展示品
27 フーニーン城
 デイル・ミーマースの南へ約2時間進むとフーニーンの町と城跡に着く。この要塞はフーラ平野の西側の山岳では最も目立つ地点である(図版27)。遺跡は今日その姿を見せている通り,まさしくサラセン人の砦の跡である。しかし明らかに,かなり遠い昔に遡る他の砦の跡と土台の上に建てられている。形は長方形で南側の部分が丸みを帯びており,その部分は長さが900ピエ[約292メートル],幅が300ピエ[約97メートル]である。城砦は絶壁を見下ろしているが,その絶壁は東の方角の平野に向かってかなりの急勾配で落ち込んでいる。堀は長さが40ピエ[約13メートル]で深さが15〜20ピエ[約5〜6.5メートル]あり,むき出しの岩に穿たれ,城を北と西から防御している。南と南西の側は二重壁と6つの円塔で守られている。東側の壁の上にも3つの塔がある。地表部はかつて住居や店で埋め尽くされ,地下には多くの井戸があった。
現在のレバノンとパレスチナ(イスラエル)の境界地帯に位置するフーニーンは、英仏委任統治が始まった時期に、境界線の変更で翻弄された「七つの村」の一つである。住民は一度「大レバノン」市民になった後、「パレスチナ」市民となり、その後難民となってレバノンへ逃れた。