1. 期間と時間 詳細
パンジャービー語研修は,2009年8月3日から9月4日までの,5週間(土日は休講)にわたって行われた。 毎日5時間の授業(午前中は2時間,午後は3時間)で, 合計125時間の研修である。会場として, AA研のマルチメディア会議室を使ったが,8月の12日から14日までの3日間は, 大学が一斉休暇に入ったため, 府中市生涯学習センターで授業を行なった。
2. 講師 詳細
研修は全日程,すべての時間を通じてネイティヴ講師と日本人講師とがペアを組んで担当した。 グルムキー文字を用いた授業期間はジャティンダル パール スィング ジョーリーと岡口,シャームキー文字を用いた 授業期間はリハナ サヒと萩田が,主に担当した。
3. 受講生 詳細
受講生は7名(大学生3名,大学院生2名,研究生1名,インド関連の自営業に携わる社会人1名)であった。 大学生の3名は東京外国語大学からの単位履修生である。 最後までひとりも欠けることなく出席し,全員が修了した。
4. 文化講演 詳細
文化講演は8月7日,8月21日,8月28日の3回にわたって行われた。
8月7日
講演者 関口真理 講演題目 India Abroad / Punjab Abroad
在外パンジャーブ人の歴史,パンジャービー・コミュニティーの現在についての概論を, サブカルチャーに現れた映像資料も交えて展開していただいた。8月21日
講演者 鴨沢麻衣子 講演題目 植民地期パンジャーブ農村部からの海外移民の送り出し要因の再検討
インドのパンジャーブ州のドーアーバー地方における移民の伝統について,その萌芽と 現在に至るまでの社会・経済的背景について資料に基づく分析を報告していただいた。8月28日
講演者 小出拓己 講演題目 パーキスターンのパンジャーブ州における識字教育
JICA派遣のパーキスターン政府職員として7年以上にわたり識字教育の現場で体験した現状報告。 国語や母語の識字教育における政府と各種教育機関との関係や問題点,今後の展望などについて受講生と ともに考える場をつくっていただいた。5. 講義内容 詳細
授業は,岡口とジョーリーが86時間(約3週間半),萩田とサヒが33時間(約1週間半)という配分で担当した。 その他,3人の講演者による各2時間の文化講演(6時間)が加わる。
まず初日の午前中に,パンジャービー語の概略(話者分布,方言,音韻の特徴など)を解説し,午後にはグルムキー文字の 全体像と各文字の名称からテキストの学習を始めた。7名のうち5名がヒンディー語またはウルドゥー語の既習者であるが, グルムキー文字については全員が初めての学習で,同じスタートラインから授業を進めることができた。3日目までにグルムキー 文字の書き方と発音を終え,3週目の半ばまでに文法編の内容もほぼ終了した。予定より速いペースで進められたのは, 受講生の学習進度の足並みが揃っていたことによる。2~4週目では,1日の5時間すべてが文法編の授業とならないよう配慮し, 既習の文法事項でこなせる会話編や基本的な作文練習を午後の時間帯に含めた。コピーライトの関係で読本編のテキストは作成して いないため,文章読解については,小学校教科書・児童書から始まり,新聞記事・文学作品の中から研修にふさわしいものを別刷り プリントとして配布し学習した。4~5週目では,シャームキー文字を用いた授業が行われた。アラビア系のシャームキー文字は, インド系のグルムキー文字とはまったく異なる文字体系のため,ウルドゥー語やアラビア語の既習者以外の受講生にとっては, 研修後半の時期に新たな文字を習得するため集中力を発揮しなければならないという試練の期間でもあった。既にグルムキー文字 表記を通して学習した文法を土台として,シャームキー文字の基礎から,シャームキー文字表記の文章読解に至るまで学習を進めた。 インドとパーキスターン両国にまたがる文化圏を有するパンジャービー語の習得の基礎となる場を提供するという趣旨に沿って 企画した本研修が,受講生の強い意欲と真摯な学習姿勢の支えによって当初の目的を達成したといえよう。
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