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Cham

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チャム語授業風景
研修期間
2014年8月4日(月)~ 2014年9月12日(金)
午前10時00分 ~ 午後4時30分(土曜日・日曜日,8月11日~15日, 9月4日~5日,9月9日は休講)
ただし,8月8日,22日,29日,9月2日,12日は午後5時40分まで

研修時間
115時間

研修会場
東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所
(〒183-8534 東京都府中市朝日町3-11-1)

講師
新江利彦(AA研フェロー)
チュオンヴァンモン(張文門)・サカヤー(ベトナム国家大学ホーチミンシティー人文社会科学大学人類学科専任講師)

受講料
69,000円(教材費込み)

教材
『チャム語教程 Text for Cham language』(Sakaya, 新江利彦)(5.1MB)  正誤表(128KB)
『チャム語語彙集Cham-Vietnamese-English-Japanese Vocabulary 』(Sakaya, 新江利彦)(7.6MB)

講師報告

1. 研修の概要 詳細

○研修期間:2014年8月4日(月)~ 2014年9月12日(金)(土曜日・日曜日,8月11日~15日, 9月4日~5日,9月9日は休講)
○研修時間:115時間
○研修会場:東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所

本研修は2014年8月4日(月)~ 2014年9月12日(金)までの22日間,1日あたり5時間(午前2時間,午後3時間),ただし,8月8日,22日,29日,9月2日,12日は1日あたり6時間(午前2時間,午後4時間)の合計115時間実施した。
会場は,アジア・アフリカ言語文化研究所マルチメディア会議室(304)を利用した。

1. 会場設備は,映写機,スクリーン,3つのホワイトボード,十分な数のホワイトボード用マーカー,延長電源コード等,PCと映写機の接続ケーブル,PC用拡声器,ポインタ等完備しており,完璧であった。副教材の複写や単語カード作成のための画用紙手配等についても,AA研事務局から必要かつ十分な支援が得られた。会場としては本郷のサテライトオフィスも魅力的であったが,府中市朝日町のAA研ではなく本郷のサテライトオフィスで授業を行った場合,このような万全な支援体制を得ることは難しいだろうと思った。

2. 研修期間を8月の第一月曜日から9月中旬の金曜日としたことは適切であった。この時期にしたことで,7月末に音声教材を作成・録音することが可能になった。授業開始までに教科書,教案,音声教材が完成しており,授業を滞りなく進めることができた。とはいえ,実施中に新たに教案・教材を作成する時間は,極めて限られた。週5日ではなく4日とし,1日5時間ではなく4時間とし,8月中旬の盆休み以外の休日を減らし,全24日96時間+文化講演4時間=計100時間で行うのが適切であったと反省した。

3. 「チャム語語彙集」の完成・配布が実施中に間に合わなかったことを反省した。

4. 9月12日の午前中2時間,チャム語が属するオーストロネシア語に関するAA研セミナーへの参加をもって授業への参加・出席とした。受講者の多くは言語学全般への関心が大変高く,講師として事前にAA研セミナーについて情報を収集し,100時間中5時間ぐらいの範囲内で,こうしたセミナー参加の出席への読み替えを行うこともよいのではないか。

2. 講師 詳細

○主任講師:新江利彦(AA研フェロー)
○外国人講師:チュオンヴァンモン(張文門)・サカヤー(ベトナム国家大学ホーチミンシティー人文社会科学大学人類学科専任講師)
文化講演者:
中村理恵(Visiting Lecturer, Universiti Utara Malaysia)
遠藤正之(立教大学アジア文化研究所特任研究員)
本多守 (東洋大学アジア文化研究所客員研究員)

1. 主任講師,外国人講師共に男性であったので,会話練習上の困難があった。『チャム語教程』音声教材作成における協力者(女性,埼玉県在住)の講師・会話練習補助者としての参加について,AA研担当教職員に検討を依頼すべきであったと反省した。

3. 教材 詳細

『チャム語教程 Text for Cham language』(Sakaya, 新江利彦)
『チャム語語彙集Cham-Vietnamese-English-Japanese Vocabulary 』(Sakaya, 新江利彦)

1. 教材の内容,作成に際し工夫した点
・初級会話教材であり,かつ文献講読のための基礎学習教材という,二つの異なる機能を兼ね備えた教科書になるよう工夫した。具体的には,二つの近世説話「タバイ王と象牙姫の物語」,「石榴皇子の物語」を教科書修了後の講読教材として準備し(ローマ字転写及び注釈),会話の中にこれらの説話の頻出単語を入れることで,講読への移行を円滑にした。この件に関しては,AA研経費で実施した研修事前調査において,チャム語と同系統の言語・文字体系であるジャウィーやカウィー(古ジャワ語)文献に関する,インドネシア国立図書館,ガジャマダ大学,ウダヤナ大学,グドンキルティア文書館の司書,教員,文書士からの情報提供・意見交換によるところが大きい。
・会話部分は,男女の掛け合いの会話になるよう工夫した。
・大チャンパー史観にも衰退史観にも組しない客観的な歴史観に触れられるよう留意した。
・課ごとに大判の単語カード(1枚のA4画用紙から4枚を切り取り)を作成し,新出単語の導入や,受講者の自学自習の助けとした。

2. これまでの同言語教材のなかでの本教材の位置づけ
・日本ではすでに1960年代に川本邦衛氏による『チャム語階梯』が作成されていたが,川本氏が控えを持っておらず参照できなかったのは残念である。
・ベトナム国内ではチャム文字の綴り方の改正・改悪にかんする非常に政治的で微妙な論議があって,膨大なチャム文字文献講読のための基礎学習教材は,本『チャム語教程』のベトナム語版を除き,いまだ存在しない。『チャム語教程』は建前は文字と会話練習を主眼とするが,会話例など全てはその後の文献講読のために選ばれたもので,日本で二番目に作成された文字・会話教材でありかつ最初に作成された文献講読のための基礎学習教材である。
・今後,初級会話教材の機能と文献講読のための基礎学習教材の機能を分け,文献講読のための基礎学習に特化した教材をつくりたいと考える。

4. 受講生詳細 詳細

1. 受講生の構成・人数・受講動機
・受講者は全6名(男性4名,女性2名),うち学部生1名,大学院生3名,社会人2名であった。学部生(男性)はマレー語専攻者でありマレー語近縁言語としてのチャム語に関心を持っていた。大学院生3名のうち2名(男女1名ずつ)は東南アジア碑文言語の1つとしてのチャム語に関心を持ち,1名(男性)はインド・サンスクリット文化圏に属する非アーリア系言語としてのチャム語に関心を持っていた。社会人2人(男女1名ずつ)はいずれも東南アジア言語またはムスリム言語を体系的かつ広範に学ぶAA研夏季言語研修の常連受講者であった。主な動機は学習と研究である。チャム人地域では2020年にニントゥアン第二原子力発電所建設を着工すべく両国で準備中であるが,現実のチャム人社会に対する社会学的・人類学的・経済学的アプローチや,チャム人地域での勤務等に関心のあるものは今回の受講者にはいなかった。

2. 出席状況や修了人数
・学部生1名と大学院生2名は9月3日以降すべて欠席した。
・1名は8月中は病欠が多いながらも『チャム語教程』学習中は出席していたが,9月はじめに文献講読に移行してからは全て欠席した。
・東南アジア碑文言語の1つとしてのチャム語に関心を持つ大学院生2名は9月4日よりフィールドトリップがあり,欠席せざるを得なかった。
・1名は出席日数が足りず評価できなかった。それ以外の5名は全て優秀な成績で修了した。

5. 文化講演 詳細

1. 予定していた文化講演者のうち,女性1名の講演がお子さんの健康の都合で中止となったことは残念であった。

2. 毎週金曜最終時限に実施後,講演者を交えた懇親会を行うことで,受講者と講演者の交流が実現すると共に,主任講師・外国人講師と受講者も親しむ時間を持つことができてよかった。

3. 3人の文化講演者の発表はいずれもよく準備されたすばらしいものであった。本多守氏のみ公開講座としたが,当初より全て公開講座として事前通知すべきだったと反省した。

6. 授業 詳細

・予習,復習は授業中に行うこととし,宿題を課さなかった。
・受講者同士で単語学習や会話練習を行う時間を十分に取った。
・外国人講師による単語発音や会話見本を行うことを徹底し,また音声教材を活用して(授業中も使用),ネイティブの発音をしっかり身につけさせる。
・講師は単語発音や会話見本や文法説明のほかは喋らないよう努力する。
・80時間で文字と会話13課を学び,25時間で最後の2課と教科書にない説話(石榴皇子の物語)を読んだ。
・文字と会話学習においては,サバイバル会話及び前課の新出単語・文法・文例の復習(新しい課のはじまり)→新出単語・新出文法・新出文型→会話練習→定着練習→課題小テスト→講評(その課の最終時限)というサイクルを,ほぼ2日に1サイクル実施した。

7. 授業 詳細

1. 成果
・教科書の内容をすべて修了した。
・説話二本を読了した。

2. 課題 ・閉講・修了に先立ち,5名の受講修了者全員に,フランス極東学院作成の「チャム写本集成デジタルバージョン」全編と,東京外国語大学作成「チャム王家文書デジタルバージョン」全編を提供したが,「チャム語語彙集」を同時に提供できず,自学自習が困難な状態にある。
・実施中に「チャム語教程」の誤字脱字が複数個所新たに判明し,正誤表を拡充した上で,URL上で公表する必要がある。
・「チャム語語彙集」を修了者に提供する必要がある。

8. おわりに 詳細

1. 研修を終えての感想
・今回の研修で一番良くチャム語を勉強したのは(勉強できたのは)わたくしたち二人の著者ではなかったかと思います。
・優秀で熱心な受講者のみなさんと楽しく勉強できました。
・社会人のお二人が作成した「東南アジア言語基本語彙対照表」と「チャム語基本文法集」は本研修のすばらしい副産物です。ぜひ,それぞれのURLで公開なさってください。

2. 教材作成に際してお世話になった方々への謝辞
・インドネシアとベトナムのすべての友人
・インドネシア国立図書館,ガジャマダ大学,ウダヤナ大学,グドンキルティア文書館の司書,教員,文書士のみなさん,ブリタ書店のおやじさん
・京都大学東南アジア研究所ジャカルタ連絡事務所のみなさん
・フランス極東学院ジャカルタ・センターのみなさん
・フランス極東学院クアラルンプール・センターのみなさん
・ベトナムのチャムの村のみなさん
・ベトナムのニントゥアン省文化体育観光局,ビントゥアン省文化体育観光局,ユネスコ・チャム文化研究保存センターのみなさん
・音声教材作成協力者のかた
・音声教材作成スタジオのかた
・教材印刷出版社のかた
・AA研所長ならびに教職員のみなさん
・受講者のみなさん,
ありがとうございました。

3. おわび
 本実施報告書ならびに「チャム語語彙集」の提出が10月9日の締め切りより大幅に遅れましたことをお詫び申し上げます。

(新江利彦)

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