海外学術調査フォーラム

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    座長伊藤 元己(東京大学大学院総合文化研究科)
    梅崎 昌裕(東京大学大学院医学系研究科)
    話題提供者門司 和彦(長崎大学大学院国際健康開発研究科)
    タイトル「ラオスにおけるエコヘルス研究:Health and Demographic Surveillance Systemの構築」

     門司氏が過去25年以上携わってきたHealthandDemographicSurveillance System(HDSS)の構築について話題提供が行われた。

     HDSSは、姓名表記、住所、生年月日などが不確かな途上国の一定地域で、地域人口の静態と動態を把握し、合わせて、主に健康イベントを把握することにより、地域の死亡や出生の状況、健康水準の変化とその要因を把握するための方法である。途上国での人口学的、疫学的調査方法としてはオーソドックスなものであるが、日本では認知度が低い。HDSSは、比較的広範囲に居住する集団の環境・社会・生業の動向調査にも応用可能であり、人口学、疫学、公衆衛生学以外の領域でも有効な活用が期待できる。そのため、HDSSは、環境とその地域に住む集団の健康は切り離してとらえることができないという仮説(エコヘルス仮説)を検証するのにも、有力だと考えられる。究極的には、それぞれの地域で生活している人々の健康と生活が改善される方策を探ることにも繋がる。門司氏はこれまでこの手法で(1)ラオス水田地帯のタイ肝吸虫症、(2)ラオス・ベトナム山間部(少数民族)のマラリア、(3)バングラデシュ低地の下痢症を対象とする研究を行ってきた。

     話題提供の中では、上記の試みの紹介とともに、HDSSとは異なる手法、特に人類生態学フィールド研究(個人による小集団の総合的で詳細な観察研究)との比較など、多様な事柄が述べられた。

     発表後の質疑応答では、(1)このアプローチにおいては、観察と住民の健康改善のどちらに比重がおかれるのか、(2)研究を遂行するために必要な予算規模はどのくらいか、(3)このシステムがビジネスに結びつく可能性はあるのか、(4)地域住民は動向調査をどのように受け止めているのか、などの点について議論が行われた。

    ※参加者18名


    (報告:塩原 朝子(AA研))