・6)
  |其一百廿人女人 |
(肆266/図2・41)
  |其三戸給縣吏 |
(肆296/図2・71)
  |其□[戸]給新吏 |
(肆293/図2・68)
  |其一戸給州卒 |
(肆294)/図2・69)
  |其三戸給□卒 |
 (原釋文は郵。おおざとは確認できるが左側が不明。郡の可能性あり(肆295/図2・70))
  |其二戸給縣卒 |
(肆297/図2・72)
  |其六戸給子弟限客 |
(肆298/図2・73)
  |其一戸佃帥 |
(肆272/図2・47)
  |其一戸給郵卒 |
(肆273/図2・48)
  定領應役|民廿九戸  | □□□ 
(役は原釋□、図版により役に修正)(伍2933/図17・61)
 |  |[魁]廖□[主]
(伍2918/図17・46)
梨下里の簡に続いて、五唐里,東㚘里,曼溲里,小赤里,緒中里,平甿里の順に各戸,戸の集計と里の集計の諸簡が並び、最後に中郷全体の集計簡が置かれる。

集凡中鄕領吏民三百卌九戸口食二千七十一人
(肆899)(原釋一千、図版により二千に改める)
郷の集計簡は、この一簡しか残存していない。本来は【六年廣成郷簿】【六年小武陵郷簿】に同じく、里の集計同様に男女別集計、吏卒や特定の徭役についている者の集計や、徴発対象となる戸の集計が存在したと考えられる。
⑤特徴 
 里の集計に、死者数の集計(肆655)と前年の口数から死者数を除して現在の口数を確定する集計(肆574,654)を有する。また、吏・卒・現在徴発されている者のいる戸、貧困や女戸であるなどの理由から徴発対象とならない戸を集計し、徴発対象となる戸の数を確定する集計を有する。この二点の特徴から、「徴発対象戸集計型」(鷲尾祐子2021)の簿であることが明かである。
 この類型の簿であるため、年齢は前年度のものであると考えられる。
 奴婢(肆570,伍2807など)の記載あり。死・物故の記載あり(肆230,肆334,肆367など)。1歳児が記述されている(肆356,肆518,肆775,伍2472,伍2568,伍2592)。
 一戸あたり平均口数は、郷の集計(肆899)によれば5.93。里の集計からは、五唐里5.78、東㚘里5.04、曼溲里5.14と算出されるが、小赤里は8.7と突出して多い。
 訾として記載される資産水準が書かれている例は少ない。また「50」のみ。
 吏・卒・特定徭役について項目別の集計が存在するが、戸人・戸成員の記述にこれらが記載されている例は、非常に少ない。
⑥備考・研究 楊芬2011・鷲尾祐子2021。
【四年廣成郷簿】(【吏民簿6】)
「竹簡肆」嘉禾四年廣成郷吏民簿

a嘉禾四年平樂里戸人公乘李|客年卅三筭一 |
(肆2495/図10・44)
b 〼  |客妻□年卅三 |客子女西年十
(肆2484/図10・33)
c    右客口食四人| 〼 
(肆2501/図10・50)
a1 嘉禾四年廣成里戸人公乘周明年|卅五盲左目 |
(肆2016)
a2 嘉禾四年廣成里戸人公乘[利] 年|卅九刑右手 |
(肆2025)
a3 嘉禾四年廣成里戸人公乘朱萇|年六十六刑左足給亭復人 |
(雑→復 同じ人物が見える貳1773と照合し、図版により改める)(肆2042)
b   |{禾凡}妻大女監年卅  |{禾凡}子仕伍士年三歳
(肆2021)
c   右明家口食六人 |  |訾  五  十
(肆2049)
各戸の簿の冒頭に置かれる戸人簡aは、「嘉禾四年」で始まり、次いで里名・戸人・爵位(公乘)・姓名・年齢が記載される。障碍や疾病を有する場合、a1・a2・a3のように年齢のあとにそれが記載され、官吏・兵卒である場合や、特定の公的な役務に就いているなど、公的な職務を有する場合は、a3(亭復人)のようにさらにその後に就いている職務が記載される。bは戸人以外の戸の成員の簡である。成員は二名が連記される。他の成員との間の続柄(bの{禾凡}妻・{禾凡}子)、成人女性の場合は大女・男子のばあいは爵位(bの仕伍)、名前、年齢が記載される。cは戸の集計である。戸全体の口数が集計され(右某家口食×人)、訾(資産の水準を表す)が記載される。一部の簡には、「筭一」と付記され、その者が国家負担を課せられる対象であることを示す(a))。
①構成簡:全350点。「竹簡肆」示意図10・11(Ⅰc1③、Ⅰc1④ 発掘簡3盆)のほか、示意図外の3盆・5盆に見える。・示意図内に他の簿の簡が多く混入しており、示意図外についても散在しているため、この簿の構成簡については全簡の番号を列挙する。
2452,2453,2454,2455,2456,2457,2458,2459,2460,2461,2462,2463,2464,2465,2466,2467,
2468,2469,2470,2471,2472,2473,2474,2475,2476,2477,2478,2479,2480,2481,2482,2483,
2484,2485,2486,2487,2488,2489,2490,2491,2492,2493,2494,2495,2496,2497,2498,2499,
2500,2501,2502,2503,2504,2505,2506,2507,2508,2509,2510,2511,2512,2513,2514,2515,
2516,2517,2518,2519,2520,2521,2522,2523,2524,2525,2526,2529,2530,2532,2533,2534,
2535,2536,2537,2538,2539,2540,2541,2542,2543,2544,2548,2549,2550,2551,2552,2553,
2558,2559,2561,2563,2564,2567,2579,2580,2581,2582,2583,2589,2590,2595,2596,2598,
2599,2603,2604,2605,2606,2609,2610,2612,2614,2615,2616,2617,2618,2619,2620,2621,
2622,2623,2624,2625,2626,2627,2628,2629,2631,2632,2633,2634,2636,2637,2638,2639,
2640,2641,2642,2643,2644,2645,2646,2647,2648,2649,2650,2651,2652,2655,2656,2657,
2658,2659,2660,2661,2662,2663,2664,2665.2666,2667,2668,2669,2670,2671,2672,2673,
2674,2675,2676,2677,2678,2679,2680,2681,2682,2683,2684,2685,2686,2687,2688,2689,
2690,2691,2692,2693,2694,2695,2696,2697,2698,2699,2700,2701,2702,2703,2704,2705,
2706,2707,2708,2709,2710,2711,,2712,2713,2714,2715,2716,2717,2718,2719,2720,2721,
2722,2723,2724,1917,1918,1919,1923,1924,1925,1926,1927,1928,1929,1930,1932,1933,
1934,1935,1936,1937,1938,1939,1940,1941,1942,1963,1964,1965,1966,1967,1969,1971,
1972,1973,1974,1975,1978,1979,1982,1984,1988,1989,1991,1996,2001,2003,2006,2007,
2009,2012,2014,2015,2016,2017,2018,2019,2020,2021,2022,2023,2024,2025,2026,2027,
2028,2029,2030,2031,2032,2033,2034,2035,2036,2037,2038,2040,2041,2042,2043,2044,
2045,2046,2047,2048,2049,2050,2051,2052,2053,2054,2055,2056,2070,2071,2073,2075,
2076,2077,2078,2079,2080,2081,2082,2083,2091,2092,2093,2094,2096,2119,2120,2121,
5145,5146,5148,5150,5165,5166,5167,5169,5170,5171,5176,5178(2700・2711は甲乙)
②作成時期:嘉禾四年(戸人簡に嘉禾四年と見える)。
③記載対象:廣成郷所属の廣成里・平樂里の戸がみえる。相違する郷が混在している可能性がある。これら以外にも・これら以外にも漂里(2481)・新成(1963)・陽成(1965)が見えるが、写真からは里名が判読し難い。郷・里のどの範囲で作成されているのか不明である。
④把握可能人数:(性別と続柄・年齢が明らかな者)257人
⑤表題・集計と全体の構成
次の簡が表題であると考えられる。

〼嘉禾四年吏民□數人名年紀□簿
(肆2070)(後ろから二番目の文字不明、元釈は數だが、□とする。)
嘉禾四年作成の吏民の基本的な情報を記載した簿であると見える。
集計は残存していない。全体の構成も不明である。
⑥特徴:すべての簡で書式はほぼ統一されている(筭の有無についてはばらつきがある)。長さ・幅も同じくらいである。里の相違による差異が少ない。全体が同一の機関によって同時に作成されたものである可能性が高い。
嘉禾四年廣成里戸人[公乘]□重|年五十八 |
(肆2457)長さ24.0㎝、幅0.7㎝
嘉禾四年平樂里戸人公乘李|客年卅三筭一 |
(肆2495)長さ24.2、幅0.7㎝
 奴婢・客が見えず、1歳児が見えないが、折れていて不完全な簡が多いため、本来存在しなかったか否かは断定し難い。死・物故の記載が存在しないのは、類似する書式の嘉禾五年常遷里簿(【五年常遷里簿】参照)に同じである。鷲尾祐子2021で、全戸の情報を参照するための基本的な名簿として機能したものではないかと推測した。年齢は作成時点のものである。この書式については、鷲尾祐子2021参照。
⑦備考:チェック済みである旨を示す「中」字が朱で記載されている簡が34点存在する。戸の集計に多く見える。
右柳家口食五人|  中  |訾  五  十
(肆2656)
【五年常遷里簿】
「竹簡柒」嘉禾五年常遷里吏民簿

a嘉禾五年常遷里戸人公|乘劉諒年卅一筭一聾耳|
(柒928/図8・125)
   |[諒]妻大女汝年廿五筭一 |
(柒927/図8・124)
   |諒母[鼠](?)年六十 |
(柒942/図8・139)
   |諒子男[分]年一歳 |
(柒1018/図8・215)
  凡 口 五 人 |  |訾  五  十
(柒816/図8・13)

b常遷里戸人公乘陳丞年|六十四踵兩足 |
(柒1010/図8・207)
   |丞子男{工員}年廿八筭一 |
(柒951/図8・148)
   |丞男姪欽年一歳 |
(柒992/図8・189)
   |丞男弟氣年卌五新盲|□目 □兩?足
(柒1006/図8・203)(柒5306を参照し九→五に改める 下段□兩?足は原釋には無く、図版によって付加)
   |氣妻愁年卅五  筭一 |
(柒985/図8・182)
   |氣男姪張光年九歳 |
(柒1007/図8・204)
   |氣男姪{去司}年十四 | 苦[腫]病
(柒1032/図8・229)
   |氣男[姪随]年七歳 |
(柒1038/図8・235)柒5242参照→原釋{⻖隻}→随)
右丞家口食十五人|筭二  |訾  五  十
(柒963/図8・160)
c凡 口 九 人 | |訾  五  十
(柒853/8・50)
 戸人簡は「嘉禾五年常遷里戸人爵位(公乘)」で開始(bのように嘉禾五年が付さないものが全戸人簡44点中2点あり)、姓名・年齢・傷病の記載(該当者のみ)が続く。成員の簡は続柄(記載しない場合もある。柒1021など)、名前・年齢・筭一(該当者のみ)・傷病(該当者のみ)が記載される。成人女性の場合は大女が記載されることが多い(例外は柒1135・1138など)。
 戸人簡・成員簡どちらも一枚に一人を記す。
 戸の集計は「凡口×人」で開始、口数と訾を記載するものが大半である(口数が明かな集計38件のうち、21件)。この基本的な以外に、これに筭を加えたもの(柒854等)、筭も訾も記載せず口数のみのもの(柒935)、右某家口食×人ではじまり訾を記載するもの(柒960・963)がある。
① 構成簡:合計397点。「竹簡柒」示意図8(坨はⅡb㉚、発掘簡16盆)の諸簡(書式の相違する855・1181・1197、長さが相違する(24.5㎝)829を除外する)。さらに示意図外の1342・1361・3374。
② 作成時期:嘉禾五年。鷲尾祐子2021参照。
③ 記載対象:都郷常遷里。常遷里が都郷であることは、連先用2018参照。
④ 把握可能人数(性別年齢が明かな者):334人。総口数の約八割。「竹簡柒」「竹簡捌」嘉禾六年都郷簿(連先用2018・鷲尾祐子2020a)によれば、常遷里の口数は421人(柒5454)。
⑤表題・集計と全体の構成:表題・里の集計と考えられる簡は未見。
全体的に書式が統一されており、表記のゆれは少ない。
⑥特徴・簿の類別:鷲尾祐子2021で、全戸の情報を参照するための基本的な名簿として機能したものではないかと推測した。年齢は作成時点のものであり、一歳児を記載する。奴婢は見えない。また、物故の記載も無い。
参考文献
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鷲尾祐子2020a「走馬楼呉簡吏民簿の編製時期について」伊藤敏雄・關尾史郎編『後漢魏晋簡牘の世界』汲古書院
鷲尾祐子2020b「徭役を負担する戸の集計―走馬楼呉簡家族名簿の「定領役民」と「定應役民」は同じか異なるか」東京外国語大学アジアアフリカ研究所研究課題「中国古代簡牘の横断領域的研究」ホームページ http://www.aa.tufs.ac.jp/users/Ejina/note/note26(Washio).html  2020年4月6日入稿
鷲尾祐子2021、顧源訳「走马楼吴简吏民簿诸类型比较研究」《中國中古史研究(吳簡專號)》第9卷、上海中西書局、pp.175-211、2021年12月刊行→改訂日本語版「走馬楼呉簡吏民簿諸類型の比較検討」東京外国語大学アジアアフリカ研究所研究課題「中国古代簡牘の横断領域的研究」ホームページ 2022年8月30日入稿http://www.aa.tufs.ac.jp/users/Ejina/note/note45(Washio).html
鷲尾祐子2022「三世紀長沙における女性のライフサイクル」女性史総合研究会217回例会、2022年12月18日発表
付記:以下の簡についても【六年小武陵郷簿】の構成簡である可能性が高い。
「竹簡陸」示意図7(坨はⅡa㉓)
(250,251,252,253,254,255,256,257,258,259,260,261,262,267,268,269,270, 271,272,273,274,275,276,277,278,279,280,281,282,283,284,285,286.287,288)
「竹簡陸」示意図8(291 Ⅱa㉔ )
「竹簡陸」示意図9(296,300 Ⅱa㉕)
ただし、鷲尾祐子2022ではこれらの簡を構成簡として扱っていないため、本稿の【六年小武陵郷簿】でも除外している。後日改めて修正したい。

編集者注記:2023年10月08日入稿