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Dzongkha

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研修期間
2019年8月19日(月)~2019年9月6日(金)
午前10時00分 ~ 午後4時30分(土曜日,日曜日は休講)

研修時間
75時間

研修会場
東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所
(〒183-8534 東京都府中市朝日町3-11-1)

講師
西田文信(にしだ ふみのぶ)東北大学高度教養教育・学生支援機構准教授
秋田大学国際交流センター准教授,岩手大学人文社会科学部准教授などを経て2017年4月より現職。
スイス・ベルン大学言語学研究所の客員研究員も務める.主にシナ=チベット語族の諸言語について研究。
ネイティブ講師:
NAMGAY THINLEY(なむげ てぃんれー)ブータン王国ゾンカ語開発委員会 Chief programme officer
Sherubtse College(B.A.in Economics)卒業後,La Trobe大学大学院にて学ぶ(M.A.in Linguistics取得)。
主にゾンカ語のIT化,辞典編纂,言語政策等について調査研究を行っている。

受講料
45,000円(教材費込み)

教材
『ゾンカ語文法』(西田文信、NAMGAY THINLEY 著)
『ゾンカ語表現集』(西田文信 著)(1MB)
『ゾンカ語基礎語彙集』(西田文信 著)(1.1MB)

文化講演
  • 日時:2019年8月23日(金)14:20–16:30
  • 使用言語:日本語
  • 講演者:松島 憲一(信州大学農学部准教授)
    題目「ブータン王国の食用野生植物利用」
  • 日時:2019年8月30日(金)14:20–16:30
  • 使用言語:日本語
  • 講演者:山名 訓(GHNトラベル&サービス代表取締役)
    題目「“チャム”から見るブータンの伝統芸能」

講師報告

1. 研修の概要 詳細

○研修期間:
2019年8月19日(月)~2019年9月6日(金)
午前10時00分 ~ 午後4時30分(土曜日,日曜日は休講 )
○研修時間:
75時間
○研修会場:
東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所

本研修は2019年8月19日(月)から2019年9月6日(金)までの15日間、1日あたり5時間、合計75時間実施した。
会場は,東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所マルチメディアセミナー室(306)を利用した。

2. 講師 詳細

○主任講師:
西田文信(にしだ ふみのぶ)東北大学高度教養教育・学生支援機構准教授
○ネイティブ講師:
NAMGAY THINLEY(なむげ てぃんれー)ブータン王国ゾンカ語開発委員会 Chief programme officer
文化講演者:
松島 憲一(信州大学農学部准教授),山名 訓(GHNトラベル&サービス代表取締役)

3. 教材 詳細

  1. 『ゾンカ語文法』(西田文信、NAMGAY THINLEY 著)
  2. 『ゾンカ語表現集』(西田文信 著)
  3. 『ゾンカ語基礎語彙集』(西田文信 著)

①はゾンカ語の音韻・文法・文字の輪郭を把握できるよう編まれたものである。授業での利用を想定して準備された。
②はゾンカ語の意味別分類語彙と日常会話から構成されており、頻度の高い表現をまとめたものである。主にネイティブ講師が発音・会話練習で使用する目的で準備したが、日本人講師による文法の解説も交えて教授することを想定して作成した。
③はゾンカ語の基礎語彙集であるが、ゾンカ語の字母順に配列し、標準的な綴りと発音を提示するようにし、ゾンカ語話者の文化的基盤となる仏教関連用語を多く取り上げるようにした。
いずれも各形態素ごとに複数の母語話者による発音及びスペリングのチェックを行った上で記述した。

4. 受講生詳細 詳細

受講生は本学学部生2名、本学学部卒業生1名、他大学学部生1名、他大学学部卒業生1名、本学院生1名、他大学院生1名、大学教員1名、一般社会人2名の計10名であった(うち男性7名、女性3名)。言語学・人類学・文学の大学院生、大学院進学希望の学部卒業生・学部生、文学専攻の教員、多言語学習を実践されている社会人の方々という面々であった。シナ=チベット言語学の研究のため、ヒマラヤ地域のフィールドワークで用いたいため、ゾンカ語文学の可能性の探求のため、これまでに学習したことのない語族や類型をもつ言語を学ぶため等々各種各様の受講動機があった。受講動機が明確であるため学習態度は申し分なく、出席状況及び授業への参加度は頗るよく、お一方がよんどころのないで理由数日欠席された以外は、皆ほぼ皆勤賞であった。全ての受講生が修了したのは本当に喜ばしいことであった。

5. 文化講演 詳細

8月23日(金):「ブータン王国の食用野生植物利用」
講演者:松島 憲一(信州大学農学部准教授)
植物遺伝育種学及び民族植物学がご専門の松島先生からは「ブータンの食用野生植物利用」と題してお話しいただいた。ブータンは低緯度高標高地域であることから幅広い生物多様性や階層的な作付け分布が見られフィールドとしては格好の場であること、所謂照葉樹林文化について再検討が求められること、食用野生植物としてはブータンでは多くのシダ植物の若い葉や種子植物の葉、花、果実、根などが利用されること、自身の調査方法、調査結果を踏まえて最後に山菜と森林とGNHの関係について詳細に解説していただいた。平素この分野に触れることが少ない講師・受講生にとって、ブータンの生物多様性と伝統的な知恵について改めて再認識させられた。本学教員も3名参加した。

8月30日(金):「“チャム”から見るブータンの伝統芸能」
講演者:山名 訓(GHNトラベル&サービス代表取締役)
チベット文化圏全域への現地体験をおもちで各地の伝統芸能に精通しておられる山名氏からは「「チャム」から見るブータンの伝統芸能」と題してお話しいただいた。ブータンの概説的な導入の後、「チャム」は8世紀にグルリンポチェからブータンに伝えられたこと、中央ブータンのブムタンにあるクジェラカンに来た際に当時のブムタンの王様がグルリンポチェの化身が躍った踊りを受けついでいったこと、15世紀にペマ・リンパが新しい舞いを伝えたこと、17世紀にブータン統一の祖シャブドゥン・ンガワン・ナムギャルがドゥク派オリジナルの舞踊を導入し、同時にブータンの統治システムや独自の文化を導入し、「ブータン」という国の基が出来たこと、1907年に今のワンチュク王家がブータンにおける「チャム」はますます発展していくことになったことなど、歴史的な経緯とともに現在における継承の現状について、現地の映像を交えながら実証的にお話しくださった。 外部講師のお二方はともに講演経験が豊富で、2時間があっという間に過ぎ去り、質疑応答が活発になされ、受講生は皆大いなる刺激を受けゾンカ語学習への意欲はさらに高まっていったようであった。

6. 授業 詳細

1週目はゾンカ語の概論的な授業を行った。正確な発音の習得を心掛け、子音では有気音・無気音の対立、反舌音、母音ではウムラウト記号を付けた3つの音、また共鳴音における高低の対立に注意しながら授業を進めた。基本語順を提示した後、名詞や代名詞、後置詞を提示した。述語動詞の基本用法についても練習した。文字の導入も行った。
2週目はまだ苦手な発音を復習しつつ、長めの文を音読する練習を行った。述語動詞の様々な用法、現在形の言い方、形容詞の用法に触れ、数詞や時間表現をかなり詳しく練習した。
3週目は関係代名詞、テンスやアスペクト、命令形や条件法、敬語など更なる文法表現を学習した。文字に関しては、複合的なスペリングと発音との関係、楷書に当たるツイ体のみならず草書に当たるジョイ体も学習した。
授業では、主に午前中に音読して訳してもらうなどの練習問題も踏まえながら文法の説明を行い、午後は既習の文法項目を用いた会話表現やその発展の会話練習を実施した。
最終日は講師が準備したかなり長い文章の解読と各自のテーマでゾンカ語による作文練習を行った。受講生全員が熱心に取り組んだ結果の作文は力作揃いで、またかなり長いまとまった文章を読めるようになったことで、3週間の学習の総まとめとなった。

7. 研修の成果と課題 詳細

ゾンカ語は実際の発音とスペリングの乖離、述語動詞の複雑さ、ネイティブ言語としてのゾンカ語と国語としてのゾンカ語との言語的な差異等により言語教材の作成に困難を伴った。しかしながら、研修中に受講生との議論を重ねることによって明確となった文法現象も少なくない。受講生と一緒にゾンカ語について考える作業ができたのが本研修の一番の成果であったと先ず申し上げたい。
発音に関しては標準的なものを皆習得した。語彙に関しては単語カードを作成して毎日復習している方も複数いて、頭の下がる思いであった。文法に関しては基礎的なものから複雑なものもすべて提示したが、言語の仕組みを詳しく説明することで理解が得られたと考える。
3週間という期間で、しかもお一方を除いてチベット系言語の既修者がいなかったにも関わらずかくもスムーズに本研修を終えることができたのは、受講生が皆複数の言語の学習歴があり、言語を学習するということをよく理解されていたからであると思う。読み書き聴き話すという4技能すべてにわたり触れようと思い少々盛り込みすぎの感は否めないが、受講生の方々の高い言語能力に支えられて、正しい発音を習得する、基礎語彙を覚える、基本文法はすべて終える、ブータンに関する理解を深める、という当初の目標は達成できたと考える。
授業中はゾンカ語のみならず、ブータンな様々な側面、他のチベット文化圏との共通点や相違点、ゾンカ語の言語学的特徴、等々受講生の興味関心になるべく答えるように努力したつもりである。ナムゲ講師もその期待に応え、受講生の多種多様な質問には真摯に答え、ゾンカ語のみならず幅広くブータン文化に触れることができたのは大きな収穫であったといえよう。

8. おわりに 詳細

修了式でも申し上げましたが、受講生の方々には感謝しかございません。短い期間ではありますが、個性豊かな、類稀にみる才能をおもちの皆さんと時間と空間を共有することができましたことを心から嬉しく思います。新しい外国語を学ぶ歓び、志を同じくする方々と切磋琢磨する愉しみを改めて実感することができました。文化講演をお引き受けくださった松島先生と山名先生には、ご多忙中にも関わらず周到に準備された資料に基づき素晴らしいご講演をして頂きましたことに対して改めまして感謝申し上げます。ネイティブ講師のナムゲ先生には期間中はもちろんのこと、実施計画の段階から非常にお世話になりました。望みうる最高の講師であるナムゲ先生とご一緒に講師を務めることができまして、本当に良かったと思います。最後になりましたが、本研修実施に際してご尽力くださいました星所長・塩原研修委員長・呉人委員をはじめとする研修専門委員会の先生方、教材作成やナムゲ先生招聘に関してお世話になりました梅山様をはじめとする共同研究拠点係の皆様へ心からの謝意を表したく存じます。Namesame Kadrinche la!(どうもありがとうございました!)

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