海外学術調査フォーラム

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  • VI 極地・北ユーラシア・ヨーロッパ
  • VI 極地・北ユーラシア・ヨーロッパ

    座長藤田 耕史(名古屋大学大学院環境学研究科)
    三浦 英樹(国立極地研究所)
    情報提供講師斉藤 和之(海洋研究開発機構)
    タイトル「ロシア・シベリアでの永久凍土調査」

     極地・北ユーラシア・ヨーロッパ分科会は、名古屋大学大学院環境学研究科の藤田耕史教授、国立極地研究所の三浦英樹准教授を座長として、参加者8名(AA研所員2名を含む)にて開催された。参加者全員による自己紹介の後、国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)の斉藤和之氏により、「ロシア・シベリアでの永久凍土調査」というタイトルで情報提供をいただいた。

     今回のトピックは、情報提供講師の斉藤氏ほかによる永久凍土調査の概要報告およびロシアにおける調査に関する情報提供であった。調査は環境省委託研究・環境研究総合推進費課題「永久凍土大規模融解による温室効果ガス放出量の現状評価と将来予測」によって遂行中のもので、2018年夏季の調査予定も含めた概要をご報告いただいた。具体的な研究内容に加え、ロシア連邦サハ共和国におけるフィールドワークの特徴、問題点についても情報提供していただき、専門分野外の参加者にとっても理解しやすく、また当該地域の問題点に関する情報を交換しあえるきっかけとなる内容であった。

     斉藤氏が取り組んでいる永久凍土調査は、JAMSTECほか国立環境研究所、北見工大、アラスカ大学等の日本人研究者が、ロシア科学アカデミーシベリア支部の下部組織であるInstitute for Biological Problems of Cryolithozone、Melnikov Permafrost Instituteを研究協力者に迎えての、ロシア連邦サハ共和国をフィールドとする調査である。この調査では凍土の動態を考慮した将来予測、凍土融解メカニズムの評価、凍土中の有機炭素量の把握という3点を目的としたものであり、とくにこれまでの永久凍土調査においては見過ごされてきた高含氷永久凍土(エドマYedoma, 巨大氷楔)を調査対象としている点が大きな意義をもつという。このエドマには高濃度のメタンが含有されている。メタンは温室効果能が大きいため、通常の凍土融解によっておこるCO2排出に比べ反応・変化が大きいこと、また融解には人為的な影響も見られることから、温暖化の予測のためにも詳細な調査が必要とされる対象であるという。そこでエドマによるサーモカルストの形成、その融解と、エドマ融解を誘発する原因となりうる(主に人間が関与して発生する)自然火災や森林伐採がどの程度影響を及ぼしているのかといった点についてわかりやすく報告がなされた。併せて、アラスカ地域における現地調査との違い、現地へのアクセス、カウンターパートとなる現地研究所との協力関係、試料(資料)の持ち出し可否に関する情報等も報告があり、参加者が対象とする他地域との違いについて有意義な情報交換ができた。


    (報告: 山越 康裕(AA研))