1. 研修の概要 詳細
- ○研修期間:
- 2021年8月23日(月)~2021年9月17日(金)
- 午前10時00分 ~ 午後4時30分(土曜日,日曜日は休講 )
- ○研修時間:
- 100時間
- ○研修会場:
- 大阪大学箕面キャンパス外国学研究講義棟(519 教室)
- (〒562-8678 大阪府箕面市船場東3丁目5−10)
本研修は 2021年8月23日(月)から 2021年9月17日(金)までの 20日間,1日あたり5時間,合計100時間実施した。
会場は,大阪大学箕面キャンパス外国学研究講義棟(519 教室)を利用した。
2. 講師 詳細
- ○主任講師:
- 清水 政明(しみず まさあき)大阪大学 教授
- ○講師:
- 近藤 美佳(こんどう みか)大阪大学 助教
- ○ネイティブ講師:
- Nguyen Thi Phuong Lan (グェン ティ フオン ラン):Global EHD 株式会社 取締役
- 内田 トラム(うちだ とらむ)
- 文化講演者:
- 伊澤 亮介(滋賀短期大学 講師),坂川 直也(京都大学 連携研究員),平野 綾香(大阪大学 特任研究員)
3. 教材 詳細
- 『ベトナム語語彙集』(清水 政明,平野 綾香,近藤 美佳 著)
- 『ベトナム語文法』(清水 政明,Nguyeችn Thị Phương Lan,Phạm Phi Hải Yeቷn 著)
- 『ベトナム語会話』(近藤 美佳,内田 トラム 著)
『ベトナム語文法』では,文の基本構造を最初に示した上で,その構成要素を一つずつ分解して順次学ぶ形の構成にした。孤立語の場合,文の機能的側面を中心に据えた教科書が多い中,本書は,常に文の構造を学習者に意識させ,その定着と正確な理解・アウトプットを目指したものとなっている。
『ベトナム語語彙集』では,漢越語に対応する漢字の表記に加え,『ベトナム語文法』で示した品詞分類に従って個々の語彙に品詞を付すことにより,学習者の理解と正確な使用に資することを目指した。
『ベトナム語会話』は,学んだ基本構文をベースに,例示されたスキットに基づいて学習者自身がそれぞれの場面設定で会話文を作成,発話練習ができるよう工夫されている。
4. 受講生詳細 詳細
大学生3名,大学関係者(研究者)1名,日本語教育関係者1名の合計5名であった。学習動機は,研究調査での使用(2名),ベトナム人日本語学習者への日本語教育(1名),身近なベトナム人とのコミュニケーション(2名)と多様であった。社会人の場合,仕事との兼ね合いによる欠席,大学生の場合,コロナワクチン接種等による欠席が数回あったが,出席状況は極めて良好で,受講者5名全員が修了証を受理するに至った。
5. 文化講演 詳細
- 2021年8月27日(金)5時限
- 講演者:伊澤 亮介
- ベトナムの民族文字チュノムとチュノム文学に関する講義が行われた。発音編を終えたばかりの受講者が,有名な『金雲翹』の「六八体」で書かれた韻文の一節を朗読練習することができ,好評であった。
- 2021年9月3日 5時限
- 講演者:平野 綾香
- ベトナムの少数民族ヌン族のことばに関する紹介があった。ヌン族の言語使用状況とベトナム語とのバイリンガルの実態がビデオ等を用いて紹介され,講義の後には活発な質疑応答がなされた。
- 2021年9月10日 4・5時限
- 講演者:坂川 直也
- 「ベトナム映画の過去と現在」が行われ,ベトナム映画の歴史を通じて現代史を概観することができた。また,今後中級レベルに進む上で役に立ちそうなお勧めの映画が,その中で話される方言の特徴とともに紹介され,非常に好評であった。いずれの内容もベトナム語学習にうまく関連づけられており,言語研修のための文化講義として工夫された優れた内容であった。
6. 授業 詳細
基本的に日本人講師による説明とネイティブ講師による発音・会話練習という形で進められた。特に発音の習得と矯正に際しては,ネイティブ講師の熱意と根気強さに支えられた部分が大きかった。
第1週目では,まず『ベトナム語文法』「発音編」に沿ってローマ字正書法の個々の字母と発音の対応関係を理解した上で,発音練習を行った。次いで「文法編」に沿って,テキスト内で利用する品詞の体系と基本語順を理解し,待遇表現の基礎となる人称代名詞の用法と教室内表現を含む基本会話の表現,名詞述語文と動詞・形容詞述語文を含む基本構文をネイティブ講師とのやり取りを通じて習得した。
第2週目には,基本語順の項で示したベトナム語の文の基本構造を,文頭・文末助詞,名詞句,動詞句,副詞,前置詞句,文を修飾する要素に分解し,個々の要素に属する表現を,例文を用いてネイティブ講師とのやり取りの中で定着させていった。個々の例文を理解する際には,常に文の基本構造に立ち戻り,その構成要素と配列の順番を意識するよう心掛けた。単文の構造が定着した段階で,接続詞と接続表現を用いた複文の構造を例文に基づいて理解し,ネイティブ講師が随時作成する簡単なスキットを用いて役割練習を行った。
第3・4週目には,スキットの役割練習の延長として,『ベトナム語会話』の内容に沿って,設定された 8 場面のモデルスキットを原則 1 日 1 場面のペースで学習した。まずモデルスキットの内容を個々の文の構造を復習しつつ理解し,基本的にスキット内容に沿う形で各自の実際に即したスキットを自分で作成,ペアを組んで役割練習するという形で授業が進められた。最終日午後には,各自が作成したスピーチ原稿を発表し,それに対し講師がコメントする形でプログラムが閉じられた。
7. 研修の成果と課題 詳細
初級学習の要となる発音習得に関しては,習得の速度に個人差は見られたものの,最終的に当初の目標通り,正書法の体系的理解とその正確な発音が可能となった。プログラムの構成として,第 1・2 週がベトナム語の文の基本構造の理解と習得,第 3・4 週がそのアウトプットとしての練習と位置づけられるが,第 3・4 週のスキット文の理解に際しては,第 1・2 週で学んだ文の構造的理解の習慣が受講者各自の中に定着していることを十分確認することができた。また,ネイティブ講師との授業内でのやり取りや,課外練習としてのメールのやり取りの中で,正確な文のアウトプットのみならず,待遇表現に対する意識も定着していることを確認することができた。概して,本プログラムが目指した正確な発音の習得,文の構造的理解,文の基本構造と待遇表現を意識した正確なアウトプットの習慣が十分習得されたものと判断する。また,現在の習得度を基礎に中級レベルにスムーズに移行することが可能であると考える。
8. おわりに 詳細
まず,コロナ禍という未経験の状況の中で,対面でのプログラム遂行の場を提供された大阪大学箕面新キャンパス関係者各位に謝意を表したい。また,フェイスシールドやマスクを装着した講師による説明や会話練習,受講者同士の物理的距離を確保しながら行われた役割練習に,愚痴一つこぼすことなく,笑いの絶えない楽しい雰囲気の中でプログラムに参加された受講者の皆さんに最大限の敬意と謝意を表したい。特にコロナ禍という特殊な状況の下で,普段以上に多忙を極めながら参加された社会人の受講者には講師陣自身学ぶところが大であった。重ねて謝意を表したい。最後に,コロナ禍の下,本プログラム実行を勇断され,講師の愚問に終始お付き合い頂いた主催者スタッフ各位にはいくら感謝してもしきれない。
Copyright © 2010 Research Institute for Languages and Cultures of Asia and Africa. All Rights Reserved.