海外学術調査フォーラム

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  • I 大陸部東南アジア
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    座長徳留 信寛(名古屋市立大学医学部教授)
    河野 泰之(京都大学東南アジア研究センター助教授)
    情報提供者舟橋 和夫(龍谷大学社会学部教授)
    縄田 英治(京都大学大学院農学研究科助教授)

    【報告】

     19名が出席した。出席者の自己紹介、日本学術振興会研究事業部助成課の松尾課長を迎えての質疑応答、京都大学農学研究科の縄田栄治先生による「東南アジア大陸部における農業資源・農業持続性評価」と龍谷大学社会学部の舟橋和夫先生による「ドンデーン村再々訪−東北タイ天水田農村における40年間の動態研究」と題する情報提供に続いて、出席者間で情報・意見を交換した。主たる論点は以下の3つに集約できる。


    1. SARS対策やテロ対策

      今冬にもSARSが再発する可能性は否定できない。このような伝染病の蔓延やテロの発生によって現地調査計画を急遽変更しなければならない事態が予想される。このような場合には、現行の計画の枠内で調査地域や調査時期を調整して対応することに加えて、補助金の次年度への繰り越しを認める新たな制度が策定されるので、それを利用して円滑な研究計画の実施に努めて欲しい(松尾課長)。


    2. 生物資源管理

      科学研究費補助金などで実施している小規模な研究プロジェクトが、研究連絡会講演会で紹介のあった生物多様性条約に基づく国際的な生物資源管理の枠組みに独自に対応することはきわめて困難である。生物資源のサンプルや標本の日本への持ち帰りについては、個々の研究プロジェクトが相手国カウンターパートとの相互理解に基づいて適当に処理しているのが現状で、その大部分が生物多様性条約に基づくものではない。このような個々の研究プロジェクトによる生物資源管理をサポートする体制を確立する必要がある。


    3. 研究成果の現地社会への還元

      研究成果を現地社会に還元するために、現地での出版やワークショップ開催などが考えられる。これらの活動は、現状では、十分になされているとは言いがたい。しかし、調査者と現地社会との関係が「調査する側とされる側」から「対等のパートナー」へと変容するにつれて、その重要性は今後ますます増大するであろう。そのために個々の研究者が鋭意努力するとともに、科学研究費補助金による会計的な支援や日本学術振興会の海外研究連絡センターの活用なども視野に入れることが望まれる。