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  • 2004(平成16)年度
  • 2004(平成16)年度 海外派遣報告

    カメルーンにおける学術調査事情-東南部熱帯雨林地域に関する学術調査・保護活動を中心に
      [報告者]服部 志帆(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)
      [報告者]市川 光雄(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)


    1. はじめに

    平成16年度の海外学術調査総括班の活動の一環として、カメルーンにおける学術調査の動向に関する調査をおこなった。派遣日程は、市川が平成16年12月11日より26日まで、服部が平成17年1月16日より2月22日までである。以下、同国の学術調査事情を、世界的に注目を集めている熱帯雨林の保護に関連する調査研究、及び実際の保護活動の現状を中心に報告したい。

    わが国の研究者によるカメルーンでの学術調査の歴史は古く、1960年以前に遡る。森林性大型類人猿の予備調査のために、京都大学の故伊谷純一郎が単身でカメルーンのジャー保護区に入ったのは、カメルーンが独立する前の1958年のことであった。それからしばらく間をあけて、1980年代に入ると、当時霊長類研究所教授であった河合雅雄らのグループがドリル、マンドリル等の森林性オナガザル類の本格的な調査に着手した。一方、カメルーンにおける文化人類学的研究は、1960年代末に東京外国語大学の故富川盛道、日野舜也らによって組織された「大サバンナ学術調査隊」以降、急速に活発になった。なかでも日野教授らによる都市人類学の研究は、名古屋大学の和崎春日らによって受け継がれ現在に至っている。また、これらの調査から少し遅れて、門村浩(当時、都立大学)らによる地理学的調査や、森淳(当時、大阪芸大)らによる手工芸文化に関する調査も始まっている。最近では、これらに加えて、京都大学による森林居住民の環境利用の研究や名古屋大学による儀礼文化の研究がカメルーンにおける新たな研究の流れを形成している。

    このようにカメルーンにおけるわが国の研究者の学術調査は、長い歴史をもち、多岐の分野にわたって展開しているが、調査許可の取得方法や日本人以外による調査・研究の動向については、これまでにあまり紹介されたことがなかった。とりわけ、国土の約半分が熱帯林に覆われたカメルーンは、現在、自然保護の分野でもっとも強い関心を集めている国のひとつであるが、実際にここでどんな組織が、どのようなプロジェクトを実施し、そこからどんな成果が生まれているかについての報告はほとんどない。そこで、本報告では、報告者らがとくに関心をもつ、カメルーンの熱帯雨林地域に関する学術調査動向と、それと密接に関連する環境関連のプロジェクトについて紹介したい。

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    2. 一般状勢

    カメルーンでは、平成16年10月に大統領選挙が実施され、1982年以来大統領の地位にある現職のPaul BIYAが予想通りの再選を果たした。これまで、大統領選挙のたびに懸念されていた混乱も、今回にかぎってはとくに目立った動きがなかった模様で、現在の政情に関していえば、一応の安定をみているといってよい。しかし、長年の対立を背景にした、旧英領圏住民の現体制に対する敵対意識は根強く、いつそれが爆発してもおかしくない状態がつづいている。

    その一方でカメルーンの経済は、1994年のセーファ・フランの切り下げによってコーヒー、カカオ等の農産物輸出が増加したことなどもあり、かなり順調に推移している。また、近年、チャドで採掘した原油をカメルーン経由で大西洋岸まで送るパイプラインが完成したことによって、カメルーン政府の歳入が大幅に増加した。さらに、これまでアフリカの優等生的存在であったコートジボアールの政情が、クーデター事件以降、急速に悪化したのにともなって、同国から逃避した資本の一部がカメルーンに向けられた。これらの影響を受けて、ここ2-3年のカメルーンの経済は年率8%を越える成長を示すなど、かなりの活況を呈している。隣国のコンゴ共和国やその隣のコンゴ民主共和国などがあいかわらずの混乱状態にあるのに対し、カメルーンは現在、中央アフリカ地域でもっとも安定した国のひとつになっている。


    ヤウンデ市内

    カメルーンの国内事情に関する資料としては、京都大学アジア・アフリカ地域研究研究科の木村大治他編著による「カメルーン調査覚え書き」(初版は1994年、その後改訂が重ねられ、現在は第3版)が有用である。これには、ビザや調査許可の取得方法のほか、カメルーンの道路・交通事情や国内の主要都市に関する詳細な情報、首都ヤウンデにおける政府機関や在外公館、NGO組織等に関する情報、書店、薬局、飲食店などに関する細かな情報がおさめられている。

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    3. 入国ビザ

    (1) 日本でのビザ取得

    カメルーンでは、学術調査をするための特別なビザは不要であり、通常の旅行者と同じビザを取得する。東京にあるカメルーン大使館でビザを取得する際には、下記のものが必要である。

    • パスポート
    • ビザ申請書。2枚(フォームはFaxにて取り寄せられる。また、在日カメルーン大使館で直接記入することも可能。写真2枚を添付)
    • イエローカード(黄熱病のみ必要)
    • 旅程表(入国と帰国の際のフライトの便名とカメルーン国内での簡単な旅程表)
    • 所属機関の代表者(部局長など)による推薦状
    • ビザ申請代金は、3ヵ月で12,000円。一時、1年間(48,000)まで日本で取得可能になっていたが、最近では6ヵ月まで取得可能。ビザの期間及び料金については、たびたび変更されるので事前に確かめた方がよい。

    なお、直接東京の大使館で申請した場合は、午前中に提出すると、翌々日の午後にはビザがおりる。その他、ビザに関する問い合わせは、下記まで。
    カメルーン大使館
    東京都世田谷区野沢 3-27-16
    Tel. 03-5430-4985


    (2) ビザ延長と滞在許可書

    カメルーン国内でのビザの延長や滞在許可書などの発行は、警察庁(Délégation Générale a la Sùreté Nationale )の移民局(Immigration)が扱っている。担当官はJylus Eben氏である。現在、入国ビザの延長は6ヵ月までしかできないことになっており、それ以上は滞在許可書(Carte de Sejour)が必要である。日本で3ヵ月のビザを取ってきた場合、カメルーンにおいて3ヵ月間の延長は可能であるが、6ヵ月のビザを取ってきた場合、カメルーンでさらに延長することはできない。ビザの延長には以下のものが必要である。

    【ビザの延長に必要な書類】

    • 申請書(滞在期間、目的を書いて自筆のサインをし、1,000FCFAの印紙を貼る)
    • 調査許可書
    • パスポートのコピー
    • パスポートのビザのページ
    • 50,000 FCFA

    【滞在許可書(carte de sejour)に必要な書類】

    • 居住証明書*〔certificat de résidenceを滞在先の近くの警察署で取得し、1,000FCFAの印紙を貼る〕
    • 身元証明書*〔certificat de non-convictionを裁判所で取得し、1,000FCFAの印紙を貼る〕
    • パスポートのコピー
    • \250,000 FCFA +3,000FCFA(写真撮影代)

    *実際は、パスポートのコピーと申請料金を持ってオフィスに行くと、居住証明書と身元証明書は、係官が取りに行ってくれる。

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    4. 調査許可の申請と許可証の取得方法

    (1) 科学技術省の許可証取得

    カメルーンにおいて調査を行う場合、科学技術省(Ministère de la Recherche Scientifique et Innovation、以下MINRESIとする。旧称はMESRES=Ministère de Enseignement Superior et REcherche Scientifique)等が発行する調査許可書が必要である。

    調査許可証
    科学技術省の調査許可書は、1年間を上限に何ヵ月でも申請が可能であるが、許可取得までに要する時間が異なる。3ヵ月までは、同省のDirector GénéralのTANCHOU Justin女史にサインをもらえばよく、通常は1週間ほどで許可が取得できる。しかし、3ヵ月以上になると、大臣のサインが必要となり、その分時間がかかる。そのため、長期の許可を申請する場合は、あらかじめ日本から調査許可の申請書類を送付しておくのがよい。
    調査許可申請書を直接持参する場合は、まずMINRESIの正面入り口から入り、受付カウンターで訪問目的を説明する。パスポートなどの身分証明を預け、入省許可のバッチをもらって二階に上がり、114号室で書類を渡す。係官が申請書の預り証を発行してくれ、いつ頃許可が下りるかを教えてくれる。現在の担当官はKOUTOU Chouebou 氏で、申請後に電話(753-6117)をすれば、調査許可が下りているかどうか教えてくれる。調査許可を受け取りに来るのは同じ場所である。書類がTanchou女史のオフィスで止まっていることも多いので、その場合は女史のオフィスに行って交渉する。オフィスは、MINRESIの裏側に出たところの下のほうにある平屋の建物である。
    MINRESIの公務時間は、月曜日から金曜日の8:00から15:00であるが、Tanchou女史がオフィスに現れるのは9:00から10:00の間なので、このくらいの時間にいったほうがいい。
    調査許可が下り、無事に調査が終了したら、MINRESIに報告書を提出する必要がある。とくに、継続的に調査を行う場合は、次回の調査許可を申請する際に報告書がないと、調査許可が下りないこともある。報告書の内容は、旅程表と調査内容、及びその結果について記す。調査をもとに出版した英語論文があれば、それを報告書の一部にしてもよい。
    なお、グループによる許可申請の場合は、カメルーン人研究者のカウンターパートとの共同研究をするように要請される。

    【調査許可申請のための必要書類】
     申請書は英語、またはフランス語で作成する。

    • プロポーザル(調査目的、内容、スケジュール)
    • カバーレター 1枚(直筆のサインが必要)
    • 調査許可書様式 オリジナル一枚に必要事項を記入し、コピー6枚と合わせて提出。調査許可書は、これに大臣ないし局長がサインし、公印を押す。
    • 履歴書
    • 写真 7枚(裏に名前を書く)
    • 印紙 6,000 FCFA (1,000FCFA×6枚) (1euro=655FCFA)

    【申請書送付先】
    Ministère de la Recherche Scientifique et Innovation, B.P. 1457 Yaoundé, Cameroon
    郵送した申請書などは、途中で紛失する可能性があるので、2部用意すること。
    現在、カメルーンには旧宗主国であるフランスやドイツをはじめ、ヨーロッパやアメリカなどから多くの研究者や学生が調査研究のために訪れている。彼らの多くは3ヵ月未満の短期滞在者であるが、なかには1年またはそれ以上の長期にわたる調査を行うものもいる。これらの研究者、学生の多くがMINERESIで調査許可の発行を受けているが、正確な人数はMINRESIでは把握されていない。ちなみに、2004年12月の1ヵ月間の調査許可申請者数は35人であった。研究分野については植物学や動物学などの自然科学分野や、人類学、社会学が多いように見受けられたが、経済学や政治学などの分野での調査許可申請は少なかった。


    (2) 森林・野生動物省の許可書

    中央アフリカにおいて、国立公園などの自然保護区域及びその周辺に入る研究者は、科学技術省の許可とは別に、森林環境省の許可証をも取得する必要がある。カメルーンにおいても、国立公園その他の保護区で調査を行う場合、MINRESIで発行する調査許可とは別に、森林・野生動物省(Ministère des Forêt et de la Faune)が発行する調査許可書が必要である。これまでは、森林・環境省(Ministère des l’Environnement et de la Forêt、以後MINEFとする)が許可書を発行していたが、2004年12月に省庁が再編され、MINEFは、森林・野生動物省と環境・自然保護省(Ministère des l’Environnement et de la Protection de la Nature)に分割された。申請には、下記の書類が必要である。なお、許可発行には所定の料金を納める必要があるが、ヤウンデ大学などの機関にカウンターパートがいる場合には、カウンターパートの推薦状を持っていくと無料で取得できる。
    森林・野生動物省は、ヒルトン・ホテルの斜め向かいにある赤茶の格子窓のついた高層ビルの17階にある(P.O. Box はない)。野生動物と保護区の担当官(Director of Wildlife and Protected Area)は、Ebai Takang Stephen氏であり、17階の1715号室にいる。しかし、国立公園内で調査を行う場合、国立公園の管理をサポートしているWWFなどの自然保護団体を通して、調査許可を申請する動物学者や植物学者が大半であり、ヤウンデの森林・野生動物省に直接調査許可を申請する例はそれほど多くない。また、国立公園内で行われる調査の多くが、動物学や植物学という分野の研究者によってなされており、人類学者は少ない。申請に要する時間は、担当官が出張などで不在でなければ1週間ほどである。なお、調査を終えて帰国する際には森林・野生動物省に報告書を提出することが義務づけられている。

    【許可申請のための必要書類】
     申請書は英語、またはフランス語で作成する。

    • プロポーザル (調査目的、内容、スケジュール)
    • 調査許可書の様式(規定のフォーマットはなく、自分で作り、必要事項を記入して1,000FCFAの印紙を貼る)
    • 履歴書
    • MINRESIで取得した調査許可書のコピー
    • パスポートのコピー
    • 写真 2枚(4cm×4cm)
    • 申請費 130,000FCFA +印紙 30,000 FCFA(1euro=655FCFA)

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    5. カメルーンにおける熱帯雨林関係の調査動向

    (1) 熱帯雨林に関する一般的な調査研究動向

    現在、熱帯雨林に関する調査研究に関しては、世界的なネットワークが形成され、それを通して調査研究の方向づけとそのための人的・財政的資源の配分、研究集会や印刷物の公刊等の研究成果の流通がおこなわれている。このネットワークは、保護計画の策定や実際の保護活動の実施にも関わっており、膨大な資金と人員がそれらを巡って動いている。熱帯雨林の保護にかかわる活動は、利潤を生まない、いわゆる「非営利活動」の典型であるが、一方では多くのプロジェクト実施組織や「専門家」を生みだし、現地の人びとにも「経済的影響」を及ぼしている。さらにこの同じネットワークが、森林資源の配分や環境をめぐるガバナンスにも大きな影響を与えており、いわばそこでは、熱帯雨林をめぐる科学(調査研究)と経済、行政(政治)が密接に関連した複合体をなしている。そうした意味で、熱帯雨林に関する科学的な言説は政治的意味を担っているといえる。さらに、このようなネットワークのなかで、南アメリカ(主としてアメリカが担当)、アジア(主として日本などアジア諸国が担当)、アフリカ(主としてヨーロッパが担当)というような地域割りが存在し、それにしたがって研究資源が配分されている。人類学者のFairhead とLeach(注)は、こうした状況にある熱帯雨林研究の枠組とそれをめぐる状況を”Tropical Forest International”と呼び、熱帯雨林問題に関する研究が、まさにミシェル・フーコーが言ったような「権力/知(pouvoir/savoir)」の典型を示していると指摘している。

    (注)Fairhead, J. and M. Leach, 2003 ‘Sceince, Society and Power: Environmental Knowledge and Policy in West Africa and the Caribbean,”Cambridge UP FairheadとLeachは、このような”Tropical Forest International”の枠組において設定された調査研究の重点項目として、以下のようなものをあげている。

    1. Listing diversity すなわち動物相、植物相の目録作成。
    2. Ecosystem and diversity。これは、植生の静態的な記載とクライマックス(極相)の提示だけでなく、ニューエコロジーなどの影響を受けて、森林生態系の生成・変化などの動態に関心をもつ。
    3. Medicinal plants and diversity。薬用植物に対する関心を示し、Indigenous herbal specialistsに対する一定の評価を与えてはいるが、「在来の科学を理解する」ことよりは、伝統薬の「科学的に有効な」な成分の検証に重点を置いている。
    4. Economic plants and diversity。非木材森林産物(NTFP)等の従来はマイナー・プロダクトとされてきた森林産物が、最近では「森林の持続的利用」、「木を切らずに森を利用する」ための方法として注目を集めている。これらについての情報収集。
    5. Conserving biodiversity through traditional hunters

    「伝統的」な方法で狩猟をおこなう狩猟民とその知識、組織を保護計画への組み込むための調査で、これは、自然保護と辺境部における政治的安定化の両方に貢献するものと考えられている。
    以上のような点に関する調査研究が、保護団体等が設定した重点地域、すなわち、Conservation International (CI)による”biodiversity hotspots”や、WWFが設けた “eco-regions” において実施されている。
    このような学術動向のなかで、日本人が、アフリカにおいて、上記の重点項目以外のテーマに関して調査を実施することには、かなりの困難が伴うことになる。第一に、国際機関などから経済的支援が得られにくいという資金調達の問題があるが、それ以外にも、現地研究者との適切な協力や、研究成果の流通とそれに対する正当な評価といった学術環境の問題がある。しかし、もっぱら”Tropical Forest International”によって必要とされたプロジェクトや、それと密接に結びついた現地政府の要請にもとづいておこなわれる援助プロジェクト等では難しいような調査も必要であり、そのなかからユニークな研究が生まれる可能性も少なくない。国際的な場で取り決められた研究という枠組による制約や、地理的な役割分担を越えて、自由な発想によるユニークな研究を支援することも、科学研究費補助金の重要な役割のひとつであると、ここでは主張しておきたい。


    (2) カメルーンにおける熱帯雨林関係のプロジェクトと実行組織

    カメルーンにおける熱帯雨林関連の調査研究も、上記のような“Tropical Forest International”の枠組と無縁ではない。アフリカ諸国の研究組織に関しては、研究の財源や研究のためのポスト(人件費)等の資源を外国の組織、またはその意向を強くうけた現地政府やNGOに依存することが多く、そのような「資源」なしでは研究活動そのものが不可能であることから、いっそう” Tropical Forest International”の影響が強くなっている。

    カメルーンの熱帯雨林
    現在、カメルーンの熱帯雨林地域に関しては、まるで自然保護活動のデパートのように、各国が競うようにして、さまざまな保護活動を展開している。それらは、ときに競合しながらも、活動地域や援助対象に少しずつ差異をもたせており、全体としてはかなり緊密な協調体制を組んでいる。それはまさに、”Tropical Forest International”が機能している現場を目の当たりにするような状況といってよい。
    カメルーンで活動している自然保護関係の組織には、IUCN(国際自然保護連合、本部ジュネーブ)やCIFOR(国際森林研究センター、本部ボゴール)等の国際機関をはじめ、EUの支援を受けたAPFT(Avenir des Peoples en Forêt Tropicale 本部ブリュッセル、2000年に主なプロジェクトは終了)やECOFAC(ECOsystèmes Forestiers d’Afrique Centrale 、地球環境基金(GEF)の資金によるEU主体のプログラム。現在、カメルーンにおける活動は終了)、TROPENBOS(本部はオランダのワゲニンゲン)などのプロジェクト実行組織、WCS(Wildlife Conservation Society、 本部ニューヨーク)やWWF(国際自然保護基金)等の国際NGO、GTZ(ドイツ政府海外援助組織)、SNV(オランダ政府援助組織)、CARPE (Central African Regional Program for the Environment、US-AIDの支援をうける)などの各国政府の支援組織など、さまざまな組織形態のものが存在しており、それぞれ力点の置きどころが異なっている。たとえばカメルーンでは、WCSやWWFは森林保護計画の立案と実行を主目的としているが、TROPENBOSは林産物の持続的利用に重点をおき、APFTは森林居住民の将来像の模索を主な目的としている。また、CARPEは自身で保護活動やそのための調査をおこなうというよりは、実行組織に対する支援と情報収集に重点をおいているし、GTZは主として保護区周辺の住民に関する調査と環境教育活動を行っている、という具合である。
    ここでは、とくにカメルーンの熱帯雨林地域で精力的な活動をしているWWF、WCSをはじめ、さまざまな調査活動を支援しているCIFOR,CARPE, GTZなどの国際組織の活動を中心に紹介する。また、カメルーン国内のヤウンデ大学などの研究教育活動や、カメルーン熱帯雨林地域に関する豊富な資料を有するIRD(Institut de Recherche pour la Développement、旧ORSTOM)や、国立植物標本館(National Herbarium)、国立文書館(Archive Nationale)等について報告し、最後に、日本人によるこの地域での活動についてもあわせて紹介したい。

    ① WWF(World Wide Fund for Nature)の活動:とくにジェンギ・プロジェクトについて
     WWW-Cameroom
     WWF-Yokadouma

    WWFは1961年に絶滅の危機にさらされている野生動物を救うために、設立された自然保護団体である。現在は、野生動物の保護だけでなく、生態系全体を保全することを目的としている。スイスのジュネーブに本部があり、世界の40カ国に支部がある。100カ国において約2000のプロジェクトを行っており、約4000人のスタッフが働いている。中央アフリカには、カメルーンのヤウンデ、中央アフリカ共和国のバンギ、コンゴ民主共和国のキンシャサ、ガボンのリーブルビルに支部がある。特に、ヤウンデ支部はCARPO(Central Africa Regional Program Office)と呼ばれ、中央アフリカにおけるプロジェクトを総轄する上で重要な役割を果たしており、Tchamba Martin氏を支部長として、約30名のスタッフが働いている。
    現在、カメルーンにおいては、生物多様性が高いと言われている4つのエリアでプロジェクトが行われている(以下参照)。北部州のベヌエ(Benoue)、ファロ(Faro)、ブバ・ンジダ(Bouba Ndjida)国立公園とその周辺エリアで行われている「北部サバンナ・プロジェクト」、南部州のカンポ―マン(Campo-Ma’an)国立公園とその周辺エリアで行われている「カンポ―マン・プロジェクト」、南西部州の保護区(現在、国立公園に申請中)であるバコシ(Bakossi)山脈、カメルーン (Cameroon) 山、クペ(Kupe)山、ムヮネングバ(Mwanenguba)山、ロナコ(Nlonako)山、エボ(Ebo)低地林とマコンベ(Makombe)低地林、そしてドンゴレ(Ndongore)マングローブ林と周辺エリアで行われている「海岸林・プロジェクト」、東部州のロベケ国立公園と保護区であるブンバ・ベック(Boumba・Bek)とンキ(Nki)地区(現在国立公園に申請中)とその周辺エリアで行われている「ジェンギ・プロジェクト」である。また、大きなプロジェクトは行っていないが、南西部州のコーラップ国立公園やメンガメ(Mengame)ゴリラ保護区(現在、サンクチュアリーに申請中)において、密猟監視のためのパトロールや、特にゴリラやチンパンジー、ゾウなどの絶滅危惧種のモニタリング調査を行っている。
    これらのプロジェクトの中で最も規模が大きくWWFが力を入れているのが「ジェンギ・プロジェクト」で、プロジェクト・エリアは80万ヘクタールにも及ぶ。東部州ブンバ・ンゴコ県の県庁所在地であるヨカドマにオフィスがあり、プロジェクト・マネージャーのLeonard Usongo氏を含む43名のスタッフが働いている。1990年代、後述するWCS (World Conservation Society)などによって動物相に関する基礎的な調査が行われ、ロベケ、ブンバ・ベック、ンキ地区の生物多様性の高さと保護の必要性が指摘された。その後、植物相や地域住民に関する調査などをWWFが引き継ぎ、1998年から、3つのエリアの国立公園化とその周辺エリアの持続的な利用を目標として「ジェンギ・プロジェクト」が本格的に始まった。環境・自然保護省(Ministère des l’Environnement et de la Protection de la Nature)とUTO (Unitè Technique Operationelle)と呼ばれる技術協定を結び、ドイツの援助団体であるGTZとともに地方自治体による自然資源の管理をサポートしている。WWFは、動植物相などの生態調査やモニタリング、違法伐採や密猟の取締りを行っており、GTZが環境・自然保護省とともに、地域住民を対象として資源の持続的利用に関する調査と環境教育を行っている。プロジェクトにおいて、土地は国立公園と一般狩猟区、共同管理狩猟区に区分され、これらの区域ごとに利用の方法が決められている。地域住民が恒常的に利用できるのは共同管理狩猟区であり、地域住民はここにおいて持続的な資源利用を行うことが求められる。またこれとともに、ゴリラやチンパンジーなど保護種の狩猟禁止や、あらゆる動物の売買禁止、さらには狩猟期や狩猟法の規制などについて決められた森林法が施行されている。環境教育では、このような保護計画の内容と地域住民の役割が説明される。環境・自然保護省とGTZは、現在もなお、住民を対象にした環境教育を継続しており、WWFは新たに、ロベケ国立公園におけるエコツーリズムの開発や、衛星を使ったモニタリング調査によるゾウの違法な狩猟の取り締まり(MIKE= Monitoring Illegal Killing of Elephants Program)に力をいれている。「ジェンギ・プロジェクト」が始まって3年後の2001年に、英王室のエジンバラ公の訪問等の効果もあり、ロベケが国立公園として認定された。しかし、ブンバ・ベックとンキ地区は現在もなお国立公園としての承認を申請中であり、政治的なレベルにおいて、これら2地区の国立公園化が大きな課題となっている。WWFの資金提供者はプロジェクトごとに異なっているが、「ジェンギ・プロジェクト」は、WWFのほかに、アメリカの援助機関であるUS-AID や国連(新たな世界遺産のための国連基金)、ドイツ政府(500万ユーロのロベケ基金)などにサポートされている。

    【カメルーンにおけるWWFのプロジェクト】

    • 「北部サバンナ・プロジェクト:1997年~」
      オフィス:北部州ガルア 責任者:Paul Donfack 氏
    • 「カンポ―マン・プロジェクト:2001年~」
      オフィス:西部州カンポ 責任者:Tchikangwa Bertin氏
    • 「海岸林・プロジェクト:2001年~ 」
      オフィス:西南部州リンベ 責任者:Atanga Ekobo氏
    • 「ジェンギ・プロジェクト:1998年~」
      オフィス:東部州ヨカドマ 責任者:Leonard Usongo氏

    【WWF-Cameroonヤウンデ・オフィスの所在地】
     WWF CPO, Immeubla Panda,
     Rue La Citronelle BAT Compound, P.O. Box 6776, Yaounde, Cameroon
     TEL: (237) 221-62-67 FAX: (237) 221-70-85

    なお、ヤウンデのWWF-Cameroonの資料室において、カメルーン東部州の保護区及びその予定地区に関する調査報告書を収集してきたので、そのリストを末尾にあげる。収集資料は、動物相や植物相に関するもの、非木材森林産物・エコツーリズム等に関する調査、保護計画と地域社会の関係に関する調査、保護計画の概要や進行状況に関するレポートなどに分類した。これらの報告を概観すると、WWFの活動が基本的にTropical Forest Internationalの枠組に沿って進められながらも、しだいに、「熱帯雨林の保護」という「グローバルな」目的を達成するために、地域の住民生活にも配慮する姿勢を示すようになっていることが読みとれる。

    ② WCS (Wildlife Conservation Society)

    WCSの活動の歴史は古く、世界中の野生動物や原生自然を守るために、1895年にアメリカのニューヨークにあるブロンクス動物園において始まった。現在も本部はニューヨークのブロンクスにあり、アフリカやアジア、ラテン・アメリカ、北アメリカなど世界の53カ国において、科学的な調査に基づいた保全活動や環境教育などを行っている。
    WCSはコンゴ共和国やガボンなど、中央アフリカにおいていくつかのプロジェクトを行っているが、カメルーンにおいてはヤウンデにオフィスがあり、5つのプロジェクトを行っている(project とdirectorは以下参照)。ヤウンデのオフィスでは、責任者(country director)であるR. C. Fotso氏や、プログラム・マネジャーであるG. G. B. Kombele-Spinhovenを含む8名のスタッフが働いている。
    生物多様性を維持しつつ住民にも経済的な利益を還元することを目的として、バン・ジェレム(Mbam & Djerem)国立公園や、バニャング-ボー(Banyang-Mbo)野生動物サンクチュアリの周辺エリアに住む地域住民を対象にした環境教育が行われている。また、南西部のクロスリバー沿いにあるタカマンダ、モネ、ブル(Takamanda, Mone & Mbulu)などの森林保護区においては、新たな国立公園設立にむけて、ゴリラのモニタリング調査や地域住民を対象にした環境教育が行われている。さらに、ナイジェリアとカメルーンの国境地域や、マコー(Makor)やタベネ(Tabene)一帯において野生動物の違法売買を取り締まっている。また、今後、特に鉄道による獣肉輸送の取り締まりを強化しようとしている。
    なお、東部州における保護計画及びそれに関連する調査活動についても、1990年代までは盛んにおこなっていたが、最近では、WWFが活動を引き継いでいる。

    【プロジェクトとディレクター】

    • 「バンとジェレム国立公園プロジェクト」 Dr. F. Hiol Hiol
    • 「クロスリバー・ゴリラ・プロジェクト」J. Sunderland-Groves
    • 「バニャング・ボー野生動物サンクチュアリー・プロジェクト Dr. T. Sundrla
    • 「カメルーン・ナイジェリア、トランスフロンティア・プロジェクト」 Dr. T. Sundrland
    • 「鉄道による獣肉輸送に関するプロジェクト」Dr. R.C. Fotso country

    【連絡先】
     WILDLIFE CONSERVATION SOCIETY
     B.P. 3055 MESSA, Yaounde Cameroon
     Tel/ Fax: (237)-220-26-45

    ③ CIFOR(Center for International Forestry Research) の活動
     CIFORの重点テーマ
     IITA-CIFORの構内

    国際森林研究センターCIFORは、インドネシアのボゴールに本部をおく国際機関で、その地域センターがカメルーンの首都ヤウンデの郊外コルビッソン(Nkolbisson)に設けられている。ここには、近くに、同じく国際機関である熱帯農業研究所IITA(International Institute of Tropical Agriculture、CIFORはこの敷地の一部に建てられている)の支所や、カメルーン国立農業研究所(Institut de Recherche Agronomique)などがあり、農業・環境関連の研究施設が集まっている。
    CIFORでは、森林とそのマネージメントに関する世界的な研究拠点として、カメルーンをはじめ、ガボン、コンゴ民主共和国、ガーナ、リベリア、ギニアなどの周辺国において調査研究活動を展開している。カメルーンでは、熱帯雨林そのものに関する生態学的あるいは林学的な調査活動はほとんど行なっておらず、森林と人間の関係に関する調査活動を展開している。とくに、(a)「森林と住民生活(Forests and Livelihoods)」、及び (b)「森林とガバナンス(Forests and Governance)」に関する2つのプログラムを中心に活動している。これら2つのプログラムの参加者と研究テーマは以下の通りである。

    【森林と住民生活のプログラム】

    • Ousseynou Ndoye, Senior forest economist, Program Coordinator:「非木材森林産物の経済的価値」及び「保護活動に関する政策」
    • Abdon Awono, Jurist, research assistant:「非木材森林産物の経済的価値」及び「非木材森林産物の利用とコミュニティー」
    • Danielle Lema, Sociologist, research technician:「ジェンダーと非木材森林産物」及び「非木材森林産物の利用とコミュニティー」
    • Diomède Manirakiza, Economist, consultant:「非木材森林産物の経済的価値」及び「非木材森林産物の利用とコミュニティー」

    【森林とガバナンスのプログラム】

    • Chimère Diaw, Senior anthropologist, Program Coordinator:「協同管理」及び「法的、慣習的制度」、「ガバナンス」
    • Samuel Assembe, Jurist, research assistant:「環境問題をめぐる地方分権」
    • William Mala, Agro-ecologist, research associate:「共同管理」及び「農業と森林の関係の生態学的変化」
    • Paolo Cerutti, Ecologist-GIS specialist, Italian associate expert: 「違法行動と法による強制」
    • Joachim Nguiebouri, research technician:「協同管理」及び「森林のマイノリティ」
    • Cyprain Jum, Anthropologist, research associates:「協同管理」及び「法的、慣習的制度」
    • Ruben de Koning, political scientist, Dutch associate expert:「森林をめぐる葛藤」
    • Anne-Marie Tiani, Ecologist, research associate:「協同管理」
    • Mireille Zoa, Forest Engineer, research assistant:「協同管理」
    • Phil René Oyono, sociologist, national visiting scientist:「協同管理」、「環境問題をめぐる地方分権」、「人間の生態学」、「森林のマイノリティ」

    なお、カメルーンのCIFORは、これらの研究活動と並行して、資料の収集整理活動もおこなっており、同センターの編集による「Cameroon Forests and Peoples」(CD版)には、これまでに発表されたカメルーンの熱帯雨林とその住民の関する100編余りの雑誌論文や報告書(PDFまたはWord版)や、多数のカラー写真、各種地図・テーマ図などが1枚のCDに収められている。

    ④ CARPE (Central African Regional Program for the Environment)

    CARPEはUS-AIDによって始められた20年計画のプログラムで、1995年9月にコンゴ盆地における森林破壊や生物多様性の喪失をくいとめるために設立された。本部はワシントンD.Cにあり、1996年にカメルーンのヤウンデ、コンゴ共和国のブラザビル、ガボンのリーブルビルに支部が作られた。CARPEが実際にプロジェクトを計画、実施しているわけではなく、Biodiversity Support Program等を通して、国際NGO組織や調査・研究機関、中央アフリカ諸国の政府機関・大学研究者などに資金提供を行っている。2002年までの7年間は、特に、ハーバード大学やオックスフォード大学、CIFORなどによる研究や、地域住民に自然保護の重要性を理解させ持続的な資源管理を目標としているNGOをサポートしてきた。2003年から2010年までは、地方政府や住民による森林管理の強化とGlobal Forest Watchのようなモニタリングをサポートし、商業伐採の管理に力を入れることを目標としている。そして、これらの成果が“Conservation Biology”や、“Biodiversity and Conservation”などの雑誌に発表されてきた。
    なお、CARPEが支援してきたプロジェクトの成果として発表された100編程の論文・報告書の一覧がCARPEのBassin du Congo: Bulletin d’Infor mationのサイトに掲載されているので、関心のある方は参照されたい。また、これらの多くは、CARPEのHPから無料でダウンロードすることができる。
    カメルーンのCARPEでは、Focal Point ManagerとしてAntoine Justin Eyebe氏と、Program OfficerとしてGuy Patrice Dkamelaが働いている。またカメルーンにおいては、WWFをはじめとしてWCS、CIFOR、そしてその他の現地NGO組織に資金提供を行っている。サポートの対象となるプロジェクトの実施国は、 カメルーン、コンゴ共和国、ガボン、赤道ギニア、中央アフリカ、コンゴ民主共和国の6カ国である。以下は、CARPEが資金援助を行っている保護エリアと主なパートナーである。

    【保護エリア】

    • Monte Alen-Mont de Cristal Inselbergs Forest Landscape: Mt. Seni and Mbé (ガボン、赤道ギニア)
    • Gamba-Conkouati Forest Landscape: Loango, Moukalaba-Doudou, Mayumba and Conkouati (ガボン、コンゴ共和国、コンゴ民主共和国)
    • Lope-Chaillu-Louesse Forest Landscape: Lope, Waka and Dimonika (ガボン、コンゴ共和国)
    • Dja-Minkebe-Odzala Tri-National Forest Landscape: Boumba-Bek-Nki, Minkebe, Mwangé, Ivindo and Odzala (カメルーン、コンゴ共和国、ガボン)
    • Sangha Tri-national Forest Landscape: Dzanga Sangha, Nouabale Ndoki and Lobeke (カメルーン、コンゴ共和国、中央アフリカ共和国)
    • Lac Tele-Lac Tumba Swamp Forest Landscape: Lac Tele and Lac Tumba (コンゴ共和国、コンゴ民主共和国)
    • Bateke Plateau Forest-Savanna Landscape: Mpassa and Haute Ogooue (ガボン、コンゴ共和国)
    • Meringa Lopori-Wamba Forest Landscape: Maringa-Lopori and Wanga(コンゴ民主共和国
    • Salonga-Lukenie-Sankuru Forest Landscape: Salonga(コンゴ民主共和国)
    • Maiko-Lutunguru Tayna-Kahuzi Biega Forest Landscape: Maiko and Kahuzi-Biega(コンゴ民主共和国)
    • Ituri-Epulu-Aru Forest Landscape: Okapi (コンゴ民主共和国)

    CARPEのパートナーとされている機関・組織は以下の通りである。
    World Wildlife Fund-US, the Wildlife Conservation Society, Conservation International, the African Wildlife Foundation, the Jane Goodall Institute, World Resource Institute, Innovative Resources Management, the Missouri Botanical Garden, the Dian Fossy Gorilla Fund International, the Bonobo Conservation Initiative, the World Conservation Union/ IUCN, the Smithonian Institution, the U.S. Forest Service, NASA/ University of Maryland, the Peace Crops, the U.S. State Department, the U.S. Department of Agriculture, and the U.S. Fish and Wildlife Service

    CARPE-Cameroonの所在地
    CARPE Cameroon Program Office c/o WWF-CARPO P.O. Box 6776 Yaounde-Cameroon
    Tel. Fax; (237) 221-9712

    ⑤ GTZ (Deutsche Gesellschaft für Technische Zusammenarbeit)

    ドイツ政府の開発援助組織であるGZTは1975年に設立され、世界中の発展途上国で開発プロジェクトを展開している。現在、中央アフリカにおいては、カメルーンのヤウンデ、中央アフリカ共和国のバンギ、コンゴ民主共和国のキンシャサの3支部がある。カメルーンのヤウンデ支部は1980年に設立され、中央アフリカ諸国のプロジェクトを総括している。支部長であるHessameddin Tabatabaüを含むドイツ人専門家が12名、カメルーン人専門家が17名、そしてさらに96名のカメルーン人スタッフが働いている。とくに、「環境」、「保健衛生(エイズ)」、「地方分権の促進」の3つの分野に力を入れて援助を行っている。カメルーンの国内には7つの地方事務所(西部のドゥアラDouala、ブエアBuea、ムンデンバMundemba、マンフェMamfe、中部のバフサムBafousam、北部のマルアMaroua、東部のヨカドマYokadomaがあり、地方政府をサポートしながら、さまざまな活動を行っている(プロジェクトと担当者については以下参照)。

    【現在行われているプロジェクト名と担当者 (2003-2007年)】

    • 「地方分権と地域開発」 Marie- Antoinette Bour
    • 「西部州の開発計画」 Flaubert Djateng
    • 「北部州の開発計画」 Léopold Nana
    • 「中部州の開発計画」 Prioietti Claudio
    • 「地方経済」 Siebrecht Detleff, Schill Petra
    • 「地方分権」 Cosmas Cheka
    • 「貧困削減戦略」 Gerald Schmitt
    • 「自然資源の持続的な利用計画」 Klaus Mersmann
    • 「自然資源の経済・エコツーリズム」 Eberhard Götz
    • 「自然資源の持続的管理」 Vincent Ndangang
    • 「生物多様性管理」 Klaus Schmidt-Corsitto, Eva Gonnermann
    • 「自然資源の有効利用」 Matthias Heinze, Jean Paul Gwet
    • 「ドイツ系カメルーン人の保健衛生とくにエイズの問題」 Andreas Stadler
    • 「地方分権確立の援助」 Yondo David
    • 「思春期・青年の性と健康」 Flavien Ndonko
    • 「地方コミュニティのキャパシティ形成 」 Ahawo Komi Alain
    • 「優先プログラムの援助」 Jürgen Noeske
    • 「医療制度の充実化」 Josef Riha
    • 「Phytosanitaire戦略の再検討」 Joost Gwinner
    • 「アフリカにおけるPhytosanitaireをめぐる政治的調整」 Matthias Zweigert
    • 「獣疫のコントロールにむけたパン・アフリカ計画」 Hens Krebs
    • 「北西部地方の開発計画」 Tima Grace

    東部州における熱帯雨林保護関係のプロジェクトは、ヨカドマ地区の担当(Matthias Heinze)であり、ここでは、住民に対する環境教育と並行して、保護区域周辺の村落調査や、非木材森林産物(NTFP)の調査、伐採活動のモニタリング、衛星画像とGISを使った森林環境解析などの調査活動を行っている(GTZによる調査報告書の一部は巻末資料を参照)。

    【GTZ-Cameroonのヘッド・オフィス】
    Bureau de la GTZ à Yaoundé
    74, Rue 1.788 Bastos B.P. 7814 Yaoundé, Cameroon
    Tel: (237) 221-23-87, (237) 220-94-40
    Fax: (237) 221-50-48
    E-mail: gtz-kamerun@cm.gtz.de


    (3) その他の機関・組織

    以下の組織は、現在では熱帯雨林に関する調査に直接に関係するわけではないが、資料の収集や共同研究の推進のために必要な情報、研究情報の収集場所として利用できる組織である。

    ⑥ IRD (Institut de Recherche pour la développement)

    旧ORSTOM(海外科学技術研究庁)が改組された組織で、主な目的は、海外とくに旧フランス統治地域において、人間と自然の関係に重点をおいた持続的発展に関する調査研究を実施するとともに、それに関連する専門家派遣と人材養成をおこなうことである。
    IRDの前身であるORSTOMは、カメルーンにおいても、自然、社会、文化の広い範囲にわたって調査活動を展開してきた。カメルーンの植生図や地誌アトラスなど各種資料の作成や、社会、経済、文化などさまざまな分野に及ぶ基礎資料の多くは、前身であるORSTOMの成果である。しかし最近になって、カメルーンにおける活動は大幅に縮小し、現在では、マラリア、トリパノゾーマ、HIVなど、主として医学・保健分野を中心に活動がつづけられている程度である。
    しかし、かつてのORSTOMが作成し、収集した、1万点を越える膨大な文献・資料が現在でもIRDのヤウンデ支所の図書室に保管されており、カメルーンで調査をする者にとっては貴重な情報源となっている。これらの資料は、生態学、生物学、林学、土壌学、農学、地理学、熱帯学などの自然科学や、言語学、歴史学、人類学、建築学、経済学などの社会科学など、多岐にわたっており、関心のあるテーマを司書であるMbarga Eaher女史に告げると、保管場所に案内してくれる。また、IRDの出版物のカタログ(1947-1974, 1984-1993, 1995,1999-2000, 2003)もあり、これを手がかりにして見たい出版物を閲覧することもできる。

    【IRD-Yaoundéの住所】
    Institute de Recherche pour Developpement
    BP 1857, Yaounde, Cameroon
    Tel; (237) 220-15-08 Fax; (237) 220-18-54

    ⑦ 国立植物標本館(Herbier National)

    カメルーンにおける植物学的調査の発展には、フランス人研究者のRene Loutzey博士が多大な貢献をしている。1945年にカメルーンを訪れ、植物相の調査をおこなったLoutzeyは、カメルーンの森林地帯において多数の植物の採集を行い、それをもとに、1948年にフランス植民地政府の農業省の建物の中に小さな植物保管庫を作った。これがカメルーンのハーバリウムの始まりであり、これをもとに、カメルーン独立後にフランスの援助によって国立のハーバリウムが作られた。
    現在ここでは、所長であるAchoundong Gaston氏を含む5名の植物学者(専門については以下参照)と3名の技官が働いており、植物標本の管理や同定の作業をはじめ、国際機関や海外のハーバリウムとの共同プロジェクトを行っている。ここには現在、232科8,000種、約80,000点の植物標本が保管されている。これらは、依頼された植物の同定を行う際に参照されたり、主にヤウンデ大学やチャン大学の植物学者の学生に利用されている。
    1998年から始められたIRD (Institute of Research for Development、旧ORSTOM、フランスの海外調査機関)との共同プロジェクトは、ハーバリウムに保管されている植物標本のデータベースを作成するというもので、現在も進行中である。また、1996年からイギリスの王立植物園と「西カメルーンの植物相(Flora of West Cameroon)」に関する共同プロジェクトを行っている。オク山( Mt.Oku )やクペ山( Mt.Koupe )、バリ・ゲンバ森林保護区(Bali Ngemba Forest Reserve)などではいくつかの新種が発見されている。
    また、2002年にはイギリスの王立植物園がヤウンデにおいて、ハーバリウムの運営に関するワークショップを開いた。ここでは、中央アフリカ各国のハーバリウムから植物学者が招かれ、植物標本の管理やそれに関する国際的な取り決め、ハーバリウム間のネットワーク形成について3ヵ月間に及ぶ議論が行われた。これより、カメルーンのハーバリウムでは、海外のハーバリウムとのネットワーク形成を進め、海外の専門家に所蔵の植物標本を送り、同定を依頼することによって、“Flore du Cameroun”(37巻まで出版)の作業を進めている。
    カメルーンで採集した植物標本は、ここで同定を依頼することができる。同定料は、あらかじめ認められた研究協力者(ハーバリウムに標本を提供する植物学者等)のものは無料であるが、ふつうの研究者は1点あたり500FCFAとなっている。しかし、学生の場合は、標本の多少にもよるが、交渉によって少し安くしてもらえる。

    【スタッフと専門の分類群】
      Achoundong Gaston所長(専門はViolaceae)
      Jean Michel Onana博士 (Burseraceae)
      Nicole Cuedje博士(Garcinia lucida, Guttiferae の植物生態学)
      Barthelemy Tchiengue 博士(Guttiferae)
      Jean Paul Ghogue博士 (Scrophulariace)

    ⑧ 国立古文書館(Archive Nationale)

    国立古文書館には、カメルーンがドイツ領となった1884年からフランス・イギリスの統治時代を経て、さらには独立後から現代に至るまでの政府刊行物や新聞記事(下記参照)などが保管されている。 場所は、ヒルトン・ホテル裏の高台にあるヤウンデの官庁街の一角で、平屋建ての古めかしい建物である。古文書館の脇にあるレセプションで担当官であるTchantchen Jean Bosco氏に調査項目を告げると、項目ごとに分かれた棚から目録を引き出してくれる。目録は、行政、防衛、法律、法令、政令、経済、教育、人口、保健衛生などの項目に分かれており、これらの項目から資料を探して請求すると、担当官が書庫から持ち出してきてくれる。コピーを頼むことも出来る。また、直接に書庫に入りたい場合は、責任者であるMbida Christophe氏に許可をもらう必要がある。

    【閲覧可能な新聞】

    • LA PRESSE DU CAMEROUN (1930~)
    • L’EVEIL DU CAMEROUN (1938~)
    • LE MESSAGER (1970~)
    • NOUVELLE EXPRESSION (1972~)
    • CAMEROON TRIBUNE (1975~)
    • LA PATRIOTE (1989~)
    • LA VOIR DU PAYSANG (1989~)
    • L’ANNECDOTE (1998~)

    【連絡先】
      Ministère de la Culture, Direction du Patrimonie, Yaounde
      Tel: (237) 223-00-78

    ⑨ ヤウンデ第一大学人文社会学部における研究・教育

    ヤウンデ第一大学(Université de YaoundéI)はカメルーンを代表する大学で、ここの人文社会学部と京都大学アジア・アフリカ地域研究研究科の間には、2003年にMOU(学術交流に関する覚え書き)が交わされている。また、かつてカメルーンにおける人文社会科学研究の中心であり、東京外国語大学のAA研とも交流があった人文科学研究所(ISH)が解体されたあと、ここに職場を得た研究者もあり、わが国の研究者と浅からぬ関係をもっている。
    ヤウンデ大学の社会学・人類学科(Sociology and Anthropology Department)は初代教員にValentin Nga Ndongo氏を迎えて、1975年にまず社会学科として創設され、後に人類学科が併設された。社会学のコースと人類学コースは、それぞれが固有のプログラムをもつ。社会学、人類学ともに5年制(Level 1~5)で、3年生で学士号がとれる。さらに、4年生で修士を出す資格が与えられる。しかし、実際はフィールドへ調査する期間も含めると修士を取るのに最低でも5年、博士だと7-8年かかる。現在、社会学のコースには、420名の1年生、300名の2年生、250名の3年生、120名の4年生、20名の5年生がいる。また、人類学科には、200名の1年生、175名の2年生、130名の3年生、100名の4年生、10名の5年生が就学している。このうち人類学コースの4年生には、中央アフリカ共和国からの留学生が2名いる。
    社会学科においては、Valentin Nga Ndongo助教授をはじめとする6名の教官が、人類学部では開発人類学などの分野で知られたPaul Nkwi Nchoji教授をはじめに5名の専任教師が教鞭をとっている(教官と研究テーマは以下を参照)。社会学、人類学ともに3年で学士号をとって卒業する学生が最も多く、近年はカメルーン政府の役人となる者とともに、WWFやGTZ、FAOなどの国際機関・NGOで働く学生が増えている。また、修士号をとり、カメルーン政府や国際機関専属の調査員として働く学生も出てきている。博士在籍の学生の多くは、ヤウンデ大学を終えた後、フランスやベルギーに留学して博士号を取得し、カメルーンに戻ってきて大学の教員を目指す者が多い。
    現在、人類学コースの5年生に在学し博士取得を目指している学生は全員、カメルーンの都市や地方でフィールドワークを行っている。研究テーマは、「コンドームの受容」や「社会福祉とコミュニティの開発」、「HIVと呪術」、「伝統食にみる近代化の影響」など現代的なテーマを扱ったものと、「首長社会におヵる儀礼」や「仮面と彫刻」、「伝統医療」などのようなクラッシクな人類学のテーマを扱ったものがある。
    学生の研究テーマは就職を意識したものが多いが、在学中にNGOや政府に依頼された調査を行うこともある。例えば、人類学部のMbonji助教授はLEAAA(Laboratory of Ethnology and Anthropology Applied to Africa)というNGOを運営しており、そこでは政府やNGOに依頼された調査を学生の協力を得て行っている。とくに、「家庭内暴力」や「売春婦」、それに熱帯雨林の薬用植物に関する「伝統的知識」などについての調査を行い、得られた資料を政府やNGOに提供している。

    【社会学部教官と研究テーマ】

    • Valentin Nga Ndongo 助教授・主任(政治社会学、コミュニケーション論)
    • Jean Mfoulou 助教授(政治社会学)
    • Jacqueline Ekambi Moutome講師(都市人類学、女性学)
    • Joseph Marie Zambo Belinga講師(政治社会学)
    • Joseph Epéé Ekwalla講師(労働社会学、組織の社会学)
    • Jean Nzhié Engono講師(教育社会学)
    • Patrice Onana Onomo助手(開発社会学、宗教社会学など)
    • Paulette Marie-Odile Beat Songue非常勤講師(現代社会の社会学)
    • Nassourou Saibou非常勤講師(儀礼の社会学)
    • Chinji Kouleu非常勤教授(農村社会学)
    • Godefroy Ngima Mawoung非常勤講師(社会科学の方法論、農村社会学)

    【人類学部教官と研究テーマ】

    • Paul Nkwi Nchoji教授、人類学部主任(政治人類学、医療人類学など)
    • Mbonji Edjenguele助教授(文化人類学、開発人類学など)
    • Godefroy Ngima Mawoung講師(社会人類学、経済人類学など)
    • Luc Mebenga Tamba講師(社会人類学、社会科学の方法論)
    • Celestin Ngoura 講師(言語人類学)
    • Jean Nzhie Engono非常勤講師(環境人類学、開発論)
    • Antoine SOCPA助手(医療人類学、社会人類学、経済人類学など)
    • Patrice Onana Onomo助手(宗教人類学)

    【所在地】
      Département de Sociologie et Anthropologie, Université de Yaoundé I
      B.P. 755 Yaoundé, Cameroon

    ⑩ 日本人研究者が共同利用するフィールド・ステーション
     ドンゴ村のフィールド・ステーションにおける衛星通信のテスト

    WWF-GTZとの共催による現地セミナー
    現在、国立公園の設置計画が進行中のカメルーン東部州、ブンバーンゴコ(Boumba-Ngoko)地区における日本人の調査は、1993年に始まった。当初、隣接するコンゴ共和国の熱帯雨林地域において、「熱帯雨林の持続的利用に関する研究」を進めていた京都大学の研究グループは、コンゴにおける政変の勃発とそれに伴う政情・民情の混乱のために、調査地を急遽カメルーンに変えて、コンゴと国境を接した東部州の熱帯雨林地域において、焼畑農耕民、狩猟採集民による森林利用に関する研究に着手した。その翌年には、浜松医科大学の佐藤弘明教授のグループ、さらに1996年には神戸学院大学の寺嶋秀明教授らのグループがあいついでカメルーン東部州の熱帯雨林地域での人類学的調査に加わり、この地域の調査研究がにわかに活況を呈してきた。研究のテーマも、「狩猟採集活動」や「民族植物学」、「焼畑農耕システム」等の当初からのテーマに加えて、「精霊パフォーマンスの行動学的研究」や、「歌と踊りに見られる社会的相互作用」、「乳児期における母子関係と養育行動」、「子どもの遊びと学校教育」、「食生活と栄養」、「狩猟採集民の運動生理学」、「人間居住・農耕活動の歴史と植生変化」、「焼畑による森林の循環的利用」、「自然保護計画が地域住民に及ぼす影響」など、多岐の分野に拡がっていった。
    このような調査活動の興隆をうけて、基地となる施設の必要性が高まってきた。すなわち、付近に住む狩猟採集民、焼畑農耕民に関する調査をおこなうとともに、集めた資料・標本を整理したり、情報交換や簡単なセミナー等をおこなうことができるようなスペースが必要と感じられるようになった。このような状況の下で、1990年代の末に、浜松医科大学、神戸学院大学、そして京都大学の研究者らによって、コンゴ共和国との国境を流れるDja-Ngoko川のほとりのNdongo村の近くに、現地素材を利用した家屋が建設された。Ndongo村は、Boumba-Ngoko県南部の中心地Moloundou市から西に40kmほどDja川をさかのぼったところにある。
    2002年に京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究科において、21世紀COEプログラム「世界を先導する総合的地域研究の拠点形成:フィールド・ステーションを活用した臨地教育・研究体制の推進」がスタートしたが、副題が示すように、このプログラムの重要な柱として、アジア・アフリカの各地にフィールド・ステーションを設け、そこを拠点としてフィールドワークとそれを通しての臨地教育を推進する計画があった。カメルーンでは当時すでに京都大学だけからでも、10人前後の研究者や大学院生が狩猟採集民のバカやバントゥ系、東アダマワ系の焼畑農耕民社会の調査に関わっていたが、これらの学生の調査を支援するために、ドンゴ村にフィールド・ステーションが設けられることになった。実際には、すでにあった調査拠点の家屋を増築・拡充したほか、太陽光による発電設備や衛星電話、コンピュータ、及びそれらを使ってフィールドと日本の研究室を結ぶための通信システム等を整備した。このフィールド・ステーションは、その後も、ジャー川流域を調査するための大型カヌーや船外機、出力のより大きな石油発電機などが整備され、しだいに「調査基地」としての体裁を整えていったが、その背後には、京都大学のみならず、前述した浜松医科大学、神戸学院大学をはじめ、東京大学、山梨大学、山口大学、静岡大学、東京都立大学など、多数の研究者の協力があった。現在でも、この基地は、これらの大学の研究者・学生の共同利用に供されている。
    一方、1980年代後半から、カメルーン東部の森林地帯では、経済危機とそれにつづく構造調整の影響を受けて、換金作物であるカカオの栽培や外国資本による森林伐採が急速に拡大した。また、伐採事業に伴って整備された道路網を使って、野生獣肉の取引が盛んになってきた。このような熱帯雨林生態系の破壊につながる変化に対して、自然保護を訴える国際世論が高まり、1990年代からは、WWFをはじめ、WCS(野生生物協会)、GTZ等の国際保護団体や援助組織がこの地域の熱帯雨林の保護活動を始め、保護計画のために必要な調査に乗り出した。
    日本人による調査は、これらの保護活動に対して、やや距離をおいたところでつづけられてきた。とくに、森林とその資源に強く依存する住民の生活や社会について研究してきた関係から、住民による森林利用を著しく制限するような保護計画に対しては批判的な立場をとってきた。それにもかかわらず、調査地域で強い力をもつこれらの保護団体やそれと連携するカメルーン森林環境省などと無関係に調査がつづけられるわけではない。実際に、保護計画の対象地域は保護区の周辺地域にまで及んでおり、そこで調査をする場合には、どのような形であれ、これらの団体や政府組織の承認が必要となったからである。同時に、保護計画の推進者のあいだにも、地域社会の文化や生活について豊富な調査経験をもつ日本人の関与を求める声があった。このような状況の中で、2003年12月に、WWF、GTZ、MINEF等の保護計画の関係者らがあつまる現地セミナーが開催された。そこでは、京都大学の大学院生2名によって、それぞれ、Nature Conservation Project and Hunter-gatherers' Life in Cameroonian Rainforest"、及び"Sustainable Plantain Production by Shifting Cultivators in the Secondary Forest of Southeastern Cameroon"という表題で発表がおこなわれた。これらの報告では住民側の立場にたって、”Tropical Forest International”が描く住民像(住民=生活困窮者=森林破壊者)や、それに則って進められる保護計画に対する批判的な見方が披露された (詳細についてはHP参照)。 当然ながら、保護推進者の側からは反発の声があがったが、それにもかかわらず、このセミナー自体の意義については双方が認めるところとなり、第2回目が2005年2月16日に今度は首都のヤウンデで、より広い範囲の関係者を集めて開催されることになった。保護推進側は、これを現地住民に関する理解を深める場としており、日本側にとっては、自分の研究とその意義をより広い場で訴える機会となっているが、これが単に保護推進側のアリバイ作り、すなわち、住民に対して一定の理解をもつことを示す機会として使われるだけに終わらないようにしたいものである。

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    6. 付録
     -カメルーン東部州の熱帯雨林保護計画に関する収集文献リスト(WWFその他による報告書)-

    動物相や植物相に関する調査

    Bobo Kadiri Serge & MarcLanguy 2000 Inventaire ornithologique dans le parc national du Mbam-Djerem, Birdlife International, pp.34.
    Davenport, T. 1998. The Butterflies of Lobeke Forest: An Annotated Species Checklist for the Proposed Protected Area. WWF Cameroon; pp.10+annex
    Ekobo, A. 1998. Large Mammals and Vegetation Survey in the Boumba-Bek and Nki Project Area. WWF Cameroon, pp.124. Harris, D. 1999. Lobeke: Botanical Inventory. WWF Cameroon, pp.146.
    Usongo, Leonard and Robinson, P.N. 2000. Towards Establishment of an Ecological Monitoring Program in Proposed Lobeke National Park SE Cameroon. WWF Cameroon, pp.59.
    MINEF-WWF 2000 Atelier régional sur la gestion des éléphants de forêt en Afriue centrale. MINEF-WWF, pp.56 + English summary.
    Ngenyi, A. 2002. Preliminary Report on the Situation of African Grey Parrot (Psittacus erithacus) in Lobeke National Park, SE Cameroon. WWF Cameroon, pp.34.
    Ngenyi, A. 2002. Report on Activities of Foraging Flock and Captured Trend of African Grey Parrots in the Lobeke Forest. WWF Cameroon, pp.41.
    Nkongmeneck, B-A., 1999. The Boumba-Bek and Nki Forest Reserves: Botany and Ethnobotany, WWF-Cameroon, pp. 146.
    Dongmo,Z-L Nzooh 2001. Dynamique de la faune sauvage et des activités anthropique dans la réserve de Biosphere du Dja et ses Environs. ECOFAC-Cameroun, pp.75.
    Stromayer, K. A. K. and A. Ekobo 1991. Biological Survey of South East Cameroon. WCI-Cameroon. WWF-Cameroon & MINEF, 1994. Conservation des population d’èlephants d’Afrique à Boumba- Bek, Cameroon, pp.21.


    非木材森林産物・ブッシュミート・エコツーリズム等に関する調査

    Davenport, T. and L. Usongo 1997. Eco-tourism in Lobeke Forest South East Cameroon, WWF Cameroon, pp.21.
    Delvingt, Willy 1998. Commercialisation des produits de la chasse dans la zone périphérique nord-est de la réserve de faune du Dja (Cameroun). Faculté Universitaire des sciences agronomique de Gembloux. Pp.72 + annex.
    Jeanmart, Ph. 1997. Edude de la chasse villageoise dans la forêt de Kompia. EC, pp.32+annex.
    Jell, B. 1998. Utilization des produits secondaires par les Baka et les Bangando dans la région de Lobéké au Sud-East Cameroon. GTZ Cameroon.
    Makazi,C., T. Davenport and E..K. Djeda 1998. Non Timber Forest Products (NTFPS) in Lobeke Forest South East Cameroon, WWF Cameroon, pp.11.
    Makazi,C., L. Usongo and E..K. Djeda 1998 Indigenous Aquatic Resource Use in the Lobeke, South East Cameroon. WWF Cameroon. Ngenueu P. R. & Fotso R. C. 1996. Chasse vilageoise et conséquences pour la conservation de la biodiversité dans la réserve de biosphere du Dja. ECOFAC, pp.25.
    Ngandjui, G.1998.Etude de la chasse en vue de sa gestion durable cas du site Sud-est Cameroun GTZ, pp.70.
    SE Forest Project 2002. Assessment of Eco-tourism: Potentials of Protected Areas in South East Forest Region Cameroon. WWF Cameroon, pp.48.
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