期間:2011-2013年度
簡牘とは,木や竹で作られた「ふだ」のことをいうが,それは,中国では3世紀頃まで広く用いられていた書写材料の一つであると同時に,その形態に様々な意味が込められたモノでもある。例えば現在カードにICチップが埋め込まれるのと同様に,「符・券」という簡牘には,信憑性を確保するため,記載内容に合致する特殊な刻みが施され,またパスワードのように,文書に「封検」という特殊な形状の簡牘を組み合わせ,内容漏洩を防ぐ工夫などもなされていた。
こうしたモノとしての簡牘は,複雑で長いライフサイクルを有する。作成・作成目的に沿った利用と再利用から目的外の再利用と廃棄に至るまで,簡牘は時に形状と機能を変化させ時空を移動しつつ,社会生活の様々な局面に立ち会った。そのため,簡牘には当時の豊富な情報が刻み込まれている。本研究課題は,簡牘の文字情報の正確な解読を基礎に据えつつ,中国古代の社会生活を語る証人としての簡牘に新たな生命を吹き込んで,新しい簡牘学の構築を目指すものである。
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