海外学術調査フォーラム

  • ホーム
  • next_to
  • 過去のフォーラム
  • next_to
  • 2012年度
  • next_to
  • VI サハラ以南アフリカ
  • VI サハラ以南アフリカ

    座長曽我 亨(弘前大学人文学部)
    深澤 秀夫(AA研)
    話題提供者小川 さやか(国立民族学博物館)
    タイトル「都市世界の流動性・匿名性を捉える―タンザニアでの調査を事例に」

     平成24年度海外学術フォーラム・地域分科会「VI サハラ以南アフリカ」には、話題提供者の小川さやか氏をはじめとする14名が参加した。

     まず小川氏が「都市世界の匿名性・流動性を捉える―タンザニアでの調査を事例に」と題して話題提供を行った。

     話題提供においては、まず小川氏が調査対象としているタンザニア連合共和国北西部の地方都市であるムワンザ市の概況、アフリカにおける急激な都市化の進展、および「インフォーマルセクター」と呼ばれる都市雑業に従事する若者の増加という、研究テーマの背景が解説された。

     次いで「第I部 調査の準備」では、調査許可書の入手を含むタンザニアにおける調査に必要な各種手続き、科学研究費補助金をはじめとする調査資金、調査経費の内訳、マラリアなどの感染症に対する予防方法と罹患時の対応をはじめとした体調管理、タンザニアの治安状況と安全確保における注意点などに関する説明がなされた。

     「第II部 アフリカの都市でのフィールドワーク」では、小川氏の調査経験に基づき、匿名性・流動性の高いアフリカ都市における実践的なフィールドワークの方法についての解説がなされた。まず調査実施前に行う基本情報の収集、調査項目の選定と整理方法に関する説明がなされた。その後、ムワンザ市の路上で古着を商う小売商人、および彼らに古着を掛け売りしている中間卸売商人に対する小川氏の調査が紹介された。小川氏はムワンザ市の小売商人・中間卸売商人たちがグローバル資本主義経済の論理や、流動的で半匿名的な都市の人間関係に適合しながら、いかにして互いの生を保障し合う独自の商慣行のしくみと共同性を築き、変容させているのかという問題の解明を試みるにあたり、小売商人・中間卸売商人それぞれの立場で古着販売を実践しつつ、彼らの行動を観察するという手法を採用し、特に「ウジャンジャ(スワヒリ語で「ずる賢さ」「賢さ」といった意味を表す両義的な語)」という語に示される彼らの行動特性に着目して研究を進めた。

     質疑応答においては、小川氏が研究対象とした商人たちの行動特性や、フィールドワークにおける調査者と調査協力者との関係に関する活発な議論がなされた。また今後アフリカにおいて水質調査を予定している参加者からの質問に対して調査の進め方に対する提案がなされたほか、昨年度の地域分科会における情報提供がケニアにおける環境調査の際に役立ったという事例も紹介された。


    (報告:石川博樹(AA研))