展示品
55 ヤーファー(ヤッフォ,ヨップ),北側の風景
56 ヤーファー,南側の風景
 ヤーファーの旧称であるヤッフォ(「ヨシュアの書」19章46節;「歴代の書下」2章16節)がヘブライ語で「美しい」を意味する「ヤフェー」に由来するにしろ,或いはまた,より近い時代の名前であるヨップ(フェニキア語で「高所」)が,プリニウスの主張通りその位置が高いことから来たにしろ,いずれにしてもこの二つの呼び名はヤーファーにとても似つかわしい。朝方に旅人を町の北方の海辺(図版55)に連れて行けば,その景色とヤーファーの景観に同時に感銘を受けることだろう。町は入り江の穏やかな鏡面に紺碧の陰を落とし,その柔らかな色調は,取り分け岸辺の乾いた砂の色と対照を成している。家々は,密集した多くの建築物を支えている高さ190ピエ[約62メートル]のテル[遺丘]の側面に貼り付けられているかのようである。付近の素晴らしい庭園もまたヤーファーの美しさを引き立たせている。ナツメヤシはその羽根飾り様の上部を海風の爽やかなそよぎで揺らしている。イチジクの木はその木陰に澄んだ泉を守っており,生い茂った葉むらの下には至るところでとても美味しそうな実が生っている。町の南側でこれらの庭園は耕作地と混じり合い,そこからも丘の上に建っているヤーファーが見られる。我々の画が描かれたのはここからである(図版56)。
■ヤーファーの北側テルアビブ市側から望む現在の風景, 2012年1月(撮影:錦田愛子)

古い港町であるヤーファーの北側には、20世紀に入りユダヤ移民が建てた町テル・アビブが隣接する。商業の中心地である近代的都市テル・アビブはユダヤ人の町、ヤーファーはアラブ人の町として知られていたが、近年では混住が進み、移民労働者も急増している。