展示品
12 ハースバイヤー
 ハースバイヤーは大きな村で,6000人以上の住人がいるものと思われ,その大半がギリシア・カトリック教徒で,約4分の1がドルーズ派である。そして,マロン派,プロテスタント,スンナ派,ユダヤ教徒が,かなり少ない数ながら共存している。
 ここに着くために我々が越えた峡谷はハースバイヤーの少し上方から始まっており,村を二つに切り分けている。家々はその双方の側で,傾斜した山腹の上に位置している。この谷の高みの辺りを歩けば,村の最も美しい眺望を楽しむことが出来る。領主の館が空を突いて浮かび上がり,リーハーン山の反対側の斜面が目に留まる。我々の散策が午後であったならば,傾きつつある太陽が,紛れもなくオリエントの風景のものである色合いを持つこの山を照らし,そしてまた,前景に置かれた,松とオリーブに覆われた険しい傾斜が完全に陰に包まれ,時折,太陽の最後の光だけが木々の枝越しに差す時,かくも壮麗な光景(図版12)を我々は決して忘れることがないだろう。

今日も、この町の周囲ではリンゴ、松の実、オリーブを豊富に産する。当時も複合的な宗派構成であったことがわかるが、ファン・デ・フェルデがここを訪れて10年も経たない1860年、レバノン山地南部で広範に起こった宗派間大衝突はここにも及んで、多くの死傷者を出した。