海外学術調査フォーラム
IV 南・西アジア・北アフリカ
座長 | 黒木 英充(AA研) 髙松 洋一(AA研) |
話題提供者 | 木村 周平(京都大学東南アジア研究所) |
タイトル | 「トルコでの地震の文化人類学的調査」 |
南・西アジア・北アフリカ分科会は、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所の黒木英充教授と高松洋一准教授を座長として、参加者9名(AA研所員を含む)を得て開催された。
分科会では最初に、文化人類学が専門の木村周平氏(京都大学東南アジア研究所特定 助教)から、「トルコでの地震の文化人類学的調査」と題して、話題提供が実施された。遠くない未来に大規模地震に襲われることが予想されているトルコの中心都市イスタンブルにおいて、さまざまな人々や機関が、予想される大地震に対してどのような態度・意識で臨み、対策を講じているのか、進行中の現地調査の成果の一端が報告された。報告では、同じ地震国あるトルコと日本との交流や、近年にトルコ国内で 実際に発生した大地震に際しての人々の反応、地震が引き金となって活発化した災害 対策をめぐる諸議論の内容や行方についても紹介された。また途中には、トルコで現地調査を行うに当たっての、ビザ・調査許可取得の手続きや現状、現地滞在で予想される生活上の諸問題などについても説明があった。
分科会後半は、海外学術調査を行うにあたっての共通の問題について質疑応答が行われた。まず話題になったのはインドネシアからの生体試料の持ち帰り方で、具体的にはドライアイスの輸送が現在でも可能かどうかという問題だった。2001年9月11日のテロ以降、ドライアイスなどを運んでくれる航空会社が少なくなり、FedEx、DHLはもとより最近ではガルーダ・インドネシア航空もドライアイスを受け付けなくなっているということであった。これに関する抜本的な解決策は示されなかったが、研究分野によっては試料を現地で固定してから持ち帰るという方法も可能であるという。
話題提供の最後では、地震などの災害を対象とする研究を遂行する上で、また、災害に直面した社会に対して研究者をむ専門家が実践的に関わる上で、文化人類学をはじめとする多分野の研究者・専門家が連携することの意義と可能性について説明があった。
話題提供に続く意見交換の時間では、トルコでの地震に対する人々の意識や態度、地震などの災害を対象とする文化人類学的研究の手法などについて、質疑応答があった。また、現地調査を行うにあたって、研究者の性別や国籍はどのような影響をもつのかについても、意見の交換が行われた。意見交換の時間の後半では、提供された話 題から離れて、科研費の使用や、国ごとの異なる調査用機材の運搬に関わる諸手続きや諸規則、さらには、各大学・機関が海外にもつ拠点などをめぐって、自由に情報や意見が交換された。
(報告:太田 信宏(AA研))
