海外学術調査フォーラム

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  • VI サハラ以南アフリカ
  • VI サハラ以南アフリカ

    座長曽我 亨(弘前大学人文学部)
    河合 香吏(AA研)
    話題提供者大山 修一(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)
    タイトル「西アフリカ・サヘルにおける農耕民と牧畜民の関係」

     サハラ以南アフリカ分科会には17名が参加し、大山修一氏(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)が「アフリカでの安全対策」と「西アフリカ・サヘルにおける農耕民と牧畜民の関係」と題する2つの話題を提供し、それらを巡って参加者全員による議論が行われた。

     前半の「アフリカでの安全対策」では、まず、大山氏が所属する京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科で講じられている様々な安全対策 ―― 特に大学院生をアフリカ各地に派遣する際の安全対策 ―― が紹介された。その内容は、渡航者への事前の情報提供の在り方や、海外旅行保険への加入の義務化に纏わる諸問題、予防注射や携行薬の情報など多岐に亘ったが、その後に続いた参加者全員での議論においては、特に個人・団体で加入する海外旅行保険の扱いについて、活発な情報交換がなされた。

     後半の「西アフリカ・サヘルにおける農耕民と牧畜民の関係」では、最初に2001年以降の西アフリカ・サヘルの治安情勢の概況が紹介され、その後、ニジェール共和国の大山氏の調査村における農耕民と牧畜民との関係性が説明された。特に雨季や収穫期に緊張が高まる両者の関係について、大山氏は、両者の衝突の具体的な事例や衝突の諸原因(人口増加や土地・資源の競合など)を解説しながら、そうしたコンフリクトの激化を回避するために両者が講じている方策についても詳説した。更に、大山氏自身が調査村において実践しているコンフリクト予防の試みとして、都市で発生する大量の生ごみを肥料として利用し、村周辺の放棄地に牧草地を作るという活動が紹介された。そして、雨季や収穫期に牧畜民と農耕民との間に物理的な距離を生み出すことのできるこの方法が、家畜の食害に起因する両者のコンフリクトを回避することに寄与し得るのではないかとの展望が示された。以上の内容を受け、大山氏と参加者との間の質疑応答および参加者全員での議論が行われたが、そこでは、大山氏の調査地域における人口増加および畑地の拡大の原因、散布する生ごみに混入するビニールの問題、作られた牧草地の使用権や持続可能性の問題、農耕民が放棄地を農地として利用する可能性、調査地に「返す」ことを重視した実践的地域研究の在り方などについて様々な意見が交わされた。


    (報告:苅谷 康太(AA研))