海外学術調査フォーラム

  • ホーム
  • next_to
  • 過去のフォーラム
  • next_to
  • 2003年度
  • next_to
  • 全体会議 講演(追加報告)
  • 全体会議 講演(追加報告)

    第12回 国際組織細胞化学会
    (2004.7.24-28, San Diego, USA)での Dean and Prof. Jiang Gu,
     北京大学基礎医学院長の SARSの分子形態学に関する講演について
     蓮井 和久
     (鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 健康科学専攻免疫病態制御学分野(旧2解剖))

     昨年の北京でのSARSの分子病理学研究は、その直前に、北京大学に基礎医学院長に着任し、SARSの対策委員長に就いたProf. Jiang Guの講演が、San Diegoで開催された第12回国際組織細胞化学会の最後にApplied Immunohistochemistry and Molecular Morphology Plenary Lectureとして行われた。

     北京でのSARSの検索は、アメリカの全面的協力の下に、Prof. Jiang Guらの研究チームが、P3レベルのSARSの死亡者18名の完全な病理解剖を含む全方面的な検索が行われて、従来報告されていたこととは少し異なる検索所見が得られたそうである。


     SARSウイルスは、状来、肺のマクロファージ等に感染していることが報告されていたが、病理解剖の分子ウイルス学的検索の結果、

    1. 呼吸上皮
    2. 肺の多核巨細胞
    3. 腸上皮
    4. 末梢血並びにリンパ装置のT細胞
    5. SARSの感染したT細胞の壊死に陥ったリンパ組織のマクロファージ等に見られ、中枢神経系にも感染が認められたそうであり、SARSの臨床症状は肺炎のものではなく、SARSウイルス感染による汎リンパ球減少症による急性免疫不全であることが判明したそうである。その検索の結果、発病病態は、確定は難しいが、呼吸器、口蓋扁桃組織、消化管等の初感染病巣からのT細胞への感染による汎リンパ球減少症がSARS発症の背景に存在することが明らかになったそうである。

     この報告の結果は、SARSを呼吸器感染症よりは急性ウイルス性免疫不全症と見るべきものであり、今後の治療等の方針も変更する必要があるものであると思われる。

     一方、防疫的観点からは、未だに、慢性SRAS感染症の報告がないのが幸いであり、慢性SARS感染症の報告が出た段階から、AIDSと同等の対応が必要になるもので思われる。従って、現在の急性ウイルス感染症として対策と共に、慢性SARS感染症の報告があるのかを継続的に研究の進行を見守る必要があるようである。

     更に、詳細な報告等は今年の8月の北京での会議で報告され、公開されるそうであり、この学会の臨床ウイルス学、並びに感染症学の専門家による報告を期待したい。


    Copyright(C)2004, HASUI Kazuhisa, All Rights Reserved.

    戻る