海外学術調査フォーラム

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  • II 島嶼部東南アジア・太平洋
  • II 島嶼部東南アジア・太平洋

    座長髙樋 さち子(秋田大学教育文化学部)
    田所 聖志(秋田大学大学院国際資源学研究科)
    情報提供講師安藤 勝彦(元・製品評価技術基盤機構 バイオテクノロジーセンター 技監)
    タイトル「アジアにおける微生物調査と収集微生物の輸入などの取扱について」

     情報提供者である、前(独)製品評価技術基盤機構(NITE)バイオテクノロジーセンターの安東勝彦先生は、「アジアにおける微生物調査と収集微生物の輸入などの取り扱いについて」と題した発表を行った。これは、海外での微生物収集に関わる手続きに関するもので、NITEでの菌株収集調査の経験、とりわけインドネシアでのプロジェクトを事例にしながら、基本的な流れと、その中で押えておくべき重要なポイント等が解説された。

     海外で遺伝資源を採集しようとすれば、生物多様性条約(CBD)、名古屋議定書、ABS指針を考慮する必要がある。インドネシアとは、事前の情報に基づく同意(PIC)そして相互に合意する条件(MAT)を得る事から始まった。どのような組織をパートナーとするかが、こうした手続きやその後の研究にいたるまで、大きく影響する。このプロジェクトでは、菌株の採集とその後の各プロセスを、インドネシア人の研究者と共に行なった。そのことによって技術移転が期待でき、相手国にも喜ばれた。菌株を日本へ移動させる上では、サンプルの細かい属性を記したリストなどの書類が必要となり、それらに相手の組織と合意し互いにサインした。なお、日本に採集物を移した後も、インドネシアから研究者を招いた。このことによって菌が適切に利用されていることをインドネシア側に理解してもらうこともできた。最後には、報告会、ワークショップにくわえて報告書を作成した。この報告書も相手となる組織に利益を還元できるポイントとなった。

     なおこのインドネシアの事例を他の国に簡単に応用することはできない。それぞれの国の制度に合わせる必要がある。発表では、相手国のABS指針の状況などを調べるうえで有用な情報源として、ABS-Clearing Houseのサイトが紹介された。ここには、対応窓口や関連する法律などの情報が集約されている。

     フロアーからは、出席者たちが関与しているプロジェクトや現在計画中のプロジェクトについての具体的な相談が多く寄せられ、活発な議論がなされた。研究を進めるなかで途中で商業利用の可能性が出てくるケース、過去に日本に持ち込まれ長期保存されている遺伝子資源のケースなどもある。その時々で新たな書類が必要となってくるが、はじめの段階で、ある程度多様な場面に対応できるような条件で合意しておくと便利であることなども助言された。


    (報告: 吉田 ゆか子(AA研))