海外学術調査フォーラム

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  • IV 南・西アジア・北アフリカ
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    座長飯塚 正人 (AA研)
    太田 信宏 (AA研)
    話題提供者辻上 奈美江 (高知女子大学文化学部)
    タイトル「サウディアラビアの調査事情―現状と今後の可能性」

    当報告の内容は著者の著作物です。

     本分科会では、2000~02年に在サウディアラビア日本大使館に専門調査員として赴任され、その後もサウディアラビアでの現地調査を続けてこられた辻上奈美江さん(高知女子大学)をお招きし、滞在経験に基づく調査事情の現状と可能性についてお話し頂いた。

     はじめに2000年から09年にかけての複数回の調査経歴に触れられた後、サウディアラビアの人口や面積、GDP、治安や気候など基本情報について話された。サウディアラビアでは公共の交通機関が発達していないため、移動の手段は主にタクシーとなるが、地元の人々による自動車の運転は危険であり、交通事故には注意が必要である。また近年に入り、ジェッダで洪水が起こるなど、自然災害には増加傾向が見られる。平均気温は高く、公式には夏季で最高42度とされるが、実際の体感ではそれ以上に感じられることもあるという。

     次に地域情報について、休日や礼拝、服装など中東地域独特の事情をご説明いただいた。イスラームでは集団礼拝が金曜日にあたるため、週休は木曜日・金曜日となる。またイスラーム暦に基づきラマダーン月と巡礼月は長期休暇となる。その前後の時期も含めて、現地の人々は勤務形態が不規則になるため、訪問調査には向かないという。日常では、一日5回の礼拝の時間帯に、それぞれ30分程度がすべての商店の閉店時間となる。女性が訪問する場合は、服装に注意が必要で、外国人でも黒のアバーアの着用は必須である。

     ご報告では、さらに調査を実施する上での技術的な側面もご解説頂いた。サウディアラビアでは調査を開始するにあたって、省庁などを除き特に手続きは必要ない。だが一方で出入国のビザ発給は、条件が厳しいため、現地での受入れ機関をどこに選ぶかがカギとなる。機関で許可を得られれば、こちらの記入した申請書が外務省に提出され、通常2~3週間でビザが発給される。入国後の調査では、現地の人のネットワークが有力な味方となる。健康管理については、医療水準は高く、水も安全なため問題はない。予算管理としては、移動のタクシー代とホテル代金の高さが問題となる。女性が安心して泊まれる4~5星のホテルはいずれも200ドル以上で、それ以下の宿は外国人労働者が多い場所となる。日常の飲食代等は日本とそれほど変わらない。

    報告の後は、今後チュニジアやアルジェリアなど西アジア・北アフリカで調査を行う予定のある研究者と、渡航経験のある研究者との間などで、有意義な情報交換が行われた。


    (報告:錦田 愛子(AA研))