進行中の研究

TEI準拠の中国古代文書簡牘資料庫構築

 本研究は、2026年度からアジアアフリカ言語文化研究所(AA研)情報資源利用研究センター(IRC)のプロジェクトとして以下の要領で実施されている。

研究課題の概要

 中国古代の文書簡牘を対象に、伝統的簡牘学固有のマークアップ言語を機械的にTEI準拠のxmlタグに変換して釈文ファイルを生成し且つ異なる釈文を自動比較・校訂した上で、手動で文書特有の語彙をマークアップし、中国古代文書簡牘の資料庫を構築し公開する。時代範囲は秦代から魏晋時代までとするが、初年度は走馬楼呉簡を対象に作業を行う。この資料群は簿籍を主要内容とする点が大きな特徴である。

研究課題の背景

 代表の陶安は研究仲間と共に、2011年度から2026年度までの15年間、AA研の共同研究課題「中国古代簡牘の横断領域的研究(一~五)」において中国古代文書簡牘の共同史料講読を行ってきたが、膨大な数に上る文書簡牘の講読成果を効率的に整理し公開するためには、最後の3年間は、主として歴史情報学を活用し文書簡牘資料のデジタル化に関する研究を行った。その結果、簡牘学の伝統的マークアップ言語を機械的にTEI準拠のタグに翻刻する技術と、同一テキストの異なる釈文を自動的に比較校訂する技術を開発した(「資料庫実験室」の7から10まで参照)が、一部の試作品を除けば、この技術を応用して文書簡牘資料を大々的にTEI化しデータベースとして公開するには至っていない。長年の史料講読の成果を広く公開発信するために、文書簡牘の資料庫を構築し公開する予定である。

 

研究の実施計画

 2026年度は走馬楼呉簡の中で出土位置が明かな『竹簡肆(示意図1~4)』所収(900枚)の文書(簿籍)簡牘を、研究仲間の鷲尾裕子氏の協力を得て、TEI準拠のxmlファイルに変換してマークアップする予定である。具体的な作業は、

①伝統的マークアップを含んだテキストファイル形式の釈文の作成と校正、

②パイソン・スクリプトによるファイル変換、

③変換結果の校正、

④簿籍固有の語彙のマークアップ、

⑤マークアップの校正

という五つの内容に分かれる。

期待される研究成果

 管見の限り、中国古文字に関わる資料をTEI化するのはこのプロジェクトが初めての試みであり、簡牘学に止まらず、金石学や甲骨学等、中国古代史に関わる史料学全般に対して広くインパクトを与えることが期待される。また、ユニコードの意味論的位置づけを「文字集」から「グリフ集」に戻すことにより、外字か否かを問わず全ての文字について古文字学に適合的な再定義を行う空間を創設するので、文字コード論にも一石を投じることとなろう。

(執筆:陶安あんど, 2026-07-11)

 

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