海外学術調査フォーラム

Ⅱ 東アジア

座長佐藤 洋一郎(総合地球環境学研究所教授)
情報提供者蓮井 和久(鹿児島大学医学部講師)
大原 昌宏(北海道大学総合博物館助教授)

【報告】

 東アジアは中国を含むこともあり、参加者の最大の関心事はやはり新型肺炎(SARS)であった。そこで全体会での話題に加え、鹿児島大大学院の蓮井先生にとくに中国で問題になりそうなところにポイントを当ててお話を頂いた。またこれに先立ち、北海道大学大学院の大原先生に、ロシア調査の経験談を聞かせていただいた。おもに千島列島での生物調査の様子をちょっとした経験を交えてご紹介いただいたもので、おもしろく伺った。


 SARSの問題は調査中の感染をどう防ぐかという予防医学的な問題と、汚染地域に立ち入ってしまい(汚染地域に指定されたことを知らずに入域することもありえる)帰国した場合に生じるであろうさまざまな問題との2つがある。汚染地域の指定はどんどん減りつつあるが、休航になっている航空路が多いなどまだ問題がないとも言えない。さらに冬になっての再流行が懸念されるなど不安要素は残されたままである。とにかく予測がたたない以上打つ手もないというのが現状で、今後情報交換を密にするという申し合わせをして参会とした。


 また予算執行の問題については活発な議論になったが、問題は常に個別的であり解決のための統一的方法はなかなかみつからない。経験の差がものをいう面もあって一律にはいえないが、事務局との粘り強い交渉が必要であるとの印象を強く受けた。というのも、研究者サイドも事務サイドも、最近は人の移動が激しく、海外での予算執行に精通したメンバーがどちらにもいないケースが多いからである。