東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所
IRCプロジェクト
20世紀前半のインドネシア華人関連資料コレクション
The Collection of the Early 20th Century Materials on Ethnic Chinese in
Indonesia
公開開始日: 2011年 3月24日
最終更新日: 2011年12月 7日
■趣旨■ |
このページでは、20世紀前半にインドネシアの地で刊行された華人関連資料を公開している。
オランダ領東インド(現インドネシア)の出版資本主義の発展に果たした華人の役割は、すでに多くの研究が指摘するところである[Salmon 1981; Oetomo 1991; Setiono 2002: Bab XXIV-XXV]。言うまでもなくその中心地は植民地の首府バタヴィア(現ジャカルタ)を含むジャワ島であったが、同地で世代を重ねた中国系移民の子孫(以下「華人」)たちは、東南アジア島嶼部で交易言語として広く用いられるとともに東インドの公用語とも位置づけられたムラユ語(マレー語、後のインドネシア語)を用いて、積極的に自己表現を行なった。この時期、すなわち19世紀末から20世紀半ばというのは、オランダによる植民地支配の完成、中華ナショナリズムの勃興、過酷な日本軍政、そして独立戦争を経て新生国家インドネシアが歩み始めるといった具合に、まさに激動の時代であったが、そうした中で華人たちは、「我々とは何者か?」、「自分たちはどうあるべきか?」ということを意識しつつ地位模索を迫られることになる。
この過程で、様々な当事者による様々な立場からの声が活字として生みだされ流通したが、しかし、1960年代後半の政治・社会的混乱、そしてその後30年あまりにわたり「華人文化」に対する抑圧が続く中で、一次資料となり得る多くの出版物が失われてしまった。それらの多くは今や入手困難となってしまったが、しかし一部は、決して体系的ではないものの、たとえば個人的な蔵書という形で、広く世に出ぬまま保管されていることがある。
近年、華人によるマレー語文学(プラナカン文学)が再評価される中で、主に小説などのジャンルを中心に集成・再版する試みが進められているが[Marcus & Benedanto (eds.) 2000]、同時代の華人の社会生活を窺い知ることができるその他の多岐にわたる資料群は、依然として埋もれたままである。ここでは、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所附属情報資源利用研究センター (Information Resources Center/ILCAA, 以下IRCと略記)プロジェクトとして、複数の個人蔵書家のご協力のもと、学術的に価値が高いと思われるそれら資料の一部を、電子化した上で公開している。
なお、同じくIRCプロジェクトとして、1923年にバタヴィア(現ジャカルタ)の新報(Sin Po)社から発刊されたムラユ語-外来語辞典"Kitab VORTARO"のデータも公開している。20世紀前半の主に華人の手によるムラユ語資料を読み解くのに、あわせて活用してほしい。
※参考文献 |
Marcus A.S. & Pax Benedanto (eds.). 2000. Kesastraan Melayu Tionghoa dan Kebangsaan Indonesia (Jilid 1). Jakarta: KPG (Kepustakaan Populer Gramedia) bekerjasama dengan Yayasan Adikarya IKAPI dan The Ford Foundation. |
Oetomo, Dede. 1991. "The Chinese of Indonesia and the Development of the Indonesian Language", in Indonesia (special issue): 53-66. Ithaca: Cornell Southeast Asia Program. |
Salmon, Claudine. 1981. Literature in Malay by the Chinese of Indonesia: A Provisional Annoted Bibliography. Paris: Editions de la Maison des Sciences de l'Homme. |
Setiono, Benny G. 2002. Tionghoa dalam Pusaran Politik. Jakarta: Elkasa. |
■公開資料■ |
資料は順次公開していく予定であるが、目下暫定的に以下の4群(A〜D)に分類して掲載している。
※ 資料はPDFファイルの形で公開している。 ※ PDF化にあたって、原資料内の白紙ページは省いている。そのため、総ページ数は原資料とは異なっている。 ※ 資料はアルファベットOCR(光学文字認識)処理をしてある。漢字等には対応していない。アルファベットでの簡易文字列検索が可能だが、機械的に処理しているため精度は高くない。 ※ 一部の資料(D-1)については、正規表現などにも対応した全文検索が可能である。 ※ インターネットに接続された端末によるデータの閲覧は自由にできるが、データの印刷・編集等はできない。原資料やデータの貸借、 また学術目的による著作物等への掲載、転載利用等を希望される場合は、こちらへお問い合わせのこと。
■本プロジェクトについて■ |
「20世紀前半のインドネシア華人関連資料コレクション」は、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所附属情報資源利用研究センター (IRC)のプロジェクトとして、2010年度から資料公開を行なっている。
本プロジェクトで公開している資料は、以下の方々のご協力によりご提供いただいたものを、電子化したものである。
● ハリアント・サヌーシ(Harianto Sanusi)氏: ジャカルタ在住の華人蔵書家。現在、インドネシア華裔總會(INTI)東ジャカルタ支部長を務めている。
個人的に集めた古書は推定1万2千冊。その少なからぬ割合を占める華人関連資料は、定期刊行物や小説、学術書などを含め全ジャンルに及ぶ。
このページに関するお問い合わせ: | 津田 浩司(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所) |
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