海外学術調査フォーラム

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  • VII アメリカ大陸、もしくは超域的研究分野
  • VII アメリカ大陸、もしくは超域的研究分野

    座長伊藤 元己(東京大学大学院総合文化研究科)
    木村 秀雄(東京大学大学院総合文化研究科)
    話題提供者なし (座長による最近の海外調査事等)
    タイトル

    本分科会では,最初に木村秀雄教授が中央アンデスで取り組んでいる調査・研究に関して,ふたつの調査地の報告が話題提供としておこなわれた。

    まず,ひとつ目の調査地はバウティスタ・サアベドラ郡であり,ここでは先住民共同体(民族カリャワヤ)の民族語は宣教師による宣教の言語にならなかったために消滅した。民族語であっても布教のために使われる言語はその地域の言語になりえるが,その他は消滅してしまう。

    ふたつ目の調査地はラレカハ郡であり,そこにおける先住民(アイマラ民族)と非先住民の間がどう関係しているか報告された。

    さらに,クスコ(ペルー)に関する報告もなされた。クスコは大観光都市であり,他の地域とは異なることがいくつかある。ここでの先住民共同体は,当該民族がみずから勝ち取ったものというよりは,放置されてしまったためにできたものである。ここで興味深いのは,非先住民が先住民の民族語を話すようになったため,逆に先住民がスペイン語を覚えず,結果として先住民が大都市に出て行くことができなくなったことである。非先住民が先住民語を話すことによって,先住民に社会的に外部へ出て行く機会をうばっている。

    本分科会では,この他,科学研究費による現地協力者への謝金の払い方についての意見交換がされた。謝金の単価をいくらにするかなどは,日本側・調査者側の事情だけで簡単には決められず,調査する現地の状況を慎重に見極めつつ考えなくてはならない。調査に関する許可を取るにあたっても,大規模なプロジェクトが入ったあとは,許可をとりにくくなることがある。調査はその時だけおこなえばいいものではなく,継続されていくものであるので,後続する調査者への配慮を怠ってはならないことなどが話し合われた。


    (報告:渡辺 己(AA研))