海外学術調査フォーラム

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  • VI サハラ以南アフリカ
  • VI サハラ以南アフリカ

    座長稗田 乃(AA研教授)
    永原 陽子(AA研助教授)
    話題提供者椎野 若菜(AA研助手)
    タイトル「フィールドにおける通信環境の発展とその影響」

    サハラ以南アフリカ分科会は、参加者14名(AA研所員5名を含む)で行われた。

    話題提供者(椎野若菜、AA研)は、「フィールドにおける通信環境の発展とその影響―西ケニアの場合」と題して、主に携帯電話・インターネットについての最近の状況を紹介し、そのことがアフリカの人々の生活にとって持つ意味と人類学研究にとって持ちうる長所・短所について報告した。参加者の間では、現地での携帯電話やインターネットについての具体的な利用方法について情報が交換されるとともに、こうした新しい情報ネットワークが驚くべき速さでアフリカ社会に広がっていることをどう見るかについて意見が交わされた。「きれいな水も手にいれられないところに携帯電話のアンテナが設置される」ことに対する違和感が表明される一方、親族ネットワーク等アフリカ社会の緊密な人間関係のあり方が、そのような新技術の受容とかかわっていることについての理解をもつ必要があるとの指摘も出され、これらの新しい現象がもつ複雑な意味が浮き彫りになった。

    このほか、自由な討論の中では、調査地においてインフォーマントに対する「謝礼」をいかにすべきかに関して話題が集中した。調査者からインフォーマントに支払われる謝礼は東アフリカでは「チャイ」、西アフリカでは「ダーシュ」などと言われ、その授受の習慣は広く普及している。調査者がその土地について詳しくない場合には謝礼の内容や方法について戸惑うことも多く、逆に、現地の人々と長年にわたって交流がある場合には、人々からの「期待」もある。長い時間をかけて土地の人々との信頼関係を築いていくことが調査の基本であることは言うまでもないが、場合によっては「時間との競争になる調査」もある、との指摘が出された。それに対して、「情報をカネで買う」状態になることを避けたい、「あくまでも調査者自身が好奇心を持つこと」が出発点であり、「無償で話してくれること」こそが大事である、との意見も出された。また、この種の問題にかんしては、調査者はしばしば「前例」に従おうとしがちであるが、むしろ、自分なりに相手とどのような関係を結ぶかを考え抜くことが大切である、との意見も出された。また、これらの「謝礼」も調査を遂行する上で必要不可欠な経費である以上、領収書を書いてもらって、正式に計上すべきであるとの意見が多く出された。

    このほか、いくつかの主要都市にかんする「治安」情報なども交換され、今回の分科会は、アフリカにおける調査遂行にかかわる実践的な面について、有益な情報交換の場となった。


    (文責:永原陽子)