このたびは、私どもアジア・アフリカ言語文化研究所主催による「スタジオ・フォトグラフィ・アズ・ア・ドリームマシーン~夢を創る機械としてのスタジオ写真―ケニアのスタジオ写真家たち1912-2001」展にご来場いただきまして、まことにありがとうございます。
 本研究所は、国際的な共同研究を展開する共同利用・共同研究拠点として、アジア・アフリカに関する様々な共同研究・学術活動を行っております。本展は本研究所の客員教授であるドイツ・ケルン大学のハイケ・ベーラント教授のコレクションをもとに企画、構成したものです。

 カメラの発明以来、アフリカでは数多くの写真が撮影されてきました。その中で人々の注目を集めてきたのは、専らアフリカの風景やそこに住む人びとが被写体になったものでした。しかしアフリカの人びとも写真を撮り、写真というメディアをさまざまに活用してきたことを忘れてはなりません。本展が焦点をあてるのは、これまであまり注目されることのなかった「アフリカ人の写真家たちによるアフリカ人のための写真」です。そのなかでも「夢を創る機械」として親しまれてきたケニアの「スタジオ写真」をとりあげます。

 第一部では、1910年代から1980年代にかけて、ケニアの「写真スタジオ」、特にインド洋に面した港町モンバサのスタジオで撮影されたモノクロ写真を展示し、合成写真やコラージュを使ってさまざまな夢を描いてみせた当時の人びとと写真との関わりにせまります。

 第二部では、「リコニの写真家たち」が撮影した写真を展示します。1980年代にカラー写真が普及し始めると、従来のスタジオに代わって、新しいタイプのスタジオが登場します。その担い手となったのが「リコニの写真家たち」です。1990年代以降、モンバサのリコニという街に、彼らによって手作りの小さな写真スタジオが次々と建てられ、モンバサで働く人びとや、観光に訪れた人びとを対象にしたスタジオ写真が撮られるようになりました。スタジオには、豪華客船で旅する海外のリゾート地や高層ビルが林立する大都会の風景など、さまざまな装飾が施されました。このスタジオに写真を撮りに来る人びとは、つかの間のあいだ、現実の生活を忘れ、夢の世界をたのしむのです。本展では、リコニのスタジオをモデルにした特設スタジオを会場に設置しました。

 ベーラント教授のコレクションの中から精選された50点あまりの写真と特設スタジオを通して、日本ではあまり知られていない、アフリカの人びとの写真との関わり方やたのしみ方をどうぞご覧ください。

 本展は、私たちアジア・アフリカ言語文化研究所の研究成果を広く公開し、みなさまのご理解とご支援を賜るべく企画されたものです。率直なご感想、ご意見を頂戴できれば幸いです。

東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所所長 栗原浩英
展示担当 椎野若菜 石川博樹
[主催]
 東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所

[企画]
 ハイケ・ベーラント(AA研客員教授)

[制作実行委員]
 椎野若菜(AA研 基幹研究「アフリカ研究に基づく多元的世界像の探求」)
 石川博樹(AA研 基幹研究「アフリカ研究に基づく多元的世界像の探求」)

[監修]
 小田昌教(AA研)

[広報]
 西井凉子(AA研)
 星泉(AA研)

[予告篇制作]
 小田マサノリ

[サイト制作]
 河本剛之
 鎌田幹子

[印刷]
 株式会社ルート印刷

[施行]
 株式会社インフォテック

[制作協力]
 原田由希子
 小林宏和
 Oyoo Maurice Edwards
 John Mwaniki Ndungu