海外学術調査フォーラム

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  • I 大陸部東南アジア
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    座長根本 敬(AA研教授)
    床呂 郁哉(AA研助教授)
    話題提供者高橋 昭雄(東京大学東洋文化研究所教授)
    タイトル「ミャンマーでの農村調査」

     東南アジア大陸部分科会はAA研の根本および床呂両所員が座長を務め、総計13名の参加者によって実施された。分科会ではまず話題提供者である東京大学東洋文化研究所の高橋昭雄教授から「ミャンマー(ビルマ)での農村調査」と題して話題提供が実施され、あいだに学術振興会の課長との科研費執行等に関する質疑応答をはさみ、最後は参加者全員による東南アジア大陸部に関する海外調査実施の課題や各自の経験等についてディスカッションが行われた。以下では主に高橋教授によるミャンマーでの調査に関する話題提供の中からとくに海外での学術調査実施に関わる点に絞っていくつかのポイントを簡単に紹介してみたい。

     高橋教授の研究テーマは主にミャンマーでの農業経済に関する調査研究であり、それは世帯構成員の親族関係・年齢・教育・就業、土地保有、家畜・農具等の保有と処分、作付けパターンその他の多岐の項目に関する調査を含み、こうした調査はビルマ語での聞き取り調査として実施した。1986年から88年頃は「農村調査を認める」という考え方そのものがなかった。遠回りだが当時からビルマ語を勉強していたことは後のために良かった。1993年から95年は農業省上級客員研究員として滞在し住み込みでの調査も可能となった。このときはどこで何を調査しても基本的に自由であった。1995年から2005年は科研費による農村住み込み調査を実施したほかJICA専門家として砂糖や綿花産業調査も実施した。2000年頃は特にシャン州・チン州などでは一人での調査が困難な状況となった。2005年以降は外国人による調査は外国政策委員会が許可するようになりエントリービザ(調査ビザ)取得が調査の条件になり、カウンターパート義務づけや賃金支払いなどが要請されるようになった。

     調査手続き・ビザ入手に関してはまずリサーチプロポーザルと詳しい日程・行程表を農業省計画局に提出し、関連各省庁、軍、警察等の許可が出れば調査が許可される。2005年以降は観光ビザでの調査は不可能となり、在外公館での身分チェックを含む手続きなどを経て調査ビザを取得してはじめて調査が可能となる。 このようにミャンマーでの調査では許可証やビザがなければ調査は不可能であり、目的地以外への立ち入り、目的外行動(特に政治・宗教関係)は慎むことが必要である。また近年はカウンターパートが義務づけられ、共同調査の方が許可が出やすい傾向があるなど独特の事情がある。

     またミャンマーでの調査に関した健康管理や病気に関する注意点は以下の通りである。ミャンマーでは各種の病原菌等による疾病の危険もあり、狂犬病、破傷風、肝炎の予防注射は必須である。またミャンマーでは現地の人は生水をよく飲むが、外国人の調査者はできるだけ生水ではなくお茶を飲んだ方が無難。医薬品に関しては現地で売っている薬の方がよく効く場合が多いが、ビオフェルミン、イソジン、抗生物質、目薬などは持参していく。また蚊取り線香は熟睡のために必要。

     また最後に会計関係、科研費制度に関連する点では、科研費は費目の縛りがきつくなくて使いやすいが、足りない傾向もある。たとえば病気治療に関わる出費を科研費でカバーしにくいといった問題点も指摘できる。

    (文責:床呂 郁哉)