海外学術調査フォーラム

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  • II 島嶼部東南アジア・太平洋
  • II 島嶼部東南アジア・太平洋

    座長梅崎 昌裕(東京大学大学院医学系研究科)
    髙樋 さち子(秋田大学教育文化学部)
    話題提供者須田 一弘(北海学園大学人文学部)
    タイトル「誰を食べるか、誰が食べるか-パプアニューギニアとトンガの食事情」

    島嶼部東南アジア・太平洋分科会は、東京大学大学院医学系研究科の梅崎昌裕准教授と秋田大学教育文化学部の高樋さち子准教授を座長として、参加者16名(AA研所員を含む)を得て開催された。

    梅崎氏司会の分科会前半では、まずは北海学園大学人文学部の須田一弘教授により、「誰を食べるか、誰が食べるか――パプアニューギニア・クボとトンガの食事情から見えるもの」と題して話題提供が行われた。これまで人類学的調査を行って来た諸地域の中から、クボの人々が暮らすパプアニューギニアとトンガを取り上げ、それぞれの生計維持活動の概要が紹介された。また、好対照な家畜食の習慣、前者で80年代頃まで行われていたエクゾカニバリズム(身内ではない敵を対象とする殺人・襲撃に伴う食人)を手掛かりとして、クボの人々の「求心性」とトンガの人々の「遠心性」というそれぞれの社会的・文化的特徴の一端に関する考察が示された。話題提供に続く質疑応答では、パプアニューギニアとトンガ両地域の生計維持活動や食習慣、衛生状況、さらには、カニバリズムやセクシュアリティに関する調査の実際や問題点などについて、議論がかわされた。

    司会が高樋氏に交代した分科会後半では、最初に参加者が自己紹介したあと、出席者が現地調査を行う際に直面した諸問題について、幅広く情報と意見の交換が行われた。大学院生による現地調査への公費支出の可否、日当支給の有無や金額など、現地調査に関する公費支出のあり方が、大学・機関によって異なることがとくに話題となった。現地調査の円滑な遂行の妨げとなっているような場合には、大学・機関を超えて研究者が協力し、支出のあり方を見直すように大学・機関担当部局に訴えていくことも必要ではとの考えが参加者から示された。また、地図が入手困難な「僻地」で現地調査を行う際に大きな助けとなる衛星画像について、情報の交換が行われた。用途・目的に応じて様々な質の衛星画像を比較的手頃な価格で入手することが現在可能になっていること、衛星画像は地図のもとになりうるだけでなく、それ以外にも現地調査・研究にとって有益な情報を提供するものであることなどが、出席者から指摘された。衛星画像の種類や入手・利用方法などについて活発なやりとりがかわされ、盛況のうちに散会した。


    (報告:太田信宏(AA研))