海外学術調査フォーラム

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  • VI サハラ以南アフリカ
  • VI サハラ以南アフリカ

    座長河合 香吏 (AA研)
    椎野 若菜 (AA研)
    話題提供者宮地 歌織 (長崎大学国際健康開発研究科)
    タイトル「リプロダクティブ・ヘルス分野における人類学調査と開発援助について」

     平成22年度海外学術調査総括班フォーラム・地域分科会「VIIサハラ以南アフリカ」には話題提供者の長崎大学大学院国際健康開発研究科の宮地歌織氏をはじめとする15名が参加した。

     まず宮地氏が「リプロダクティブ・ヘルス分野における人類学調査と開発援助について」と題して話題提供を行った。宮地氏はまず東京都立大学、JICA、NGO、長崎大学大学院国際健康開発研究科という、氏がこれまでに在籍した機関を対象として、調査手続き、健康管理、会計・予算、人権・倫理規定について、それぞれの長所短所の比較を行った。

     その後氏はリプロダクティブ・ヘルス、すなわち「家族計画・母子保健・思春期保健を含む生涯を通じた性と生殖に関する健康」に関して、他の研究資金に比べて研究者の裁量が認められている科学研究費補助金を用いた調査によって、ニーズの発掘、研究成果を活用した援助が実施できる可能性を指摘した。

     宮地氏は、そのような活動の実例として所属する長崎大学の2つの活動を紹介した。まず長崎大学熱帯医学研究所ナイロビ研究教育拠点の「草の根技術協力事業」(2008年12月~2011年12月)は、重大な保健医療・公衆衛生の問題である5つの分野 (医療サービスの仕組みの改善、HIV問題拡大への対策、マラリア対策、妊産婦・新生児対策、地域・住民への保健衛生教育)を3つの視点(人材育成、仕組みの構築、組織作り)から、地域住民が中心となり、問題解決に向けて考え、議論し、企画し、運営できる体制を整え、実行できるような 支援を展開するプロジェクトである。次に長崎大学熱帯医学研究所の金子聰教授が代表を務める科学研究費プロジェクト「アフリカ辺境村落の乳幼児の健康状況と社会環境・保健対策の実態:コホートによる研究」(平成22年度基盤研究B)は、疫学、社会人類学、医療人類学からアフリカの乳幼児の健康問題にアプローチするプロジェクトである。

     質疑応答においては、まず宮地氏が開発人類学を学んだイギリスにおける人類学と開発援助との関係が質問された。宮地氏によれば、文部科学省科学研究費補助金のような研究資金を得ることのできないイギリスでは、1980年代に資金獲得のため人類学会の主導によって開発援助プロジェクトに若手の人類学研究者を供給する試みが始められ、現在人類学研究者が開発援助に関わることは一般化しているという。このような宮地氏の指摘を受け、その後日本における人類学と開発援助との関わりについて宮地氏と出席者との間で議論が交わされた。


    (報告:石川 博樹(AA研))