展示品
51 ジェニーン(エン・ガニム),イッサカル支族
 ジェニーンはイッサカル支族のエン・ガンニムであると同定される(「ヨシュアの書」19章21節,21章29節)。そのヘブライ名である「園の泉」が今なお完全にそれを証明している。ジェニーンは今でも豊かな水源を有しており,住民の需要を満たした後,水路によって町の周囲の庭園内にまで水を行き渡らせている。そこには果樹がたくさんあり,オレンジの濃く輝いた緑が,オリーブの薄い色合いやザクロの明るく生き生きとした緑と心地よい対照を成している。ナツメヤシはその優雅な房を夜風の清々しいそよぎで揺らしている。これらの緑陰の魅力を一層高めているのが周囲の平原との対照である。その土壌は極めて肥沃ではあるが,太陽が燦々と光を降り注いており,日中の酷暑から旅人を守れるような樹木を見つけようとしても無駄である。ジェニーンの方はと言えば,日が地平線上の高い位置にある間は町には注目すべきものは何もない。それどころか,家屋や山々,そして耕地にせよ未耕地にせよ,この地独特の色彩であるそれらの灰色がかった黄色は,魅力的な景色を与えるというには程遠い。しかし,太陽がカルメル山の裏に落ちてゆくにつれて輝き出す風景の多彩で華やかな色たるや,ペンも画筆もそれらを描くことは出来ないだろう。最初は遠景として見ていた山,平原,町,庭などの全体がまるで明かりの洪水に浸されたようになり,その色調は,くっきりとライトブルーの点に切り分けられた影との対照によってさらに強められる(図版51)。
■ジェニーン市内の市場, 2011年12月(撮影:錦田愛子)
ジェニーンはパレスチナ自治区のヨルダン川西岸地区北端に位置する町である。比較的豊富な水量を利用した農業が盛んで、春には緑の耕作地が広がる。だが第二次インティファーダ(民衆蜂起)ではイスラエルとの激しい衝突が起こり、難民キャンプは大規模な破壊の標的となった。