展示品
32 ラアス・アル=アイン,ティール近郊

 ラアス・アル=アインの貯水池群は,現在では3つのグループを構成している。南端に位置するグループは,水源地の上方近くに造られた2つの貯水池から成っており,長さ6ピエ[約2メートル],幅4ピエ[約1.3メートル]の岩を積み上げた,高さ15ピエ[約4.9メートル]の擁壁を有している。2つの貯水池のうち,大きい方の水位は,長さと幅が32ピエ[約10.4メートル]ある擁壁の縁にまで至る。もうひとつの貯水池の内壁は,長さは大きい方とまったく同じであるが,幅は12ピエ[約3.9メートル]しかない。このグループの北側150ピエ[約49メートル]のところに主水源があり,ところどころソクムギや他のつる植物に覆われた,いびつな8角形の形をした貯水池の中に囲われている。この貯水池の北東には水車があり,池の水力で動いている。気温計は24度を示していた[値はレオミュール度(列氏)で1.25倍すれば摂氏になる]。水温は16度,大気温は15度,そして海水温は13.5度であった。
 3つめのグループは正方形をした2つの貯水池から成っており,それぞれ一辺が20ピエ[約6.5メートル]で,地上からは5ピエ[約1.6メートル]の高さがあり,主水源から北に15分の距離しか離れていない。ここから北北東に約200ピエ[約65メートル]延びている水路を見ることが出来るが,最初のグループから出て,主たる貯水池の近くをアル=マアシュークに向かって流れる他の水路と同様,そこから先は崩れている。それらの他にも何本か別の水路があるものの,すべてが荒れ果てた様子で,ホウライシダや他の水生植物が織りなす広大な網,そして水垢や,この水が豊富に含む石灰質の鍾乳石層の下にほとんど完全に隠れている。我々のデッサン(図版32)は,主水源の北西にある水路の跡を描いたものである。前景の左側にある建物は先ほど述べた水車であり,そこから海まで注ぐ豊かな水流で動いている。現在では,ラアス・アル=アイン村の家々の一部は川岸に散らばっている。

■ラアス・アル=アインの同地点から同じ方向を望む, 2013年8月(撮影:黒木英充)

第1、第2のグループの貯水池は、今日もなお現役である。地上5メートルくらいの高さで水を満々とたたえており、周辺地域に給水している。